40歳、会社の同期に「自分たちは生涯現役で働く必要がある」と言われました。年金も少ないなら「大卒初任給」くらいは稼ぐ必要があるでしょうか…?
老後生活でかかる支出規模は?
老後の生活といってもさまざまなケースが考えられますが、今回は、子どもはいるが65歳時点では全員が独り立ちし、その後は夫婦2人で暮らすと仮定してシミュレーションしてみましょう。
老後にいくら稼ぐべきかを考える前に「老後の生活では具体的に毎月どのくらい支出が発生するのか」を把握しておく必要があります。
総務省が公表している家計調査報告によると、2023年の「65歳以上の夫婦のみの無職世帯(夫婦高齢者無職世帯)の家計収支」において、消費支出と非消費支出を合わせた実支出は28万2497円です。
つまり、特にぜいたくをしなくても毎月29万円近くの出費が発生する可能性が高いことが分かります。実際は生活状況によって変動しますが、今回は毎月29万円の支出がかかると仮定しましょう。
老後に夫婦で受け取れる年金収入
老後の生活を賄う収入源の1つとして年金がありますが、具体的にいくら受け取れるのでしょうか。今回、夫は22歳で入社し、65歳まで会社員として厚生年金に加入し続け、毎年400万円ずつ収入を得ているとしましょう。
老後の年金は、大きく分けて老齢基礎年金と老齢厚生年金があります。会社員は国民年金と厚生年金に加入するパターンが多く、源泉徴収制度によって毎月の給料から天引きされるため、保険料の納付もれは自営業などの場合よりも少ないと考えられます。
保険料を満額納付していると、老齢基礎年金は月額6万8000円(2024年度)もらえます。老齢厚生年金は加入期間や加入期間中の保険料納付金額によって変わります。
今回は話を分かりやすくするため年金額の計算の基本となる報酬比例部分のみで計算します。報酬比例部分は加入期間によって以下の計算式に分かれます。
・(2003年3月以前)平均標準報酬月額×7.125/1000×2003年3月までの加入期間の月数
・(2003年4月以降)平均標準報酬額×5.481/1000×2003年4月以降の加入期間の月数
今回は、2024年時点で40歳、22歳入社時はすでに「2003年4月以降」となっているため、全期間後者の計算式を使用する形となります。
平均標準報酬額は33万円と仮定し、22歳から65歳までの加入期間月数を当てはめると、年間年金額は約93万3304円となります。月額だと約7万7775円となり、基礎年金と合わせると約14万5775円です。
これとは別に妻の年金も存在します。共働きで、同条件で働いていると夫同様に約14万円受け取れて、年金額は夫婦合わせて約29万円となります。
一方で、厚生年金加入期間が少ない、もしくはそもそもない場合には金額が下がります。専業主婦で基礎年金のみの受給であれば、夫婦の合計月額約21万3775円です(令和6年度)。妻の働き方によって年金収入が大きく変わることが分かります。
不足分を補うために必要な金額は?
妻が専業主婦のケースだと、年金収入だけでは毎月約8万円の赤字となってしまいます。仮に夫婦ともに90歳まで生きる場合、何も対策をしなければ65歳から25年間で2400万円近くまで赤字が膨らんでしまう計算です。
現役時代に夫婦共働きだったとしても収支はギリギリで、大きな病気やけがなど不測の事態が発生すれば、すぐに「赤字生活」になるおそれもあります。
なかには「自分は退職金2000万円あるから問題ない」と考える人もいるかもしれません。確かに、よほどのことがなければ短期間で資金がなくなることは考えにくいですが、それでも長期的には赤字額をすべてカバーできません。
人それぞれ考え方や価値観があるので一概にはいえませんが、「退職金はあくまで緊急用」として管理しておくのもおすすめです。
年金や退職金に頼らない場合は、老後もできる限り働いて収入を確保するのが最も現実的といえるでしょう。もちろん無理なく「大卒初任給」以上稼げたらうれしいですが、まずは月10万円程度を目指してみてはいかがでしょうか。
まとめ
本記事では、老後もずっと働いて稼がなければならないのか解説しました。40歳だと定年退職までまだ時間がありますが、職場に再雇用制度はあるのか、先輩社員は定年後どのようなルートをたどっているのか、いまから情報収集をしておくと良いでしょう。
出典
総務省統計局 家計調査報告(家計収支編)2023年(令和5年)平均結果の概要
日本年金機構 令和6年4月分からの年金額等について
日本年金機構 は行 報酬比例部分
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー