現在は資産形成コンサルタントとして働く舩津徹也氏【写真:福谷佑介】

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「スポーツをやり続けていた人って需要はあると思いますね」

 カターレ富山やセレッソ大阪で14年間プレーした舩津徹也氏は現在、保険の代理店に勤めつつ、資産形成コンサルタントとしても働いている。

 2022年に現役を引退してから2年が経過し、セカンドキャリアにある無限の可能性をひしひしと実感する。「社会に出ても生きる」と考えるサッカー選手をはじめとするアスリートが持つ“武器”とは……。(取材・文=福谷佑介)

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「働いてみて気付くことがたくさんありました。サッカーの世界でも、失敗して失敗して、それでもやり続けて、成功するということがあります。そういうのを経験として知っているというのを重宝してくれる企業さんだったりとか、知り合いの経営者さんだったりが結構いるんです。サッカー選手を紹介してほしいとか、サッカーだったり野球だったりスポーツをやり続けていた人って需要はあると思いますね」

 かつて富山やC大阪、モンテディオ山形、ザスパクサツ群馬、FC岐阜でプレーした舩津氏はこう語る。2022年シーズンを最後に現役を引退し、最初に門を叩いたのは保険の代理店。「怖かったですし、不安しかなかったです」。思い切って飛び出した、サッカーとは無縁の金融の世界。経験も知識もなく、働き始めた当初、待ち受けていたのは当然のごとく苦労の連続だった。

「最初の1か月くらいは研修だったんですけど、めちゃくちゃしんどくて泣くこともありました……。今までは身体を動かせばOKみたいな仕事でしたけど、常に頭を動かさないといけなかったので。帰っていいと言われても、保険の内容だったり覚えることが多すぎて、夜中までずっと会社にいたり、会社に泊まったりもしました。それを勉強して理解するのがめちゃくちゃ大変でした。嫁に電話で『辞めたい』って言っちゃうことも正直ありましたね」

 これまでとは全く違う、知識が必要な仕事に弱音があふれることもしばしば。ただ、気持ちが折れることはなかった。生きたのは、サッカー界で培ってきた経験。「僕のサッカー人生、上手くいったことばっかりじゃないんで。失敗してもやり続ける、という経験が、辞めないことにつながったというのはあると思います」。どれだけミスをしても、挫折を味わっても、這い上がって、とにかくやるべきことをやり続ける。そんな日々を現役生活では送っていた。

「全く違う世界に羽ばたいてみるっていうのは、選択肢としてめちゃくちゃアリだなと思います」

 舩津氏は2009年、JFLからJ2に昇格した富山に入団し、プロとしてのキャリアをスタートさせた。2012年にC大阪に期限付きで移籍し、初めてJ1の舞台へ。1年で富山に戻ると、山形へと移籍した2014年にはJ2からJ1への昇格を経験した。翌2015年には1年でのJ2降格、群馬での2017年にはJ3降格の憂き目も味わった。14年間の現役生活でJ1、J2、J3とJリーグの3カテゴリーすべてでプレーし、最後は自ら引き際を決めることもできた。

「負けん気というよりも、やり続けていたらいつか成功する、神様は見てくれていると思っているタイプなんです。良いことをしていれば、それが未来につながってくるだろう、と。サッカーで培ったものは、人間関係ももちろんそうですし、今まで続けてきた努力や成功体験っていうのは絶対に社会に出ても生きると思っています」。現役時代に愚直に続けていたことは、社会に出ても必要な能力だった。そういう側面で言えば、アスリートの持つ武器は“強い”とも感じた。

 舩津氏自身も現役時代は漠然とサッカー関連の仕事に就くことを思い描いていた。「サッカー選手って考えている、見えている世界が狭いので、自分も引退後はサッカー以外考えられないっていう感じでした。サッカーの指導者になるためにB級ライセンスも取りましたし、サッカー系で働くんだろうなってぼんやり勝手に思っていました」。全くの異業種に飛び込んだのは「サッカーだけしてきた人生で、違うことをしないといけないなとも思っていた」からだった。

 新たな仕事を通じてさまざまな人に出会い、会話をすることも多くなった。これまで知らなかった世界に触れ、視野が広がっていっているというのも実感としてある。だからこそ、今後、セカンドキャリアを迎える現役選手たちに、こうメッセージを送る。

「サッカーから離れたからこそ知ることのできた職業とか業種ってめちゃくちゃありました。違う世界を見てみると、いろんな方がいて、いろんな仕事がある。すごく視野が広がりました。サッカーだけじゃないって思えるようになりましたし、サッカーの良さはもちろんあるんですけど、全く違う世界に羽ばたいてみるっていうのは、選択肢としてめちゃくちゃアリだなと思います」

[プロフィール]
舩津徹也(ふなつ・てつや)/1987年2月9日、大阪府出身。立正大淞南高ーびわこ成蹊スポーツ大ーカターレ富山ーセレッソ大阪ーカターレ富山ーモンテディオ山形ーザスパクサツ群馬ーFC岐阜。Jリーグ通算356試合19得点。2022年で現役を引退。現在は資産形成コンサルタントとして投資信託などを中心に、資産形成のコンサルティングを行っている。(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)