「やきとり缶ってマルチプレーヤーですね」と、突然話しはじめた缶詰博士の黒川氏。本題から入るその話し方にもすっかり慣れましたが、えー、何がマルチなんですか?

「冷蔵庫に肉がない時に、いろいろと使えるんです。麺類のトッピングに使うとか、オムレツの具にするとか」

なるほど、肉の替わりに使えると言いたいようです。そんな便利なやきとり缶詰に、新しい味付けが加わったと博士は言います。どんな味付けなのでしょう?

→これまでのお話はこちら

ホテイフーズコーポレーション/とりチーズ・チーズタッカルビ味 70g 216円

リアルなやきとりに寄せている

今でこそやきとり缶詰は数社が出しているが、初めて発売したのはホテイフーズコーポレーションであります。今から54年前の、1970年(昭和45年)のことであります。

使う鶏肉は国産鶏のみ。本物の炭火で焼きあげてからカットするというこだわりようで、缶詰とはいえリアルなやきとりに"寄せた"製法がウリだ。

しかし、9月1日に発売された2つの新商品は、今までと毛色が違う。ひとつは「チーズタッカルビ味」で、もうひとつは「アヒージョ」なのだ。

どちらもやきとりというよりは鶏肉料理。発売から54年というロングセラー商品が、そんな"斜め上"へ進化しちゃって大丈夫なのか?

とりチーズ・チーズタッカルビ味の内観(常温で開缶)

ガーリックとチーズの匂いが食欲をそそる

今回は2商品のうちのひとつ「とりチーズ・チーズタッカルビ味」を取り上げる。

内観はまばゆいようなオレンジ色で、やきとりとチーズがソースに浸った状態だ。このソースは韓国料理風のピリ辛ソースで、中にはチーズが溶け込んでいるという。やはり従来のやきとり缶のイメージとは大きく違う。

開缶と同時に立ち上がってくるのは、ガーリックの香ばしい匂いと、チーズのミルキーな匂いだ。食欲をそそる匂いで、すぐにでも箸を付けたくなる。

やきとり(左)と耐熱チーズ(右)の様子

見た目と違って柔らかいチーズ

中にはひと口サイズのやきとりと、真四角にカットされたチーズが2コ入っている。チーズは一見すると歯応えがありそうだが、とても柔らかい。

ホテイフーズのM氏によると、このチーズは加熱に強い業務用のプロセスチーズなのだそうだ。確かに、殺菌のための高温加熱を経ても、きれいな四角形が保たれている。

この缶詰はチーズタッカルビ味なのだから、チーズが入っていないと話にならない。なので、こんな特殊なチーズを探して採用したわけだ。やるなァ、ホテイフーズ!

野菜をプラスしてチーズは増し増しに

炭火焼きの風味が味わえる

かくのごとし。ブロッコリーなどの野菜を耐熱皿でいったん焼き、そこに缶詰の中身(ソースごと)を入れ、シュレッドチーズも加えてさらに焼いた。

ちなみに、缶に入っていた耐熱チーズの味は、QBBの6Pチーズ(三角形のやつ)のような濃い味だった。そこに韓国風ソースがまとわりついているから、さらに濃厚テイスト。

その味を確認しているうちに、もっとチーズが食べたくなり、シュレッドチーズを加えたのだった。韓国料理のチーズタッカルビも、たぶんこうしてチーズ増し増しで食べるんだと思う。

何だかチーズの感想ばかり書いたが、メインのやきとりもきっちりウマい。韓国風ソースの甘くて辛い味が中まで染み込みつつ、炭火焼きの風味はちゃんと味わえる。

結論。このやきとり缶も、これはこれでアリ。

缶詰情報

ホテイフーズコーポレーション/とりチーズ チーズタッカルビ味 70g 216円

全国のスーパー・コンビニやネットショップなどで購入可

缶詰博士 かんづめはかせ 昭和41年福島県生まれ。公益社団法人・日本缶詰協会認定の「缶詰博士」。世界50カ国以上・数千缶を食している世界一の缶詰通。ひとりでも多くの人に缶詰の魅力を伝えたいと精力的に取材・執筆を行っている。テレビやラジオなどメディア出演多数。著書に「旬缶クッキング」(ビーナイス/春風亭昇太氏共著)、「缶詰博士が選ぶ!『レジェンド缶詰』究極の逸品36」(講談社+α新書)、「安い!早い!だけどとてつもなく旨い!缶たん料理100」(講談社)など多数。初のエッセイ本「缶詰だよ人生は」(本の泉社刊)も絶賛発売中!公式ブログ「缶詰blog」とFacebookファンページも公開中。 この著者の記事一覧はこちら