「“黒人”理由にならない」南部の黒人層で進むハリス離れ 激戦州でトランプ氏リード

写真拡大

投票まで2週間を切ったアメリカ大統領選。どちらが勝つかが読めない選挙の命運を握る激戦州で、今リードしているのはトランプ氏の方です。ただ、そのトランプ氏ですが、かつて複数回にわたり“ヒトラーを称賛”するような発言をしたと新たに報じられました。大統領選への影響はあるのでしょうか。

【画像】「“黒人”理由にならない」南部の黒人層で進むハリス離れ 激戦州でトランプ氏リード

■黒人有権者が“ハリス離れ”

終盤戦、トランプ氏が演説場所に選んだのは激戦州の一つ、南部ジョージア州でした。ジョージア州は黒人有権者の割合が全米で最も高い、3分の1を占めています。民主党の岩盤支持層である黒人有権者層で変化が起きています。

黒人男性                                      「バイデン政権、トランプ政権の前から民主党は一般世帯をまったく支援せず増税ばかり。みんな自分の生活を維持できるか不安で、今の経済状況ではインフレの影響でほぼ不可能です。『いつか夢のマイホームを』と思っても、民主党に希望を持てるわけがありません」                      「(Q.黒人男性でトランプ支持が拡大しているそうだが)数年前はそれほどトランプ推しではありませんでした。若い黒人男性が現実を見るようになってきたと思います。自力で生活するのは本当に厳しい」

黒人の失業率が5.2%と突出して高くなっているジョージア州。そこにバイデン政権下で進んだ物価高が重なり、経済状況に不満をもつ黒人有権者層の間でトランプ支持が拡大しています。

共和党 トランプ前大統領                              「ジョージアよ。非常に高い支持率をたたきだしているそうじゃないか。最初に単純な質問をしたい。皆さんは4年前と比べて生活は良くなったか?(NO!)皆さんの1票によって、私はインフレを終わらせ、犯罪者の侵略を食い止め、アメリカン・ドリームを取り戻す」

直近の世論調査では、全米の黒人の民主党支持率は前回の90%から78%に減少。大きな要因となっているのが、黒人男性層での“ハリス離れ”です。アットウェルさん(34)はオバマ元大統領を支持してきました。しかし今回はトランプ氏を支持するといいます。

トランプ氏を支持 アットウェルさん                        「確かに黒人男性なら民主党支持と思われていますが、本来は両候補の政策を吟味して決めるべきです。『黒人だから』というのは投票理由になりません。『女性が大統領になるのは嫌だ』と友人たちも言っていました」

州内で戸別訪問を行ってきた共和党の黒人団体も手応えを感じています。困窮する経済状況に加え、実績と経験のないハリス氏よりも、強いイメージのあるトランプ氏を求めているといいます。

トランプ支持団体代表                               「とりわけ黒人男性はトランプ氏を“好戦的で男らしい”人と捉え、好感を持つ傾向にあります。単純明快で思ったことを包み隠さず話すところが魅力なのでしょう」

こうした状況を受け、今月、民主党のオバマ元大統領は黒人男性に直接訴えました。

オバマ元大統領                                  「あなたたちが女性が大統領になることに違和感を頂いているから、他の選択肢を考えているのではと疑わざるをえない」

しかし効果はいまいちなようです。ハリス氏は急きょ、黒人男性に特化した政策を発表。起業支援や嗜好目的での大麻合法化を目玉に、黒人男性の取り込みを狙います。

■ヒトラーを称賛か 元側近“暴露”

こうしたなか、トランプ氏のヒトラーをめぐる過去の発言が報じられました。トランプ政権で最側近を務めたジョン・ケリー氏の証言です。

ケリー氏の証言                                    「トランプ氏は『ヒトラーは良いこともした。経済を立て直した。ヒトラーの周囲にいたような完全に忠実な将軍が必要だ』と言っていた」

トランプ氏はこうした発言を否定していますが、ハリス氏は批判を強めます。

民主党 ハリス副大統領                              「トランプ氏は就任初日から、独裁者として個人的・政治的復讐を遂げるため、軍隊を私兵団として使うと明言しています。常軌を逸していて不安定です。トランプ政権2期目には、ケリー氏のようにトランプ氏の暴走を止めるガードレール役も、最悪の衝動を手綱で抑える役もいないのです」■命運握る“激戦州”最新情勢は

アメリカの大統領選は、各州に人口比で割り当てられた『選挙人』がいて、その州で勝った候補が原則、選挙人を“総取り”する仕組みです。全米で538人いる選挙人のうち、過半数の270人以上を獲得した候補が勝利します。CNNなどによる予想獲得数はトランプ氏が219、ハリス氏が226となっています。

注目は、どちらか勝つか読めない『激戦州』と呼ばれる7つの州です。ここでいかに選挙人を獲得できるかが、勝敗を分けることになりますが、最近発表された世論調査の平均値では、激戦州の7州全てでトランプ氏がリードという結果になっています。

(Q.バイデン大統領の後、民主党の候補がハリスさんに代わって、テレビ討論会でハリス氏の優勢が伝えられるなど、当初勢いがあった印象ですが、なぜトランプ氏がリードする展開になったのでしょうか)

調査結果を見ると、激戦州の1つミシガン州では、今回の選挙での最大関心事とされる経済・移民・中東紛争のいずれも「トランプ氏の方が上手く対処できる」と考える有権者が多いという結果でした。

(Q.トランプ氏の“ヒトラーを称賛するような発言”が報道されました、トランプ陣営は否定していますが、選挙戦に影響するのでしょうか)

アメリカ政治に詳しい上智大学・前嶋和弘教授                  「『ヒトラー肯定発言』の報道があったからといって、トランプ氏の岩盤支持者が離れることはない。ただ、ハリス氏が支持拡大を狙うユダヤ系の有権者や無党派層に影響が出る可能性はある。一方で、今年の大統領選挙はどんな小さな出来事でも形勢に影響を与えかねないので、勝敗の行方はまだ分からない」

(C)CABLE NEWS NETWORK 2024