世の中にサッカー・ゲームは数あるが、中でもクラブチーム経営シミュレーション・ゲームでクラブ運営の難しさを味わっている読者も大勢いるだろう。富豪会長による放漫経営が揶揄されることも多いインテルだが、先日イタリアの経済専門紙調査によって、一昨季2005-06年シーズンの「セリエAチームの1ゴールあたりにかかったコスト」が判明した。コストは、選手のサラリーだけだなく、監督やコーチ、クラブ人員の給料などすべての人件費をチームが奪った総ゴール数で割ったものから弾き出されている。

 それによると、1ゴールあたりのコストが最も高かったのがインテル。ゴールネットを1回揺らすために、何と約209万ユーロ(約3億4400万円)を費やしていた。68ゴールを奪ったが、何といっても手取りで5億円、6億円もらうスター選手がざらにいるため超高額の選手サラリーがきいている。今季は悲願のスクデットを勝ち取ったものの「ゴールの非効率性」でもチャンピオンだったことを証明した。

 2位のユベントスでも1ゴールあたり約187万ユーロ(約3億800万円)。ミランは、上記2チームと比べてもクラブの総人件費が高いとされているが、奪ったゴール数が85とダントツのため、1ゴールあたりになおすと約162万ユーロ(約2億6800万円)の3位だった。 
 4位のローマになると、1ゴールあたり約94万ユーロ(約1億5400万円)という数字に落ち着く。やはり北のビッグ3チームのクラブ予算は桁違いなのだ。

 最も予算効率的にゴールを奪ったチームも気になるところだ。当然年間予算が著しく限られてくる地方チームになるが、同調査によると、47ゴールを奪ったエンポリが1ゴールあたりにかけたコストは、わずか19万2000ユーロ(約3200万円)。何とインテルの10分の1にも満たない額だ。次点のキエーボと比べても(同26万5000ユーロ)、約1200万円近くも効率的にゴールを奪った勘定だ。

 インテルの会長気分を味わうにはよほどの資産家にでもならない限り無理だが、エンポリは見事な経営のやりくりで、来季のUEFA杯出場を勝ち取った。まさに低予算チームの鑑といえる。どちらの夢を見るか、シーズンオフに楽しむゲームのヒントに少しはなっただろうか。

弓削高志