『風、薫る』写真提供=NHK

写真拡大

 明治から大正という激動の時代を舞台に、トレインドナースとして看護の道を切り拓く主人公・一ノ瀬りん(見上愛)と、そのバディである大家直美(上坂樹里)の姿を描く、NHK連続テレビ小説『風、薫る』。

参考:『風、薫る』“藤次”中村倫也が内務省衛生局と判明 りんに戻り始めた看護婦の自信

 撮影がいよいよ大詰めを迎える中、主人公・りんを約1年にわたって演じてきた見上愛に、これまでの撮影を振り返りながら、りんの変化や、バディである上坂樹里との信頼関係、そして看護という仕事を通して実感した心の通い合いについて、たっぷりと語ってもらった。

■過濃密な1年を経て、変化していくりんの“正しさ”

――約1年にわたる長期の撮影も、いよいよラストスパートに入りました。現在のご心境を聞かせてください。

見上愛(以下、見上):実はまだあまり実感がなくて、今は毎日立て込んでいる撮影にみんなで全力で挑んでいる状態です。「ラストスパートを撮っているんだな」という気持ちは、すべてが終わってしばらく経ってから実感として湧いてくる気がしますね。(上坂)樹里ちゃんやスタッフさんたちも含めて、平日は毎日顔を合わせることが当たり前になっていた1年間でした。この過酷で濃密な時間を経たからこそ、それぞれが次の場所で頑張れることがあると思います。この仲間たちと、またどこかで出会えるように頑張っていきたいです。

――一ノ瀬りんという女性の第一印象と現在では、変化した部分はありますか?

見上:最初はすごくのんびりしていて、思ったことを正直に口にしてしまう「自分を貫く人」だと思っていました。ほわっとしている人に見えるけれど、知れば知るほど芯の強さに驚かされる人物だな、と。ただ、演じ進める中で彼女もたくさんの悩みや葛藤に直面しました。これまでのりんは自分の思う正しさに自信を持って行動していましたが、第15週からの迷いを経て、ここから先は「そもそも正しさって何だろう」「正しさは一つじゃないんだ」と気づいていく日々が続きます。その中で彼女はまた一段と成長していくのだと思っています。

――これまでの撮影で、印象に残っている楽しいシーンや、逆に苦労したシーンを教えてください。

見上:楽しかったのは、やっぱり女学校時代にみんなで集まっていた期間です。私自身も女子校出身なので、当時のことを思い出すような空気感があり、温かい現場でした。バーンズ先生役のエマ・ハワードさんもチャーミングな方で、クランクアップのときはみんなで寂しがって涙していました。逆に一番大変だったのは、第14週から第15週にかけての時期です。今まで看護する側だった彼女の心が少しずつ疲弊し、現代でいう適応障害に近いような、心が深く病気になっていく姿が描かれます。それをどう表現すべきかものすごく悩みました。でも、そこを逃げずにしっかり演じきったからこそ第16週以降につながっていると思うので、やりきれてよかったです。

――大家直美を演じる上坂樹里さんとのバディ関係も本作の大きな見どころです。改めて、見上さんにとって上坂さんはどのような存在でしょうか?

見上:彼女はキャスト発表のときからずっと、自分より年下とは思えないほど落ち着いていて、本当に頼もしい存在でした。物語の初期は、りんが直美を輪に入れたりアシストしたりすることが多かったのですが、物語が進むにつれて、逆に直美がりんの道を力強く導いてくれるようになります。ただ手を取って引っ張るのではなく、りんが正しい道へ一歩踏み出すためのきっかけを常に与えてくれるのが直美なんです。1年を通して、そんな唯一無二のバディ感がどんどん強まっていきました。

■佐野晶哉のひたむきさに受けた刺激

――お互いに刺激を受ける部分も多かったのでしょうか?

見上:すごく多かったです。私と樹里ちゃんは役へのアプローチの仕方がまったく違っていて。彼女はものすごく感受性が豊かで、直美という役と心を深くリンクさせながら撮影に臨むタイプなんです。隣で彼女のお芝居を見ているだけで、心が大きく揺さぶられているのが伝わってくる瞬間が数えきれないほどあって。ロジカルに考えがちな私にとって、彼女のその柔軟で繊細な表現は、私自身の大きな学びになっていました。

――りんにとって大切な存在となるシマケン役の佐野晶哉さんの印象を教えてください。

見上:佐野さんは、ずっと年上だと思っていたくらいしっかりされているんです。お芝居の立ち姿にも妙な落ち着きがありながら、自分が好きなものやこのお仕事を一生懸命極めていこうとする姿が、劇中のシマケンとすごく重なって見えました。また、アイドルなどの他の活動もされていて本当にお忙しいはずなのに、現場で弱音を吐いている姿を一度も見たことがなくて。フランス語の長い追加セリフが入ったときも、ひたすら練習を重ねてベストな状態で挑もうと努力されていたひたむきな姿に、自分ももっと頑張らなきゃと思わされました。

――第19週では、感染症の医療現場のシーンや、中村倫也さんの登場も描かれました。

見上:第19週は、一度看護の世界から離れたりんが、「やっぱり自分の手で誰かを救いたい」と改めて自覚する大きな週です。かつて父上が亡くなったときに何もできなかった後悔から知識を得て技術を磨き、父上と重なる状況で誰かを救うことができた。過去の傷から完全には解放されなくても、それを大切に抱えたまま前に進む原動力になる週になったと思っています。ちなみに中村倫也さんは、登場シーンがむしろにくるまれている状態からの撮影だったので、最初は私、まったく気づかずに素通りしてしまって……。後から慌てて挨拶に行きました。

――『風、薫る』を通じて「看護師の仕事」に対して、見上さんの中で気づきや考え方の変化はありましたか?

見上:クランクイン前は技術的な素晴らしさに目がいっていたのですが、演じたり実際の看護師の方々とお話しする中で、「患者さんの心を見て、寄り添っていく仕事なんだ」と強く感じました。正解やマニュアルがない中で、病気と付き合う人がどういう人生を選択し、何が幸せにつながるのかを常に考えていく。私が想像していた以上に、深く心を使うお仕事なんだと気づかされました。

――最後に、作品を見守り続けてきた視聴者の方々へメッセージをお願いします。

見上:1年間撮影するのも長いですが、半年間放送を観ていただくのもすごく長い時間だと思います。まず、一緒に見守り、走り続けてくださっている皆さまに心から感謝をお伝えしたいです。これから物語の結末に向けて、りんと直美の2人がどういう人生の選択をして、自分たちが生きている時代や世の中にどんな「風」を起こしていくのか。ぜひ注目して観ていただけたら嬉しいです。最後までどうかあたたかく見守ってください!(文=玉置正義)