「ドラフト」コロナ禍でこぼれ落ちた超逸材…関大・金丸夢斗が高校時代、恩師から言われ続けた言葉
毎日、息子とのランニングにつきあった父親
今年のプロ野球ドラフト会議でもっとも注目を集めている関大の左腕・金丸夢斗（かねまる・ゆめと）。成長を見守った神戸市立神港橘高校の城井直史監督が、高校時代のターニングポイント、ピッチャーとしての独特な感覚、父親との秘話などを明かす。
前回記事『「高校生でこんな投手いるのか」「重力に逆らうような球」…恩師が語る《ドラフトの目玉》関大・金丸夢斗が「入学時体重50kgでもプロ入りを確信」した理由』から続く。
高校に入ってきたときの身長は160�僂砲睨�たず、体重も50�圓曚匹靴�なかった金丸だが、卒業するころには身長は177�僂泙膿�び、体重も70�圓魃曚─�球速も楽に140��/hを超えるまでに成長した。
「うちは栄養指導やサプリメントの摂取なども含めて『食トレ』には力を入れているので、金丸も食事面を真剣に考えるようになったと思います。ただ体を大きくするのではなく、なにを摂ったらいいのか、摂ってはいけないのか。中学までは炭酸飲料も普通に飲んでいた金丸ですが、今では『炭酸飲料は体が受けつけません』と話すくらい、意識が高まりました」
そして、大きな転機となったのがコロナ禍によって学校のグラウンドで活動ができなくなった期間だ。
「コロナ前までの球速は130��/h台前半でしたが、緊急事態宣言が解除されて練習が再開されたときには138、139��/hまで出るようになっていました。高校のグラウンドで練習できなくなってしまったのですが、生徒たちは自分たちで公園だったり、家で練習していたんだと思います。自分の体とも改めて向き合ったというようなことも話しているようですね」
ピンチをチャンスに変えることができた金丸の成長を、小さいころから熱心に手ほどきし、小、中学生時代は毎日のように息子と一緒に５キロの距離を走っていたという元高校球児の父親も感じ取っていた。
４年前、金丸の才能に気づいた今年のドラフト候補
金丸の父親はアマチュア野球の審判としても活躍していて、甲子園での高校野球全国大会でジャッジした経験もある。
「お父さんは社会人の試合でも審判をされていて、一流の球筋を間近でご覧になっているんです。そのお父さんがその頃の金丸のボールを見て、『息子の球質は社会人のピッチャーと比べても負けていないと思うんです』と口にされたんです。
お母さんもそうですけど、お二人とも前に出てくるようなタイプではなくて、隠れるように端のほうにいらっしゃるような謙虚なご両親なんですが、そんなお父さんがそうおっしゃったことが印象に残っています」
城井監督も十分な手応えを感じていた。そこで名門・報徳学園に練習試合をお願いしたという。
「ところが結果は３本もホームランを打たれて７点くらい取られました。上には上がいるなと思い知らされましたね。本人は感情や闘志は内に秘めるタイプで、『打たれちゃいました。すみません』という感じでしたけど」
それでも見るものが見ればわかる。金丸のボールに魅せられたのが、そのときの報徳学園のエースで、現在は國學院大の主戦投手の坂口翔颯（かすが）だった。
コロナ禍で失われたアピールの場
「坂口君は故障していて、その試合では投げなかったんですが、試合後にたまたま機会があって話をすると『金丸君、体は大きくないのに、すごい球を投げますね』と言ってくれました。坂口君も今ドラフト候補に挙がる素晴らしいピッチャーですからね」
最後となる３年生の夏は、コロナ禍によって全国高校野球選手権大会、地方大会ともに中止となり、各都道府県高野連によって代替大会が開催された。兵庫県は授業を優先するためベスト８で打ち切りという要項となった。
そのベスト８を懸けた、高校最後となる甲南高校との一戦で金丸は圧巻のピッチングを披露した。
「スピードガンの表示はなかったのですが、球速はゆうに140km/hを超えていたと思います。奪った三振も17個。本当にすごかったです」
しかし、代替大会となって評価が難しかったのか、実力相応の注目が金丸に注がれることはなかった。
「名前は売れてきていたんですが、コロナになってしまって披露する機会があまりなくなってしまった。プロはもちろん大学や社会人からも声がかかることがなく、うちのOBの山口高志さんがアドバイザーをされているご縁もあって関大に進学しました」
関大では１年秋から存在感を発揮し、アマチュアナンバー１左腕へと飛躍を遂げた。４年生となった今年は春に腰痛を発症して秋のリーグ戦では負担軽減のためにリリーフに回ったが大きな心配はなさそうだ。
天才的な独特な表現
「高校のときも腰の具合がよくなったときもありましたけど、肩や肘を痛めることは一切なかったです。性格も真面目で、勉強も大学で野球を続けるためにとしっかり取り組んでいました。
卒業後も大学のリーグ戦が終わるとうちのグラウンドに顔を出して後輩たちにいろいろ教えてくれます。ただ、感覚が天才的で、表現も独特なんです。普通のピッチャーはたいてい『ボールは指先で投げる』と言いますが、金丸は『手のひら全体で投げる』と教える。正直、私にもわかりません(笑)
でも、ピッチングに関しては確固たる自分の考えを持っている。高校時代、私から技術的な指導をしたことはありません。私が彼に言い続けたことといったら『おまえはプロ野球選手になれる』ということくらいです」
城井監督の言葉を現実のものとするドラフトは24日に開かれる。
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