敗れた者たちも一緒に紡ぐ、野球という素晴らしきドラマ【山本萩子の6−4−3を待ちわびて】第139回
頂上決戦の敗者について語った山本キャスター
2024年も無事にペナントレース、そしてポストシーズンゲームが終わりました。今回、プロ野球とメジャーリーグの優勝シーンをそれぞれ見て、感じたことを記したいと思います。
まずはDeNAの選手のみなさま、そしてファンのみなさま、おめでとうございます。ドジャースの選手とファンのみなさまもおめでとうございました。
個人的に印象的に残ったのは、優勝決定戦で負けたチームの悔しそうな表情です。ヤンキースのフアン・ソト選手は、敗戦が決まった後にベンチからしばらく動けませんでした。彼の呆然とした表情を見て、胸が詰まる思いがしました。ファンももちろん悔しいけど、選手たちの思いは計り知れません。
日本ではソフトバンクが、ペナントレースで2位に13.5ゲームという大差をつけてのリーグ優勝。CSも順調に勝ち上がりましたが、日本シリーズでは2連勝からまさかの4連敗。シーズン前から下馬評がとても高く、パ・リーグを圧倒的な成績で制したチームだからこそ、"やられた感"がより強かっただろうと推察します。
それにしても、ペナントレースで優勝しても、最後に負けるというのはあまり気分がいいものではないでしょう。選手たちがいつか2024年を振り返ったときに、最高の思い出とならなさそうなのが切ないです。そして、そのモヤモヤは次のシーズン開幕まで続くのです。
今年も野球が楽しい1年でしたね。試合のない毎日が寂しいです。
大谷翔平選手の移籍で注目を集めたドジャースは、ヤンキースを倒して見事世界一に輝きましたが、大谷選手の影響で今年からポストシーズンを見始めた、という方も多かったのではないでしょうか。
少しだけ補足させていただくと、ドジャースはレギュラーシーズンではすごく強いのに、ポストシーズンではなかなか勝てない年が多くあったんです。そんなこれまでの鬱憤(うっぷん)を晴らせたのは、やはり大谷選手の加入も大きかったと思います。
ただ、ドジャースのような常勝軍団が勝てなかったのは、ポストシーズンの特殊性にも原因がありそうです。レギュラーシーズンが"マラソン"なら、ポストシーズンは"短距離"。まったく別の競技の趣(おもむき)さえあります。それは日米で変わりませんが、メジャーはワールドチャンピオンへの執念がかなり強いと感じます。一方で日本では、個人的にはレギュラーシーズンに重きが置かれがちな印象です。そんな対比も面白いですよね。
私は地元が横浜で、幼い頃から何度も試合を見に行ったチームですから、DeNAの優勝を祝福する気持ちはもちろんあります。ただ、「日本一」という称号には少しだけ悔しさ(笑)を感じるので、「日本シリーズ優勝、おめでとうございます」とお伝えさせてください。
また、敗れたソフトバンクも、ヤンキースも素晴らしいゲームを見せてくれました。私が言うのも大変失礼かと思いますが、来年はこの悔しさをバネにしてもっと強くなってくると思います。勝者はもちろん、負けたチームも選手も野球というドラマの中で、それぞれ重要な役を担っているのだとあらためて思いました。
今から来シーズンが楽しみですね。それではまた。
構成/キンマサタカ 撮影/栗山秀作