子育てファミリーのマイホーム取得支援制度が充実! フル活用で負担軽減を
2024年9月現在、特に若い世代がマイホームを取得するための各種の補助金などの優遇制度が充実していますが、それがいつまでも続くとは限りません。いずれマイホームを購入したいと考えているのであれば、早めに準備して、優遇制度をフルに活用したいものです。
4つの支援策で1,000万円以上の負担軽減
国土交通省のホームページをみると、「エコな暮らしで子育てサポート!! 住宅取得に使える4つの支援策」というページが掲載されています。4つの制度の概要は図表1にある通りで、併用が可能です。上手に活用すれば、子育てエコホーム支援事業で100万円の補助金を得た上で、13年間で最大455万円のローン減税を受け、贈与税の非課税枠1,000万円で350万円の贈与税を節税でき、【フラット35】の金利1.0%の引き下げで総返済額が200万円以上の軽減になります。
すべて合わせると1,000万円以上の負担軽減となる計算となるため、これを利用しない手はありません。特に若い世代が対象となっている制度が多いので、早めに準備してマイホームを購入しリタイアまでに住宅ローンの返済を終えられるようにしておけば、人生100年時代における長い老後も、ゆとりを持って送ることができるようになるのではないでしょうか。
では、どんな支援策があり、どんな人が活用すれば、どれくらい得できるのでしょうか。具体的にみていくことにしましょう。
子育てエコホーム支援事業は2024年12月末までの予定、早めの打ち切りの可能性も
まず、➀の子育てエコホーム支援事業は、各種物価高騰の影響を受けやすい子育て世帯・若者夫婦世帯による、高い省エネ性能を有する新築住宅の取得や、住宅の省エネ改修などを支援します。子育て世帯・若者夫婦世帯による省エネ投資を促進、2050年カーボンニュートラルの実現を図るための制度です。
2023年度補正予算で2,100億円、2024年度当初予算で400億円が計上され、合計2,500億円規模の大型予算が組まれています。2024年3月に受付がスタートしてから、2024年9月2日段階で、予算枠に対する申請額は新築が46%、リフォームが42%に達しています。
2024年12月末までの申請受付予定ですが、予算枠に達しそうな段階で打ち切りになるため、12月末まで続かない可能性も。国土交通省ではホームページにおいて「お早めの申請をおすすめします」としています。申請状況は日々更新されていますので、国土交通省のホームページで最新情報を確認した上で、打ち切りになる前に申請できるようにするのがいいでしょう。
長期優良住宅を購入すれば100万円の補助金
子育てエコホーム支援事業の概要は図表2にある通りです。
新築住宅は長期優良住宅やZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)水準住宅といわれる、省エネ性能の高い住宅を取得する人が対象です。1戸当たり100万円または80万円の補助金で、既存の住宅を省エネ改修するときには30万円または20万円を上限に補助されます。
対象となるのは、申請時点において18歳未満の子を有する世帯、または、夫婦のいずれかが40歳未満の若者夫婦世帯。リフォームについてはそれ以外の世帯も対象になりますが、補助金額が少なくなります。この補助金の申請者は消費者ではなく、住宅のメーカーや販売会社などで、補助金も住宅のメーカーや販売会社に入金されます。消費者が受け取れるわけではありませんが、逆にいえば、消費者にとっては手間をかけずに、実質的に最大100万円の補助をうけられると考えるといいでしょう。
省エネ性能の高い住宅は家計にもやさしい
対象となる省エネ性能の高い住宅は、CO2排出量が減って地球環境にやさしいというだけではありません。住む人にとっては、常に室内が一定の温度に保たれるので冬のヒートショック、夏の熱中症のリスクを抑えることができます。より快適で安全な人の健康にもやさしい住まいです。さらに、断熱性が高いので光熱費を削減でき、家計にもやさしい住まいになります。
国土交通省の試算によると、図表3にあるように、東京23区の例では、年間の光熱費を5万円以上削減できるそうです。これは、現在の省エネ住宅と比較しての試算ですから、省エネ性能の低い古い住宅に比べれば、年間10万円以上は負担が軽くなるのではないでしょうか。札幌市のような寒冷地では、光熱費の削減効果はもっと大きくなります。
住宅ローン減税を受けるなら早めの購入・入居が得策
4つの支援策の②の住宅ローン減税は、返済期間10年以上の住宅ローンを利用してマイホームを取得した場合などに、当初13年間、毎年の年末ローン残高の0.7%が所得税・住民税から控除される仕組み。2024年入居の場合、対象となる年末ローン残高は4,500万円ですが、子育て世帯・若者夫婦世帯については5,000万円に引き上げられています。
13年目の年末ローン残高が5,000万円以上あれば、5000万円×0.007(0.7%)×13(年)で、最大455万円の控除額になります。2025年の入居についても、今のところ2024年入居と同様の制度が適用されそうです。しかし2026年以降は未定で、場合によっては縮小、廃止される可能性もないとはいえません。早めの購入、入居が得策です。
大規模な新築マンションの場合、契約から竣工、入居までに1年~2年とかかることがあります。あまりのんびりしていると、減税額が減ったり、無くなったりする可能性もあるので注意しておきたいところです。
1,000万円の贈与税非課税枠で350万円の節税
➂の贈与税の非課税枠というのは、通常は年間110万円超の贈与を受けると贈与税の対象になるところ、両親・祖父母などの直系尊属から住宅取得のための費用の贈与を受けた場合、質の高い住宅であれば最大1,000万円まで非課税になるという制度です。贈与税には年間110万円の基礎控除があるため、合わせて1,110万円まで非課税で贈与を受けることができます。
1,110万円の贈与を受けた場合、課税対象は1,000万円です。税額計算では、1,000万円から控除額125万円を引いた875万円に対して、税率は40%になるため350万円の贈与税になります。それが、非課税枠1,000万円を利用できれば課税対象はゼロになって、税額もゼロですみます。本来支払うべき350万円の税金を節税できることになるのです。この非課税枠の対象となるのは、省エネ性能が高いなどの条件を満たす「質の高い」住宅であり、やはり省エネ性能がキーワードになってきます。
【フラット35】金利引き下げで200万円以上の軽減
住宅金融支援機構が民間機関と提携して実施している住宅ローンである【フラット35】には、さまざま金利引き下げ程度があります。現在は、➃の【フラット35】子育てプラスが実施されており、18歳未満の子どものある子育て世帯、夫婦どちらかが40歳未満の若者夫婦世帯であれば、最大で当初5年間または10年間の金利が1.0%引き下げられます。場合によっては、5年目、11年目から5年間の金利も0.25%または0.50%低くなります。
たとえば、借入額5,000万円で、35年元利均等・ボーナス返済なしで金利引き下げが適用されない場合、2024年8月現在の金利1.85%を適用すると毎月返済額は16万1,808円となります。しかし、金利が1.0%引き下げられて0.85%になると毎月返済額は13万7,674円となり、月額負担が2万4,134円軽減されます。それが10年間続くため、200万円以上の軽減になるのです。
合計では1,000万円以上も負担軽減に
以上の➀~➃を合計すると、1,000万円以上も負担軽減できる計算です。すべて利用できるのは18歳未満の子どものある子育て世帯、夫婦どちらかが40歳未満の若者夫婦世帯です。あまりのんびりしすぎていると、対象外になってしまう可能性があります。また、各種の支援制度には時期的な制約があり、打ち切りや、制度が変わって支援額が少なくなってしまう可能性もあります。
「いずれはマイホームを」と考えている人は、こうした支援制度が充実しているうちに、制度をフルに活用しながら、できるだけ少ない負担でマイホームを手に入れることを早めに考えてはいかがでしょうか。