Screenshot: YouTube / AIR RACE X

「えっ。なんでみんな空にスマホを向けてるの?」

Photo: おかりな
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2024年10月19日、渋谷の宮下公園に集まった人たちの様子がおかしいんです。

みんな空を見上げ、あっちこっちにスマホを掲げて大興奮。まるで何かが渋谷上空を飛んでいるみたいだけど、見上げてみても何もありません。

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チラっと画面をのぞいてみると、そこには飛行機の姿が。

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スタッフの方に促されるまま、「STYLY」というアプリをインストールしてQRコードを読み込んでみると……

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なんと見慣れた渋谷の空に、飛行機が飛んでいるのが見えるようになりました。

これは何かというと、「AIR RACE X」と呼ばれる、2023年から始まった革新的な飛行機レース。

世界6カ国から8名のパイロットが集まり、時速約400kmにも及ぶスピードと正確な操縦を競い合い、その飛行データをXR(エクステンデッドリアリティ/クロスリアリティ。「VR(仮想現実)」「AR(拡張現実)」「MR(複合現実)」の包括的な総称)上に再現するモータースポーツです。

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その今シーズンのファイナルラウンドが、ここ宮下公園で行なわれていたわけなんです。

「AIR RACE X」は本物のパイロットたちによる、本物のレース

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観客はスマホを空に掲げ、XR(エクステンデッドリアリティ)技術を駆使してそこに飛行機を見ているわけですが、「AIR RACE X」は紛れもなく本物のモータースポーツです。

「どういうこと?」って思うかもしれませんが、最初に押さえておきたいのは、「AIR RACE X」では、世界中にいるパイロットが異なる拠点でレースに参加しているということ。

つまり、実際には同じ場所で同時に飛行しているわけではありません。

そりゃスマホなしに空を見上げても飛行機は飛んでいないわけです。

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しかし、その飛行自体は「リアル」そのもの。

それを可能にしているのが、「超高精細センシング技術による飛行データ計測」です。

各機体に搭載された高精度センサーが、飛行中の位置や速度、高度、Gフォースなどを1/1000秒単位、誤差3cmの範囲で測定。これにより、世界中どこで飛んでいても同じトラックを飛んでいるかのようにリアルにデータが集約されるわけです。

さらに、そのデータは「USBトークン」を使ったデータ改ざん防止システムに基づいて大会本部のサーバーに送信されるため、お客さんは信頼できるデータに基づくレースを楽しむことができます。

時間と場所に縛られないエアレースを実現するテクノロジー

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でも、もう一つ疑問が浮かびます。

「飛行場所によって気象条件が異なるから、フェアにならないのでは?」。

この懸念に対応するため、「AIR RACE X」は飛行場所と気象情報から自動的にハンディキャップタイムを割り当てる独自のアルゴリズムを開発。

場所によって異なる気温や気圧などの気象条件を公平にするため、各フライトのデータには「ハンディキャップタイム」が自動的に適用されるようになっているんです。

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そして、スポーツにはルールと審判が必要。

「AIR RACE X」の競技性を高めているのが「ペナルティ自動付与システム」です。パイロットたちにはスピードだけでなく、正確な操縦技術も求められており、例えば「パイロンヒット」や「コースアウト」といった違反が発生すると、センサーがそれを即座に検知。ペナルティに応じたタイム加算が自動的に行われるのです。

実際、パイロットのミスで大きく試合結果が変わる展開がこの日も見られ、お客さんたちの驚きの声が聞かれる場面も。

テックが可能にする「体験」と興奮

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さらに、渋谷の観客が「ライブ感」を楽しめるようにしているのがXR技術です。

先ほど紹介したように、観客はスマートフォンにVR/AR/MRコンテンツを体験できる空間レイヤープラットフォーム「STYLY」アプリをインストールすることで、渋谷の街を背景に、まるで実際に飛行機が目の前を駆け抜けているような迫力のレースを体験できます。

飛行機をスマホで追いかけるのはなかなか難しいのですが、だからこそ時速約400kmというスピードの実感を得られ、観戦の興奮を高めてくれます(飛行機が飛ぶ方向を示すガイドが表示されるので、構えておけばほぼ確実に飛行機は見られます)。

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実況も含め、自分の目の前でレースが繰り広げられているかのようなリアルな観戦体験は、まさにスポーツそのものです。

「AIR RACE X」に感じる、モータースポーツの未来

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「AIR RACE X 2024」渋谷デジタルラウンドの決勝トーナメントを制したのは、日本の室屋義秀選手。

2位はオーストラリアのホール選手、3位には南アフリカのデイビッドソン選手が続き、彼らをビデオ会議で繋ぐ形で表彰式が行なわれました。 リモート表彰式というのも「AIR RACE X」の特徴を表現していますね。

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そして表彰式の後には、室屋選手と今大会のために来日していたオーストラリアのエマ・マクドナルド選手とのトークセッションが。

従来のエアレースと違って、リアルなパイロンが設置されない「AIR RACE X」独自の飛行テクニックなどが語り合われ、次世代のレース技術が磨かれ始めているのが感じられました。

そう、次世代。「AIR RACE X」を渋谷のど真ん中で体験して感じたのは、これはモータースポーツの未来を切り開くのではないかということなんです。

そもそも渋谷上空で実際に飛行機レースを行なうことは不可能ですが、それ以前に、飛行機が2台同時に競走するレースだって危険すぎてほぼ不可能ですよね(以前はありましたが、調べた限り現存はしていないはず)。

しかし「AIR RACE X」は本物のパイロットたちが、本物の飛行をし、それを同時に飛んでいるように観戦できます。お客さんは実際に目の前で飛行機がデッドヒートを繰り広げているかのように、歓声を上げます。

これは「エアレースの代替」ではなく、「新しいエアレース」。そう表現しても、決して大袈裟ではないと思いました。

ぜひ、YouTubeでアーカイブをチェックしてみてください。

Source: AIR RACE X Photo: おかりな