本当に対策する気ある? Metaのプラットフォームで繰り返される詐欺広告
人をだますのは悪。これだけは間違いない。
米独立系報道機関ProPublicaが掲載した最新レポートは、「フェイクをマネーに変えるインターネットマシンであるFacebookは、政治的なメッセージを含む広告を買う詐欺師で溢れている」と伝えています。
FacebookやInstagramといった、Metaのプラットフォームで詐欺が横行しているというのは、今に始まったことではありません。ただ、この記事を読むと、それがどれだけ大規模に展開されているのか、そしてMetaがそれを取り締まることができていないということがわかります。
そしてこの報告書の注目ポイントの1つが、ProPublicaが「FacebookとInstagramで9億回」表示された広告を掲載した詐欺ネットワークを特定した、というところです。
今回の報告書は、コロンビアジャーナリズムスクールのTow Center for Digital Journalismと、大手テック企業を調査する非営利団体Tech Transparency Projectが調査したもの。そしてProPublicaは、レポートで特定された詐欺ネットワークのほとんどが、個人情報を収集・販売するリードジェネレーション企業だと指摘しています。ちなみにリードジェネレーションとは、見込み客獲得のための活動のこと。
トランプ氏関連から保険商品まで
こうした広告の中には「トランプ前大統領やバイデン大統領も支持!」などと偽ったものもあれば、もっとローカル色を出して「イリノイ州のJB・プリツカー州知事のお墨付き」的な内容のものもあり、手法はさまざまです。
例えば今回の記事で紹介されている広告では、プリツカー知事の写真が使われ、「イリノイ州では、89歳以下の高齢者が加入できる最大3万5000ドルの葬儀費用保険を承認!」と書かれています。これはイリノイ州の比較的弱い立場にある高齢者をターゲットにしたもので、70代や80代の人々にお得な葬儀保険を紹介するカタチを装っていることがわかりますね。
他にもより具体的に政党色を前面に出した広告も。あるアカウントでは、「リベラルな活動家がトランプ、ヴァンス両氏の看板を地面から引き剥がし、全国で論争を巻き起こしている」と謳いつつ、トランプ氏関連商品を販売しているといいます。
詐欺に遭った人のなかには、「トランプコインを買っただけなのに、気づかないうちに定期購読に申し込んでいた」というトランプ氏の支持者もいたそうです。
Watch this video of an AI-generated news anchor hawking a “limited-edition Trump-Vance coin" and calling both candidates "handsome devils."
- Tech Transparency Project (@TTP_updates) October 31, 2024
The anchor warns that “left-wing radical groups” are “campaigning to ban the coin.”
Confused? Get the whole story in TTP's report: https://t.co/QPFXPQp3Dp pic.twitter.com/ipvJn7Y01O
また政府の医療保険が無料になるという、至極まっとうな人々をターゲットにした広告もたくさんありました。今回のレポートでも、Facebook ユーザーを「既存の保険プラン内容を変更したり、資格のないプランに加入させたりする非倫理的な保険代理店」に誘導するものが紹介されています。この場合、詐欺師グループの狙いは手数料を得ることなのです。
詐欺広告元の企業はバンされていない?
この記事では、もう1つ衝撃的な事実を伝えています。それは、詐欺師の広告が特定されても、親のネットワーク自体がアカウントを継続できること。これは本当にチェックしておくべきです。
ProPublicaより
調査の結果、Metaが違反広告を削除した後でも、関連するFacebookページとアカウントの運営は継続され、親ネットワークが新しいページと広告を掲載することができていました。
米Gizmodoは先日Meta にコメントを求め、特に「詐欺コンテンツが発見された後も、詐欺ネットワークが運営を継続できるのはなぜ?」と追及してみました。
同社はそれについては回答せず、ProPublica に送ったのと同じ声明が送られてきました。その内容は「執行システムを常に更新している」というもの。
Metaの広報担当者は声明の中で次のように述べています。
我々はProPublicaが一連の詐欺行為を調査したことを歓迎します。
この詐欺行為には、医療費控除や政府からの家賃補助を宣伝する欺瞞的な広告も含まれていました。
広告のなかには数年前のものもありましたが、すべてMetaの広告ライブラリで公開中。広告は7年間保存されます。
当社調査の結果、詐欺、なりすまし、スパムに対する継続的な取り組みの一環として、我々の執行システムはすでにこれらのページの大部分を検出し、無効化していました。
残りのページについてもさまざまなポリシー違反をレビューし、措置を講じました。
これは非常に敵対的な分野であり、詐欺師の行動の変化に対応するために執行システムを継続的に更新しています。
自社プラットフォーム上で詐欺広告を特定するのが超苦手なMetaが、人工知能に力を入れているというのはある意味皮肉ですね。詐欺を発見し、関連アカウントが広告を出せなくするようにするというのはAI向きの仕事でしょう。もちろんAIが単なる盗作コピペマシンでないなら、ですが。
自分の身は自分で守ろう
もちろん詐欺に悩むプラットフォームは、Facebookだけではありません。
Truth SocialからGrindrまで、あらゆるネットワークに詐欺師がいて、ユーザーから金銭を搾取しようと狙っています。
とはいえ、Metaですから。世界中に広がり、何十億ものユーザーを抱える一大企業がゴミに埋もれているというのは、なんともユニークというか…。残る疑問は、なぜ人々が日々、自ら進んでゴミ捨て場に身を投じるのかということです。