中大戦の9回2死、逆転の2点二塁打を放った国学院大・宮坂厚希(カメラ・加藤 弘士)

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◆東都大学野球秋季リーグ戦第4週第3日▽国学院大2―1中大(10日・神宮)

 国学院大は中大に雪辱し、1勝1敗のタイに持ち込んだ。1点を追う9回2死から一、二塁の好機を作ると、途中出場の宮坂厚希外野手(3年=智弁和歌山)が2点二塁打を放ち、逆転勝ちした。

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 「一本出せよ! ここで一本出せよ!」

 チャンステーマに乗せた応援席の祈りが、宮坂のバットに乗り移った。1点を追う9回2死走者なし。「あと1人」の崖っ縁から、国学院大の反撃が始まった。一、二塁の好機を迎えて打席に立つと、真ん中高めのストレートを強振。打球はセンターを越えた。2者が生還。逆転に成功だ。ヒーローはベンチと応援席に向かって、二塁上でガッツポーズを見せた。

 「後ろにつなぐ気持ちで、とにかくチームの勝利に貢献できるよう、強い気持ちで打席に立ちました。芯で捉えられました。何とか抜けてくれと思いながら、走っていました」

 左対左。右の代打もあり得る場面だった。だが鳥山泰孝監督(49)は、宮坂に託した。10月4日の日大2回戦。9回2死一、二塁のチャンスで代打を出された。トイレ掃除をしていると、指揮官から「次は代打出さないから、頼むぞ」と声を掛けられた。胸が熱くなった。智弁和歌山が2021年夏の甲子園で優勝した際の主将。鳥山監督は「ものすごく人を惹き付ける力がある。来年は宮坂を中心にチームをつくっていくことになる」と期待した。

 道のりは順風満帆ではなかった。昨春はスライディングした際、右膝を負傷し、手術の困難を乗り越えた。だからこそ今、グラウンドで暴れられることに喜びを感じる。「与えられた場所でしっかり自分の役割を意識したい」と気合をにじませた。

 9回2死走者なしから、打線がつないで成し遂げた逆転劇。鳥山監督は「こういう野球をやりたくてチームを作っている。ようやく国学院の野球になってきた。僕自身、感動しています」と感無量の表情を浮かべた。「夢中になって、野球をやっている感じです」と宮坂。勝った方が勝ち点となる、11日の第3ラウンド。死に物狂いで奪いに行く。(加藤 弘士)