阿部巨人の頭脳!橋上作戦戦略コーチ初指導で「捨てる勇気」伝授「ツーストライクまで振れるところをいかに待てるか」
阿部巨人の打撃改革へ新風が吹き込まれた。14年以来の復帰となった橋上秀樹作戦戦略コーチ(58)が2日、ジャイアンツ球場の秋季練習で本格始動。攻撃陣に「捨てる勇気」のススメを説いた。投高打低の現代野球で狙い球を絞る重要性を強調。「ストライクは幸い3つある。ツーストライクまではしっかり振れるところをいかに待てるか」と掲げて門脇、丸らと意見交換した。豊富な経験に課題の打力強化が期待される。
阿部巨人の新たな頭脳が動き出した。橋上作戦戦略コーチがG球場で行われている若手主体の秋季練習で本格始動。10月29日の新体制初日にスーツであいさつして以来の参加で、球団ウェアを着用して指導した。雨のため室内だったが、門脇や自主練習で訪れていた丸らと対話。「打席内で狙い球に関してどう考えているかなど、ちょっと話をしました」と個々の特長把握のために情報収集した。
その上で「今の時代、投手がいいから真っすぐを待って変化球を打つのは難しいよね」との話もしたという。今季のセ・リーグは規定以上で3割打者が2人だけで防御率1点台の投手が5人。「今は投手が本当にいいので、昔のような待ち方では軒並み数字が落ちると思う。そこでどう打者が生き残っていくか。受け身の打者が唯一できるのは狙い球を絞って振るか振らないか」とヒントを示した。
投高打低の傾向が顕著な現代野球。相手投手の全球種を打ちにいくのは至難の業だ。「ストライクは幸い3つある。そのうち2つは振っても振らなくてもいいので。そこは打者の優位性を生かしたい。追い込まれたらそうはいかないけどファーストストライク、ツーストライクまではしっかり振れるところをいかに待てるかが大事になる」。割り切って狙い球を絞る「捨てる勇気」も必要と説いた。
4年ぶりにリーグ優勝した今季は、ともに球団ワーストの13試合連続3得点以下、シーズン20度の完封負けと打線が苦戦した。DeNAに敗退したCS最終Sでも6試合計9得点、チーム打率1割7分と投手陣を援護できなかった。打者有利カウントで当てにいくような打撃の凡打も多くあった。橋上コーチには強振を後押しするサポート役として大きな期待がかかる。
楽天時代に名将・野村克也監督の下でヘッドコーチとしてID野球を学び、13年WBCでは侍ジャパン戦略コーチも務めた。「確率の高いもの(指示)を選手に提供できればもう少し思い切って振れるかなと。投手有利なこの時代でも、もう少し点が取れるとか、選手個々の打撃成績が上がるんじゃないかと思っています」。豊富な経験と確かな眼力を持つ橋上コーチは巨人打線の伸びしろがあると見ている。(片岡 優帆)
〇…橋上コーチは今季打率2割4分3厘の遊撃手・門脇に熱視線。「どのチームも一、三塁、外野には、ある程度打てる選手がそろう。チーム力に差が出るのは二遊間、捕手。そこに打てる選手を配置できると大きい。門脇選手の打撃向上はチームにとって大きい」と期待した。今季までオイシックスの監督としてイースタン・リーグで巨人2軍と対戦。相手として見ていた若手とも会話した。
◆橋上コーチの前回の巨人コーチ時代 12年に「戦略コーチ」として加入。高校の後輩の阿部慎之助捕手に打席内での狙い球について助言してキャリアハイの打率3割4分、104打点で首位打者と打点王の2冠獲得をサポートした。見逃し三振を容認して四球増、出塁率アップ。投手と打者のカウント別の心理の違いなどを分かりやすく伝え、在籍した14年まで3年連続リーグ優勝に貢献した。
◆橋上 秀樹(はしがみ・ひでき)1965年11月4日、千葉・船橋市生まれ。58歳。安田学園高から83年ドラフト3位でヤクルト入り。入団後、捕手から外野手に転向。日本ハム、阪神を経て2000年に引退。05〜09年まで楽天コーチ。BC新潟監督を経て12年から14年まで巨人で戦略コーチ、打撃コーチ。15年から楽天、西武などでコーチを歴任し、今季はオイシックス新潟の監督を務めた。