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セバスチャン・スタン主演、若きドナルド・トランプの伝記映画『アプレンティス:ドナルド・トランプの創り方』が、2024年10月11日に米国公開を迎えた。大統領選挙の投票日、11月5日まで4週間を切っているという絶妙なタイミングでの公開だ。

本作は成功を夢見る20代のトランプが、悪名高い弁護士のロイ・コーンと出会ったことから一流の実業家へと成長していく物語。数々の危険なエピソードで知られるトランプだが、その人間的な内面に切り込みつつ、物議を醸すような衝撃的なシーンも多数織り込まれた問題作に仕上がったという。製作には約7年が費やされ、何度も企画頓挫の危機にさらされた。

トランプ陣営が制作陣に抗議し、「上映を中止しなければ法的措置を講じる」とも本作。しかし、ロイ・コーン役のジェレミー・ストロングは、本作の政治的インパクトについて「世界にとっては取るに足りないもの」と言い切る。

「もし(大統領選挙後の)11月6日に公開されていたら、そうした(政治的な)価値はより下がっていたでしょう。これは党派心に基づく映画ではないし、敵対的な論争を仕掛ける映画でもありませんから。ただし、(語り手の)視点はあります。これはモンスター映画、フランケンシュタインの映画です。ひとりの怪物が、別の怪物によって生み出されるところを描いているのですから。」

監督は『聖地には蜘蛛が巣を張る』(2022)のアリ・アッバシ。祖国イランにとって不都合な映画を作ったことで、今では国に帰れないかもしれない、帰れたとしても二度と戻ってこられないかもしれないという立場のフィルムメイカーだ。ストロングと同じく、「これは民主党の話でもなければ、共和党の話でもなく、権力システム全体の話です」と言い切る彼は、本作の公開に大きなリスクがあることを認めている。

「問題は、アメリカの非常に複雑かつ欠陥のある司法制度を扱っていることです。そこでは、十分な資金と法的な力があり、弁護士がいれば、誰でも葬ることができる。彼ら(トランプ陣営)は裁判を起こすことができ、そうなったら僕は勝ってもすべてを失うでしょう。弁護士費用を払うために、家や車、すべてを売らなければなりません。トランプには無限の資金と法的権限があり、非常に強力な友人たちがいるのです。」

それでもアッバシは、いくつもの苦難を乗り越えて完成した本作を「(大統領選挙前の)今こそ公開したかった」という。「僕たちはあらゆる人やものと戦っています。企業、トランプ、彼の選挙運動、弁護士。こちらには後ろ盾がないし、支援してくれる億万長者もいない。だからこそ、これは映画を観てもらえるチャンスなのです」

映画『アプレンティス:ドナルド・トランプの創り方』は、日本では大統領選挙が終わったあと、2025年1月17日(金)の劇場公開となる。しかし、その政治的インパクトが薄れても、作品としてのインパクトが損なわれることはないだろう。ドナルド・トランプという“怪物”を、アッバシ監督やセバスチャン・スタン、ジェレミー・ストロングはどのように捉えたのか──。その全容解明が待たれる。

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