菊花賞を制したアーバンシック(c)netkeiba

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【栗山求(血統評論家)=コラム『今日から使える簡単血統塾』】

◆血統で振り返る菊花賞

【Pick Up】アーバンシック:1着

 ありあまる素質に恵まれながら、春シーズンまでは道中で折り合いを欠いたりソラを使ったりと、気性面の幼さが邪魔をして実力を出し切れませんでした。しかし、夏を越してそうした面が改善されると、一躍世代トップの座に上り詰めました。良い結果を出すべくこの馬に関わったホースマンの勝利です。

 父スワーヴリチャードは現3歳が初年度産駒で、重賞6勝目。3歳世代ではキズナ(7勝)に次いで第2位です。GI馬を2頭出した種牡馬はエピファネイアとスワーヴリチャードしかいません。

 もう1頭のGI馬レガレイラ(ホープフルS)は、“父が同じで母同士が全姉妹”という関係。血統構成は100%同じです。牝系はディープインパクトの母として名高いウインドインハーヘアにさかのぼります。母方にダンジグを持つスワーヴリチャード産駒は成功しており、アーバンシックとレガレイラの他に、スウィープフィート(チューリップ賞)、コラソンビート(京王杯2歳S)、パワーホール(札幌2歳S-2着、共同通信杯-3着)などが出ています。

 ちなみに、菊花賞の2レース前、2勝クラスの清滝特別(芝2200m)を4馬身差で圧勝したサブマリーナは、やはりスワーヴリチャード産駒。フレグモーネで神戸新聞杯を取り消し、菊花賞を断念したという経緯がありました。順調であれば両レースとも好勝負していたのではないかと思わせる素質馬です。アーバンシックともども芝中長距離の重賞戦線で注目したい馬です。

 スワーヴリチャード産駒の牡馬は、1400m以下の短距離ではもうひとつですが、マイル以上ではきわめて優れたパフォーマンスを披露しています。

 逆に牝馬は2000m以下を得意としています。

◆血統で振り返る富士S

【Pick Up】ジュンブロッサム:1着

 ゴールドティアラ(南部杯)にさかのぼるファミリーは、2歳戦から頭角を現し、古馬まで息の長い活躍をするのが特長です。本馬とほぼ4分の3同血(母同士が全姉妹で、父が親仔)のステファノスは、3歳時に富士Sを勝ったあと、5歳秋に天皇賞(秋)と香港Cで3着、6歳春に大阪杯で2着となりました。

 本馬は2歳秋に東京芝2000mの2歳レコード(1分59秒2)を樹立して素質を示し、5歳秋にして初めて重賞を制覇しました。血統的に近いステファノスの蹄跡から考えると、来年までは十分トップクラスで頑張れるのではないかと思います。

 父ワールドエースはマイラーズCときさらぎ賞の勝ち馬で、皐月賞2着馬。屈腱炎にならなければGIに手が届いたのではないかと思わせる素質馬でした。ワールドプレミア(天皇賞(春)、菊花賞)の全兄、ヴェルトライゼンデ(日経新春杯、鳴尾記念)の半兄にあたる良血です。

 種牡馬としてはレッドヴェロシティ(青葉賞3着)、メイショウシンタケ(京成杯AH4着)、モンドデラモーレ(札幌2歳S4着)などを出しており、今回が初めての重賞勝ちとなります。芝向きで、距離の融通性があります。

 前走の関屋記念は出負けして3着。今回は外を回って鮮やかに突き抜けました。以前とは見違えるように地力が強化されているので、次走のマイルCSも好勝負可能でしょう。