スポニチ

写真拡大

 ◇SMBC日本シリーズ2024第3戦 DeNA4―1ソフトバンク(2024年10月29日 みずほペイペイD)

 「SMBC日本シリーズ2024」は29日、舞台を福岡に移した第3戦でDeNAが4―1でソフトバンクを下し、1勝2敗とした。左太腿裏の肉離れから復帰登板だった東克樹投手(28)が、7回1失点でプロ初の10安打を浴びての白星。ソフトバンクの日本シリーズ連勝を14で止め、リーグ3位からの「成り上がり日本一」に向け逆襲への白星を引き寄せた。 

 我慢しきれなかった。東は厳しい表情で、バックネットのやや一塁側の客席を指さした。3―1の6回1死一塁。今宮を2球で追い込んだ場面で、原球審にアピールした。原因は初回から続いていた指笛。「投げる瞬間、わざと口笛を吹く感じがあった。凄く気になった。僕たちは一球一球が勝負。これが仕事で人生を懸けてやっている」。場内アナウンスで注意喚起され、敵地はざわついた。

 7回105球、毎回の10安打を浴びたが1失点で粘った。負ければ王手をかけられる窮地。心ないファンの指笛の“陽動作戦”にも屈せず、チームに初勝利をもたらし「全員、丁寧に一球一球、投げようと思った。要所でしっかり抑えられた」と振り返った。

 復活のマウンドだった。12日の阪神とのCSファイナルS初戦で安打を打った際の走塁中に左太腿裏を肉離れ。一時はポストシーズン絶望ともみられたが、「DH」制となるこの第3戦を目標に設定し、懸命に治療とリハビリに取り組んだ。

 この日は通常より早めに右足を着地させるクイックモーションを取り入れるなど工夫。万全ではない中で、3回先頭・柳田の一塁ゴロでは全力疾走でベースカバー。「そりゃ、走るのは怖かった」と振り返ったが、「脚がちぎれてもいいぐらいのつもりでマウンドに上がった。自分らしく粘り強い投球ができた」とエースの責任を果たした。日本シリーズ14連勝、本拠地では16連勝だったソフトバンクを止める意地の投球。三浦監督は「大したもん。ここまで回復するとは」と称えた。

 日本シリーズで10安打を浴びて勝利するのは、94年の桑田(巨人)以来30年ぶり。2連敗からの大きな1勝をもたらした。リーグ3位からの「成り上がり日本一」への逆襲開始。何よりチームのためにマウンドに戻った東は「(離脱して)もどかしい気持ちもあった。ようやく自分の出番という喜びもあった。期待に応えられてよかった」とホッとしたように笑った。(大木 穂高)

 ▼DeNA・三浦監督(シリーズ初勝利に)ホッとしている。試合にいい形で入れた。もう一度、流れをつかめるようにしたい。

 ≪V率37%≫DeNAがシリーズ初勝利。引き分けを含め、2連敗後から初勝利を挙げたのは22年オリックス以来20度目。過去19度のうち優勝は7度でV確率は37%になる。逆転Vの7度は全て次の試合に勝ってタイに持ち込んでいる。また、この日、東は被安打10本。最多被安打の勝利投手は81年第5戦西本聖(巨)の13本で、2桁被安打で勝利は94年第5戦の桑田真澄(巨=10本)以来30年ぶり。

 ≪ハマスタでは指笛禁止≫東が敵地での登板中に指摘した指笛。本拠地・横浜スタジアムでは禁止事項になっている。球団公式サイトの「観戦時のお願い」の「観戦ルール」として「応援に際しての禁止事項」の項に「拡声器の使用、指笛での応援」と記載されている。