今月21日、タイ元首相のタクシン氏は、マンチェスター・シティ買収の条件として、8160万ポンド(約202億円)のオファーを提示した。しかしタクシン氏は現在、首相時代に国有地を不正に取引したとして、国家汚職防止法違反などで起訴されており、8億3000万ポンド(約2017億円)にも上る個人資産が凍結されている。そんな最中にマンC買収のオファーを提示したことから、その資金の出所についても疑惑が持ち上がっているのだ。

 しかし、この疑惑に対して、投資銀行の最高幹部であるケイス・ハリス氏が『BBC』の取材に対し、資金の正当性を代弁した。

「資金は合法的に英国に移された。その透明性は折り紙つきだ。彼が問われている罪にしても、軍事政権が政治的な意図を持ってかけた疑惑にすぎない。そもそも、彼らは国民に選ばれた政権ではない。タクシン氏は非常に人気の高い首相であった。それに加え、ビジネスマンとしても大きな成功を収めていたのだよ」

 一方、タイの財務大臣を務めるチャロングフォブ・スッサングカーン氏は、その資金の正当性に大きな疑問を感じているという。

「マンC買収のために用意された資金については、いまだ謎に包まれている。タイの資産調査機関が資金の出所を調べ、合法か否かを確認する。そもそも、彼がいかにしてマンC買収を行なうのか、我々には見当もつかない。実際に買収が成立するまでは、何とも言えない」

 近年、外国資本によるクラブ買収が盛んなプレミアリーグ。米国といった先進国だけでなく、ロシアやアラブなどの新興国からの投資も増え、その資金の正当性が問われることも少なくない。ピッチ内外でグローバル化が進むプレミアリーグだが、フットボール文化を守る以前に、あらぬ疑惑をピッチに持ち込むことだけは避けたいところだ。