10月10日、電撃的な“引退発表”をおこなったのは、元騎手の藤田菜七子だ。

「発端は、9日に『文春オンライン』が報じた記事です。藤田さんは、2023年4月頃までに調整ルームに禁止されていた通信機器を持ち込み、通信アプリで外部と複数回、通信していた疑惑が報じられました。レース前にスマホなどの通信端末を預けることは、八百長のような不正を防止するために義務づけられている重大な規則です。こうした報道を受け、彼女は10日に騎乗停止処分を受けましたが、その日の夜に引退を表明。翌11日に騎手免許取消申請が受理され、正式に引退しました」(競馬担当記者)

 藤田の引退は、JRA職員の間でも動揺が広がっているという。

「本当に意外な結末で、動揺している職員は多いですよ。とはいえ、藤田さんが“嘘”をついた疑いがあるのは間違いない。厳しい処分になるのは当然なんですよ。彼女としてはそれを見越して引退を発表したのでしょう」

 藤田の処分を巡っては複雑な経緯がある。そもそもの発端は、2023年5月に明らかになった、複数の若手騎手の通信機器持ち込み問題だ。

「当時、今村聖奈騎手ら6人が30日間の騎乗停止を受けました。騎手控室にスマホを持ち込み、インターネットを閲覧したことや通話をしたことが『不適切使用』とされたんです。こうした中で、当時は藤田さんだけはスマホの持ち込みが発覚せず、“株を上げた”と評価されていました。

 ところが、今回藤田の引退をめぐり、師匠の根本康広師が報道陣の前で『菜七子は以前に、そういう通信機器を使っていたことをJRAに自ら報告をしている。そして、その際に口頭で厳重注意を受けている。それが週刊誌の報道で、また処分を受ける形となってしまった』と語ったのです。

 つまり、若手6人が処分された際に、じつは藤田さんもスマホを使用しており、それを“自白”し、非公表で注意を受けていたというわけです。これを根本氏は二重処罰だと批判しているのです」(同前)

 だが、前出の職員はこう語る。

「藤田さんは、2023年に自己申告した際に動画やSNSを見ただけだと答えていましたからね。しかし今回、『文春オンライン』は藤田さんが第三者と複数回やり取りをしていたことを、証言も交えて報じています。藤田さんも複数の厩舎関係者が相手だったと、今回、認めていますから、厳しい処分になるんですよ」

 藤田氏はJRA7人目の女性騎手として2016年3月にデビュー。女性騎手としては最多の166勝をさらに、更新し続けていた。2019年にはカペラステークス(G3)で日本人女性騎手として初めてJRA重賞制覇も果たした。

 また、愛らしいルックスでデビュー当時から人気を集め、競馬騎手としては異例の大手芸能事務所のマネジメントも受けた。だが、JRA関係者の間では藤田氏の“騎手としての資質”に、少ないながらも疑問も上がっていた。

「騎乗技術に問題はありません。ただ、騎手というよりも馬が大好きな優しい女性なんです。レース中に少しでも騎乗馬に異変があると、もう追うのを止めてしまうところがありました。米国のデータですが、予後不良(安楽死)につながるレース中の事故は1000頭中に1.4頭以下と言われています。藤田の弱腰な姿勢には、調教師や厩務員からの不満もありました」(競馬業界関係者)

 そして今回の驚きの引退発表には同僚騎手との関係が影響していると語る。

「2023年のスマホ使用問題では藤田以外の女性騎手はすべて処分されています。調整室ではなく控室での使用ですが、いずれにせよ女性騎手しかいない状況で起こったこと。

 当然、藤田騎手は他の女性騎手の使用を知っていた可能性もあるし、他の女性騎手が逆に藤田の使用を知っていた可能性が高い。2023年に処分を受けたあと、『あの子だけ不正が公表されていない』という理由で、ほかの女性騎手から孤立しているという噂がありました。それに、今回の『文春オンライン』の記事は内部の情報提供者がいて成立する記事です。騎手同士の感情的な問題もあり“やる気がなくなった”のではないでしょうか。

 いずれにせよ、自業自得ではあるのですが……」(同前)

 あまりに残念な結末だ。