アルマーニからスキムズまで。「世界最大の広告枠」 ミラノ五輪 をめぐる、アパレルの主導権争い

記事のポイント ナイキやラルフローレン、スキムズなどが冬季五輪で公式ユニフォームを通じ存在感を高めている。 機能性素材や回復支援ウェアも競技や医療現場で重要な役割を果たしている。 チャビーズやJ.クルーは五輪の熱量を日常向け商品へと展開している。
アパレルおよびフットウェアブランドは、2026年イタリアで開催される冬季五輪およびパラリンピックで脚光を浴びようと動き出している。そして、世界有数のファッション拠点のひとつで勝利をつかもうと意気込んでいる。ミラノ・コルティナ2026までのカウントダウンが進むなか、各社はアスリート向けだけでなく、一般消費者向けの商品も投入している。EA7 エンポリオ・アルマーニ(EA7 Emporio Armani)、ラルフローレン(Ralph Lauren)、ルルレモン(Lululemon)は、それぞれイタリア代表、米国代表、カナダ代表の公式ユニフォームを手がけている。サロモン(Salomon)は、1万8000人のボランティアに向けて、ジャケットとブーツを提供している。パジャマブランドのダグスメジャン(Dagsmejan)は、スイス・ナショナル・アイスホッケーチームと提携し、選手たちにナイトウェアとアイマスクを供給している。また1月上旬には、J.クルー(J.Crew)とスキムズ(Skims)がそれぞれ、米国スキー・スノーボード協会(U.S. Ski & Snowboard)および米国代表チームと組んだアパレルのライフスタイルコレクションを発表した。
J.クルーのライフスタイルコレクション
冬季五輪は規模が小さくても、ブランド価値と商機は巨大
2026年の冬季五輪およびパラリンピックは、ミラノとコルティナ・ダンペッツォで開催される。夏季五輪と比べると、冬季五輪はインフラ整備にかかる高コストや気候条件の制約により、規模は比較的小さい。2026年に出場する選手は約2900人で、2024年の10500人と比べると少ない。しかし、スポーツをめぐる熱狂、数十億人規模の視聴者、そしてミラノという都市の魅力を考えれば、ブランドにとってのマーチャンダイジングやマーケティングの機会は依然として巨大である。実際、パートナーシップは売上増加につながる傾向があり、アンタ(Anta)は2022年の北京冬季五輪をスポンサーした際に、売上高が増加したと報告している。2026年も、NBCは冬季五輪の広告枠が「前例のない需要」により完売し、100社以上の新規広告主を呼び込んだと発表している。ミラノという「ファッション首都」が五輪の価値を押し上げる
「五輪は、疑いようもなく世界でもっとも強力なスポーツプラットフォームのひとつだ」。マーケティングエージェンシーのエクセル・スポーツ・マネジメント(Excel Sports Management)でシニアバイスプレジデントを務めるハリー・プール氏は、Modern Retailにそう語った。プール氏は、五輪選手の代理人としてキャリアをスタートさせたあと、マーケティング分野に転じた人物である。「グローバルなつながりや文化的な影響力を考えれば、五輪は世代を超えて人々を鼓舞するムーブメントだ」と同氏は述べる。「そして、ミラノやファッション、それが世界にとって何を意味するかを考えれば、2026年の市場環境は非常に素晴らしい」。
表彰式用ユニフォーム/Olympics.com提供
開会式・閉会式ユニフォームで示すブランドの世界観
ミラノは、プラダ(Prada)をはじめとするラグジュアリーブランド、既製服、そして特にレザー製品に代表される高い職人技で知られている。また、ミラノ・ファッションウィークやファッション地区クアドリラテロ・デッラ・モーダの拠点でもある。そのため、美学やデザインは、今回の開催において大きな役割を果たしている。たとえば、2026年の公式表彰式用ユニフォームは、3つのファッションデザイン学校によるコンテストから生まれたものだ。新しいトーチのデザインも、洗練されたミニマルな外観と、より大きな炎を特徴としている。大会の公式モットーでさえ、「あなたらしさ(IT’s your vibe)」である。ファッション業界のプレイヤーたちは、この数カ月間、五輪関連の商品やパートナーシップを積極的に盛り上げてきた。12月のプレスリリースによれば、ラルフローレンが手がけた米国代表の開会式用ユニフォームには、「存在感のあるウィンターホワイトのウールコート」が含まれている。一方、閉会式用ユニフォームは「ヴィンテージのスキー・レーシングキットから着想を得た」ものだという。「我々のスポーツとスタイルのヘリテージを、ミラノ・コルティナ冬季五輪で具現化できることを楽しみにしている」と、ラルフローレンのプレジデントであるパトリス・ルーヴェ氏は、11月の決算説明会で語った。
ラルフローレンが手がけた閉会式用ユニフォーム
見た目だけではない、競技を支える高機能アパレル
五輪におけるファッションへの注目が高まる一方で、ブランド各社は依然としてフィット感、素材、機能性を最優先している。ここで目を引くユニフォームを着用することと、競技パフォーマンスに最適化された製品を用意することは、まったく別の話だからだ。米国代表の表彰台スポンサーを務めるナイキ(Nike)は、冬季五輪で「サーマフィット・エア・ミラノ・ジャケット(Therma-FIT Air Milano)」を初披露する予定である。同社はこのジャケットを、「同種の製品のなかで、ブランド史上もっとも高度に技術設計されたウェア」と位置づけている。ジャケット内部の区画に空気を送り込んだり抜いたりすることで、選手自身が体温調節を行える仕組みだ。「すべてのディテールは、アスリートが自身の快適性とフィット感を調整できるよう設計されている」と、アパレル開発のリードイノベーターであるエイミー・アクティミチャック氏は声明で述べている。アパレルブランドは、アスリート以外の人々に向けた独自のテクノロジーも開発している。その一例が、ヘルスケア向けアパレルブランドのフィグス(Figs)である。2026年は、スクラブで知られる同社が、アスリートを支援する米国代表医療チームのメンバーに初めてユニフォームを提供する冬季五輪となる。「我々の目標は、彼らに独自の表彰台を与えることだ」と、フィグスのCEO兼共同創業者であるトリーナ・スピア氏はModern Retailに語った。
フィグスの米国代表用ギア/フィグス提供
睡眠や医療まで含めた「回復」を支えるウェアの重要性
一方、ナイトウェア企業のダグスメジャンは、スイス・ナショナル・アイスホッケーチームのメンバーに、就寝時用のパジャマとスリープマスクを提供している。アスリートにとって、特に睡眠中の適切な回復は、「栄養と同じくらいトレーニングの一部」であると、CEOのカタリーナ・ダーリン氏は語る。ダーリン氏は、スイス連邦材料科学技術研究所(Swiss Federal Laboratories for Materials Science and Technology)などのパートナーと協議しながら、夫とともにダグスメジャンを立ち上げた。同社によれば、同ブランドのナイトウェアは通気性に優れた天然繊維を使用し、体温調節に重点を置いているという。ダーリン氏は、ダグスメジャンの素材は、試合後のアイスホッケー選手が気持ちを切り替えるのに最適だと考えている。「試合はかなり遅い時間に行われることが多く、非常に明るい照明と高い緊張感のなかでプレーする。そのあと、リラックスして眠りにつこうとしなければならないが、慣れないベッドで、空調も自由に調整できないことが多い。どれだけうまく回復できるかが、いざというときのパフォーマンスや反応に大きく影響する」と同氏はModern Retailに語った。ダグスメジャンは2021年からスイス・ナショナル・アイスホッケーチームを支援しており、双方はこのパートナーシップについてソーシャルメディアで発信している。技術特化だけでなく、ライフスタイル商品で広がる五輪ビジネス
五輪に関わるすべてのファッション企業が、現地で活動する人々のために高度な機能素材を開発しているわけではない。イベントを活用する方法は複数あり、帽子やスウェットシャツといったギアのライセンス契約もそのひとつだ。こうしたアイテムは、ファンがチームや大会への応援を示す手段となり、同時にブランドの売上増加にもつながる。一部のファッションブランドは、より消費者視点にフォーカスしている。スイムトランクスやボードショーツを手がけるチャビーズ(Chubbies)は、自宅で着用できるファン向けのライフスタイルコレクションを展開した。このラインは、パフォーマンスポロシャツ、フーディー、裏地付きスイムトランクスなどで構成されており、米国代表チームとのライセンス契約の一環である。
チャビーズの米国代表コレクション/チャビーズ提供
