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芸人に麻酔をかけて意識を失わせるシーンを配信したAmazonプライム・ビデオのバラエティ番組『KILLAH KUTS』をめぐり、日本麻酔科学会が「断じて容認できるものではない」と批判する声明を出して波紋を広げた。

番組側は「胃カメラ検査を目的とし、医師による監修」をおこなっていると説明していたが、麻酔科学会は、世界的歌手マイケル・ジャクソンさんの死因ともされる麻酔薬の不適切な利用に警鐘を鳴らした。

その後、問題とされたエピソード『麻酔ダイイングメッセージ』のエンドクレジットから、「医療監修」をつとめた2人の医師のうち、1人の名前が消えた。番組には他にも編集の形跡がある。

麻酔科学会の声明に対する見解を尋ねるため、弁護士ドットコムニュースは、Amazonプライム・ビデオの運営会社や医師に問い合わせたが、11月10日までに回答は得られなかった。

●学会「⿇酔薬の安全な使⽤に対する信頼を損なうことを深く憂慮しております」

今年10月から配信された『KILLAH KUTS』のエピソード『麻酔ダイイングメッセージ』は、実際の病院で麻酔をかけられた芸人が意識を朦朧とさせるシーンが描かれている。

番組側は、麻酔はあくまで胃カメラ検査を目的としたもので、医師による医療監修も受けていることを何度も強調していた。

しかし、不適切な利用であるとして、公益社団法人「日本麻酔科学会」は理事長声明(10月16日)で厳しく批判するに至った。

「プロポフォールが内視鏡クリニックを舞台に使⽤され、何らかの外科的処置を必要としない⼈物を意図的に朦朧状態にするという内容が含まれていることを知り、深い憂慮を抱いております」

「マイケル・ジャクソン⽒の死亡事故などでも広く知られているように、適切な医療管理が⾏われない場合、⽣命に危険を及ぼす可能性があります。

したがって、このような⿇酔薬をいたずらに使⽤する⾏為は、極めて不適切であり、⽇本⿇酔科学会として断じて容認できるものではありません。

また、このような使⽤⽅法が誤ったメッセージを国⺠に伝え、⿇酔薬の安全な使⽤に対する信頼を損なうことを深く憂慮しております」(声明から)

●配信と医療監修の医師らは取材に答えず

配信側は声明の批判をどのように受け止めているのか。「不適切」との指摘について反論はあるのだろうか。

弁護士ドットコムニュースは、Amazonプライム・ビデオの運営と医療監修に名前のあった2人の医師(病院)に問い合わせた。

配信側から返答はなく、ロケ地にも利用された病院(1人の医師が所属している)は「お断りしています」と取材に応じなかった。

もう1人の医師には、エンドクレジットにも記載のあった所属先病院を通じて取材を求めたが、退職を理由に回答は得られなかった。そうした中で、この医師の名前が「医療監修」からも消えた(10月23日確認)。

そこで、非常勤医師として所属する別の病院を通じて、改めてこの医師に問い合わせたところ、「本人が対応する」(病院)ということだったが、結局、回答はなかった。

この医師には、医療監修から名前が消えた理由とともに、実際に医療監修を務めていたのかも尋ねていた。

●「隣室に人口呼吸器を用意」と公表

また、エピソード冒頭に示される注意書きにも新たに〈隣室に人口呼吸器を用意した環境下で実施しております〉と記載する変化がみられた(11月7日確認、※「人口」はママ)。

これは麻酔科学会の声明の中に、静脈⿇酔薬について「呼吸抑制のリスクを伴うため、必ず⼈⼯呼吸管理が可能な環境で使⽤される必要があります」との言及があったことを受けてのものとみられる。

「麻酔ダイイングメッセージ」の企画について、X上では「面白かった」と好意的に受け止める意見も少なくない。一方で、内視鏡検査を手がける病院から「同じ医師として非常に残念」という声も出ている。