果たしてどの球団に……

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もう始まっているドラフト候補調査

 僅差となったセ・リーグ優勝争いが、ドラフト戦線にも影響を及ぼしそうだ。巨人ではマジックナンバーが点灯する直前に一軍昇格してきた浅野翔吾(19)が「スタメン右翼手」の座を掴んだが、

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「今オフのドラフトで巨人の1位指名の本命は、3年時から大学日本代表の4番を任されている青学大・西川史礁外野手(4年=龍谷大平安)と言われてきました。でも、終盤戦に入って高卒2年目の浅野が覚醒し、指名候補を大学ナンバー1内野手と言われている宗山塁(明大)に乗り換えたようです」(アマチュア野球担当記者)

「宗山に乗り換えた」きっかけは8月18日に行われた、巨人三軍と明治大学との交流戦。NPBのファームチームが大学、社会人、独立リーグと交流戦を行うのは珍しいことではなくなったが、その試合に先発した巨人投手は4年目の戸田懐生(24)。現在は育成選手ながら、21、22年は支配下登録された速球派である。

果たしてどの球団に……

「プロのスピードボールに通用するのか、宗山がどんなバッティングをしてくるのか見たかったので、直球勝負をするよう事前に指示していたようです」(同)

 ネット裏に陣取っていた他球団のスカウトも戸田の速球に打ち勝った宗山のバッティングを見て、“安堵の表情”を浮かべていた。というのも、宗山は今年2月、社会人・明治安田生命との練習試合で右肩甲骨を骨折。全治3ヶ月と伝えられたものの、驚異的なスピードで回復した。しかし、春季リーグ戦は打率1割7分4厘と低迷。5月にも不規則打球の処理を誤って右手中指を骨折している。後遺症や、「痛みをかばって打撃フォームを崩したのでは?」との懸念の声も上がっていたからだ。

「宗山、西川、関大の好左腕・金丸夢斗、最速159キロを投げる投手の中村優斗(愛知工大)が今年の注目選手で、『ビッグ4』と言われています。4人とも即戦力と評価されていますが、昨年のドラフトを思い出してみてください。高評価を受けた東都リーグの投手たちのうち、シーズンを通して一軍ローテーションを守ったのは、埼玉西武の武内夏暉(23)だけ。過度な期待は良くないし、ドラフト前の評価は話半分で聞いておいたほうで良いですよ」(在京球団スタッフ)

 12球団のスカウトは「独特の判断基準」を持っている。リーグ戦の成績(数字)には表れない素質、センス、伸びしろを見ているようだ。その「独特の判断基準」も影響しているのだろう。指名候補に急浮上してきたのが、清原和博氏(57)の長男・正吾(慶大)だ。

プロ志望届を出した意味

「動向を巡って注目を集めていた清原ですが、9月12日、プロ志願届を提出しました」(前出・アマチュア野球担当記者)

 4年生で来年、就職を希望する“学士選手”たちは、3年生以下の後輩たちに出場機会を譲るケースも多い。プロ志願届の提出は「野球を続けたい」とする意思表示でもあるが、正吾は中学ではバレーボール、高校ではアメリカンフットボールをやっていた。野球は小学生以来となるが、所属していたチームは軟式だった。

「8月末、東京六大学連盟選抜チームと日本ハム二軍が試合をしています。『4番一塁』で出場した正吾は、初ホームランを放ちました」(前出・同)

 正吾は今春リーグから慶大の4番を任された。打率2割6分9厘、打点7と結果を残していたが、公式戦では1本もホームランを打ったことがなかったのだ。この試合を視察した中日・八木智哉スカウトは記者団に「清原2世評」を聞かれ、

「インコースを巧く捌きましたね。やってきたことが実力になっていると思います。あのコースは、本当は詰まるんですけど」

 と、バッティングを褒めていた。日本ハムの稲葉篤紀二軍監督もレフトフェンスを優に越えていった飛距離と打球の高さに驚き、「あのインコースをあそこまで飛ばすとは」と話していた。野球歴の浅さからプロ入りに悲観的な声が少なくない一方で、こんな意見も聞かれた。

「どこの大学も、卒業する学生を路頭に迷わすようなことはしません。卒業後も野球を続けたいと思う学生は大勢いても、実現の可能性がない学生には、それとなく伝えます。プロ志願届を出したということは、大学がどこかの球団から指名の可能性を打診されていると見るべきでしょう。『プロ野球選手になりたい、続けたい』だけでプロ志願届を出したら、就職活動にも影響してしまいます。一般企業の面接官なら、プロ志願届を出したと知った時点で内定を出しても入社してくれないと判断しますから」(都内私立大学の職員)

 また、スカウトたちはドラフト候補選手側に「調査書」を渡し、選手が指名リストに入っていることを伝える。だが、指名が支配下なのか、厳しい競争が続く育成選手枠なのかまでは教えられない。実際に複数球団から「調査書」をもらっても“指名漏れ”となる学生も少なくない。宗山のような1位候補や上位指名の候補者はともかく、大方の学生は「指名されないリスク」も考えておかなければならないのだが、

「どの球団も即戦力のピッチャーは欲しいです。でも、今年はとくに大砲タイプのスラッガーを探しているような印象も受けました」(前出・アマチュア野球担当記者)

 正吾が指名候補に浮上してきた理由はこのあたりにもある。「大砲タイプ」探しと、僅差でリーグ優勝を争っている巨人と阪神の場外戦が、ネット裏でも繰り広げられていたのだ。

求める“スター性”

「関西六大学の開幕戦で、巨人、阪神のスカウトが現場で鉢合わせになりました。お目当ては大商大の渡部聖弥(4年)でしょう。巨人は大人数で視察に訪れ、その中には水野雄仁スカウト部長の姿もありました」(前出・同)

 渡部は右の大砲タイプで、水野スカウト部長ら複数球団のスカウトの前で、左中間のもっとも深いところに先制の2ランホーマーを叩き込んでいる。「ドラフト1位の12人に入ってくる」との評価もあれば、「投手優先のドラフトを仕掛けてくる球団が複数出れば、外れ1位の最有力」と指名の行方を読む声もあり、「抽選回避で一本釣りを狙ってくる球団も」とも言われている逸材だ。

 振り返ってみれば、近年の巨人と阪神は1位指名で重複することが多い。22年は浅野、20年は佐藤輝明(25)でぶつかり、19年の奥川恭伸(23)、18年外れ1位の辰己涼介(27)、17年の清宮幸太郎(25)の抽選にも両球団が参加している。

「ともに伝統球団ということもあって、選手評価の過程で、スター性も加味されていると思います。その結果、欲しい選手が重複してしまうのでしょう。でも、ここまで1位入札の選手が重複してくると、『抽選で外れたら、せめて阪神以外の球団に行ってくれ』の心境でしょう。宗山、西川、金丸、中村……今年も両球団が重複する可能性が高く、指名に成功すれば、確実に戦力アップにつながります」(前出・在京球団スタッフ)

 先の渡部だが、2ランアーチを放った開幕戦では外野ではなく、広陵高校以来となるサードでのスタメン出場だった。巨人は坂本の後継者を探し、阪神は守備難の佐藤をコンバートできるようなスラッガーも欲しいところ。そこに、絶大なスター性を秘めた清原2世が加わるのか……。

 今秋のドラフト会議は来季のペナントレースにも影響してきそうだ。

デイリー新潮編集部