ソフトバンク周東(撮影・西田忠信)

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 12日からいよいよクライマックスシリーズ(CS)が始まります。リーグ優勝を飾ったソフトバンクは、16日からのファイナルステージに登場。就任1年目の小久保監督が日本一に向けた戦いでどんな采配を見せてくれるか注目されます。今回はホークスでリードオフマンとして活躍した西日本スポーツ評論家の柴原洋氏に、CSでのキーマンなどについて語ってもらいました。

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 就任1年目の小久保監督の下、ソフトバンクは4年ぶりのパ・リーグ制覇を果たした。独走だった143試合で際立つのは、先制した試合の8割5厘という勝率の高さ。2位に10ゲーム以上の大差をつけたレギュラーシーズン全体の6割5分を大きく上回る数字だ。

 16日に始まるCSファイナルステージ(S)、そして日本シリーズでも、いかに先行逃げ切りの形をつくれるか。短期決戦では接戦の展開も増えるだけに、投手陣は先発が先に点を与えないことが大事になる。攻撃陣も早い仕掛けから素早く点を取っていきたい。

 松本裕ら故障者が多いブルペンの台所事情を考えれば、有原、モイネロ、スチュワートが中心になる先発陣には7回ぐらいまでしっかり投げてもらいたい。負担が増えるのは確かだが、そこから杉山、ヘルナンデス、オスナにつなげれば、後ろも一定の計算が立つ。

 大関の故障離脱などもあり、前述の3人以外の先発候補には大津、松本晴、前田純らが挙がる。私が面白いと思うのは、2年目の前田純だ。プロ初先発初勝利を手にした9月29日の日本ハム戦では6回無失点。内容も非常に良かった。

 ゆったりしたフォームから球がピュッとくるため、日本ハムの打者も140キロ程度の直球に思ったより差し込まれていた。抜き球のチェンジアップやカーブも効いていた。彼が先発に入れば、大津を手薄なロングの中継ぎで起用するプランが浮上するかもしれない。

 攻撃陣では右足首を痛めて戦列を離れている近藤がどうなるか。そして、最終盤に約4カ月ぶりに戦列復帰した柳田がどこまで打撃の感覚を取り戻せるか。そして、私の考えるもう一人のキーマンは、先月30日に左膝の違和感で出場選手登録を外れた周東だ。

 周東、今宮、川瀬、新外国人ダウンズら1、2番の組み合わせはいろいろ考えられるが、相手が一番嫌がるのは周東が1番で出塁してかき回し、強力なクリーンアップに回すことだろう。彼が早く帰ってくれば先制の確率も上がるはずだ。

 短期決戦を見据え、小久保監督も優勝決定後は序盤での送りバントなどを試していた。まずは先に点を取って逃げ切る。レギュラーシーズンと同様の形をつくれれば、CSファイナルSで対戦する可能性がある日本ハム、ロッテに不覚を取ることはないだろう。

 ただ、2位の日本ハムはCSでも危険な存在であるのは確かだ。12勝12敗1分けと同一リーグで唯一勝ち越せず、直接対決では夏場から7連敗を喫した。勢いのある打線はレイエス、清宮が好調で、万波や水谷らもいる。あの瞬発力とつながりの良さは警戒したい。

 先発陣にも最多勝と勝率第1位の伊藤がいる。ファーストSではロッテと相性がいい山崎と加藤貴らが先発し、ソフトバンクが今季1勝4敗と苦手とする伊藤を温存してくる可能性もある。ただ、救援陣は不安定なだけに、先発を早く降板させる展開に持ち込みたい。

 ロッテは16勝8敗1分けの対戦成績を考えても、日本ハムよりは戦いやすいだろう。先発は駒不足気味で、佐々木もファーストSで先発すれば、ファイナルSでは1試合しか先発できない可能性が高い。打線もソトとポランコ以外に一発がある打者は少なく、大量失点する怖さはあまりない。

 最後に調整の大切さにも触れておきたい。私たちも経験したが、試合間隔が空くと実戦感覚はどうしても鈍る。16日からのファイナルSへ向け、いろんな調整の仕方がある。ファーストSを勝ち抜いた相手の勢いにのまれないように、万全の準備で臨んでほしい。(西日本スポーツ評論家)