3年で戦力外…元日ハム野手の現在 25歳のプロ入りが生んだ焦り「1年ダメだったらクビに」
元日本ハムの樋口龍之介は、全府中野球倶楽部でコーチ兼任選手
2022年限りで日本ハムを戦力外となった樋口龍之介内野手は今、クラブチーム「全府中野球倶楽部」でコーチ兼任選手としてプレーしている。平日は会社員として営業の仕事をしながら、土日は野球。「クビになる世界じゃないので、とにかく野球を楽しんでいます。今、楽しいですよ。打てないとやっぱり悔しいんです」。幼少期のころのように、純粋に白球を追いかけている。
2019年育成ドラフト2位でBC新潟から日本ハムに入団した。立正大時代も主力ではなく「プロのプの字もなかった。独立に行って、うまくいけば企業に行きたいなって。生活も安定するし野球のレベルも高い」と考えていたという。しかし新潟での1年目を終えると“転機”が訪れた。
横浜高時代の1学年先輩で、当時日本ハムに所属していた近藤健介(現ソフトバンク)からかかってきた1本の電話。「手伝いに来ないか?」。それは1月に鹿児島・徳之島で行う自主トレーニングのサポート役としての誘いだった。“バイト”として参加すると、そこで松本剛や上沢直之らがシーズンに向けて必死に汗を流す姿を目の当たりにした。「すごいなって。僕もプロに行きたいと思いました」。
2年目で成長の兆しを見せると、3年目にリーグ4位の打率.354、同日本人トップの19本塁打、69打点の成績を残し、25歳にして目指してきたNPBへの扉を開いた。それも近藤と同じ日本ハムだ。新人だった2020年途中に支配下登録を掴み、プロ初本塁打もマーク。2022年から育成契約となり、2023年は支配下復帰できずオフに戦力外となった。
NPB目指すきっかけとなった近藤健介に尽きない感謝「背筋が伸びちゃう」
通算47試合で打率.176、1本塁打、4打点だった3年間のNPB生活に「焦っちゃったんですよね。入るのが遅かったので、1年間ダメだったらクビになると思っていて自分の中でいろいろ変えてしまった。打てなくても自分を貫けていればよかったんですけど、どうしても1軍にいたい気持ちと活躍したい気持ちで、どうしようどうしようみたいな……」と後悔も明かす。
2022年はイースタン・リーグで83試合に出場して打率.244、7本塁打、27打点の成績を残しながら戦力外。「本当に必要だったら支配下されていたと思うので、選ばれないならそうなんだろうなって」と淡々と受け止めた。「よく頑張ったなって、一回自分の中でなったんです」と一度は野球を辞めることを考えたが、縁もありクラブチームへ。それから2年が経ち「なんやかんや野球が好き。楽しいなっていうのが続けている理由です」と充実感を漂わせた。
今も、シーズン中は就寝前にパ・リーグ3試合のハイライトを見るのが日課。古巣の仲間たちの活躍をチェックする中でも欠かさないのが、近藤の動向だ。シーズン終盤に右足首の怪我を負った際には「大丈夫ですか?」とLINEを送ろうとするも、最後の送信ボタンが押せず。「近さんは高校の先輩なので、飛び越えられない線があるんです。背筋が伸びちゃう」と照れ笑いした。
樋口にとってかけがえのないNPBでの3年間。その景色を見させてくれたのは、近藤がいたから。尽きない感謝とともに、30歳になり次の目標も浮かんでいる。「ふと思うのが、このチームからプロに行ったら面白いなって。現実問題はなかなか難しいと思いますけど。若い子たちや、あまり経験していない子も多いので、いろいろ伝えられたらいいなと思っています」。その表情からは、野球を目一杯楽しんでいる様子が伝わってきた。(町田利衣 / Rie Machida)