24日、阪神3連戦の初戦で逆転弾を放ったダルベックと座り込む才木

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村上頌樹の出来が抜群だった第3戦

 巨人が前半戦最後の阪神3連戦を2勝1敗と勝ち越し、その阪神と貯金「10」で並びセ・リーグ史上初の同率首位ターンとなった。

【写真】「ここにきていい働きをしている」…柴田氏も注目の巨人若手3人衆

 先週の今コラムで阪神3連戦を「楽しみだし不安でもある」と記した。悪ければ3連敗がありそうだし、なんとか1勝2敗なら仕方がない。2勝1敗だったら文句なしと思っていた。

 球宴後、今年のペナントレースの行方は巨人と阪神の一騎打ちになると確信した。巨人、よく頑張った。最高の結果である3連勝の可能性もあった。

 だが、26日の3戦目に先発してきた村上頌樹の出来が抜群だった。制球力が良かった。117球で与四球は1個だ、特に追い込んでからの低めのフォークが決まっていた。

24日、阪神3連戦の初戦で逆転弾を放ったダルベックと座り込む才木

 巨人の見せ場は9回、松本剛と泉口友汰の連続安打で築いた無死一、二塁だったけどボビー・ダルベックが併殺打、きょうはこれで終わったと思った。

かつての山田久志を思い出した第1戦

 勝ち越しできたのは第1戦を取ったことが実に大きかった。

 1点をリードされた9回2死三塁でダルベック才木浩人に2−2と追い込まれながらも一時は逆転となる2ランを左中間に叩き込んだ。

 才木がマウンドでうずくまり、しばらく動けなかった。佐藤輝明に声を掛けられてやっと腰を上げていた。巨人のV9時代、日本シリーズで山田久志(阪急)が王(貞治)さんに喫したサヨナラ3ランをすぐに思い出した。(※)

 才木はそれまで完璧だった。それがあと1人、あと1球からの暗転だ。フォークが浮いてしまった。1球の怖さだ。

 その裏に一度は同点にされたが、延長10回、途中出場の新人・小濱佑斗がリーグを代表する救援左腕の岩崎優から左翼席へ決勝の2ランを放った。

 ビックリ仰天した。小濱は吉川尚輝、門脇誠の故障で昇格した選手だ。奇跡とまでは言わないが奇跡的な一発だった。こんなこともあるんだ……野球はなにが起こるかわからない。

 巨人にとってこの勝利はシーズンを通してターニングポイントになったのではないか。

小笠原慎之介は思い切りとテンポがいい

 第2戦も1点をリードされた4回にダルベックが同点のソロ弾、死球と敵失から好機を築き、佐々木俊輔の適時打と石塚裕惺の2点二塁打で4点を奪って逆転した。

 竹丸和幸がしり上がりに調子を上げて粘りの投球を見せてくれた。新人で前半戦7勝は立派だ。

 第1戦に先発したフォレスト・ウィットリーは四球から崩れることが多い。今後も課題だ。

 小笠原慎之介は思い切りとテンポがいい。7回まではキッチリと投げることができる。今後の大きな戦力になりそうだ。

 佐々木が昨年、一昨年と本塁打ゼロだったが、ここまで7本塁打をマークしている。昨年はバットを寝かせていた。今年は立てているから下から入らず、上からたたけるイメージでバットを振っている。

ダルベックはしっかりとした仕事人

 石塚はバックスイングを大きく取って余裕を持って構えた方がいい。

 巨人はここにきて笹原操希、石塚、小濱ら若手がいい働きをしている。浦田俊輔の活躍が若手たちの刺激になっているのかもしれない。いまや1番に定着しつつある。

 巨人は本塁打で得点するケースが多かったが、浦田が出塁すると盗塁や好走塁でチャンスを築き、ヒット1本で得点できるようにもなった。

 ダルベックが4番としてドンと座っているのがいい。阪神の森下翔太や佐藤のように見た目の迫力はないものの、しっかりとした仕事人といった感じだ。あれだけの体だ。当たれば左中間、中堅へ飛ぶ。パワーがある証拠だ。

 トレイ・キャベッジは相変わらずストライクを見逃してボール球を振っている。ベルト周辺に目付けをすることだ。まあ、それでも前半戦を終えて好材料を挙げることができるようになった。

巨人の原動力は投手陣

 大勢の離脱で7、8回を田中瑛斗中心にやり繰りしている。時にエッと思う時があるが大勢はいずれ戻ってくるだろう。

 なんやかんや言っても巨人の原動力は投手陣だ。チーム防御率は2.90でリーグトップ、2位の阪神は2.91だ。如実に表している。

 巨人にとってはチャンスだ。球宴でいまの勢いがさえぎられるのはもったいないけど、後半戦スタートの10試合が大事になってくる。

 前半戦を明るく締めることができた。8月を負け越したチームが脱落する。まずは後半戦最初のカードであるDeNA3連戦(東京ドーム)を不安なしで楽しみに迎えたい。

(記録などは27日現在)

※「山田久志が王さんに喫したサヨナラ3ラン」とは:

 1971年の巨人対阪急(現オリックス)の日本シリーズ、両者1勝1敗で迎えた第3戦は10月15日に後楽園球場で行われた。阪急の先発、23歳の山田久志は絶好調だった。1点をリードして9回裏を迎えた。1死まで被安打2、しかも無四球だった。

 巨人はその1死から柴田勲が粘って四球で出塁した。山田にとって初の四球だ。柳田俊郎(真宏)が右飛に倒れたが次打者・長嶋茂雄が4番・王貞治につなぐ安打を中前に放って2死一、三塁となった。

 王は山田の1−1からの真っすぐを捉えた。打球は右翼席中段へのサヨナラ3ランとなった。109球目だった。山田はマウンドにうずくまり立ち上がれなかった。西本幸雄監督、長池徳二、福本豊に抱えられてベンチに戻った。

 これでシリーズの流れは巨人に大きく傾いた。シリーズ史上、いまだに語り継がれるサヨナラ本塁打となった。振り返れば柴田の四球がきっかけだった。柴田は王に「なんとしてでも出塁してくれ」と言われた。走者が出れば変則モーションの山田もセットポジションになりタイミングが取りやすい。

 巨人は4勝1敗でV7を達成した。山田は王の一打を糧に「史上最高のサブマリン」と称される投手に昇り詰めた。

(敬称略)

柴田 勲(しばた・いさお)
1944年2月8日生まれ。神奈川県・横浜市出身。法政二高時代はエースで5番。60年夏、61年センバツで甲子園連覇を達成し、62年に巨人に投手で入団。外野手転向後は甘いマスクと赤い手袋をトレードマークに俊足堅守の日本人初スイッチヒッターとして巨人のV9を支えた。主に1番を任され、盗塁王6回、通算579盗塁はNPB歴代3位でセ・リーグ記録。80年の巨人在籍中に2000本安打を達成した。入団当初の背番号は「12」だったが、70年から「7」に変更、王貞治の「1」、長嶋茂雄の「3」とともに野球ファン憧れの番号となった。現在、日本プロ野球名球会理事を務める。

デイリー新潮編集部