地球温暖化によってゴルフ場はどう変わる?プロが解説
読めばあなたのゴルフ感が変わる!過激で知的な異端プロの痛快コラム
今回のタケ小山は「“ところ変われば芝変わる”郷に入っては郷に従え!」とのこと。その心は?
温暖化や地域に合わせた対応≫全米プロのコースは高麗に似た芝に改修
ハローエブリバディ!季節はすっかり夏ですね。
今年のメジャー第2戦の全米プロは、ケンタッキー州ルイビルの“ヴァルハラ”で行なわれたが、2021年の大改修時、オールベントのフェアウェイ&ティーイングエリアの芝を「ゼオン・ゾイシア」なる新種の芝へ張り替えた。結果、フェアウェイからのショットは以前のベント芝よりボールが浮いた状態に。
ショットもアプローチも十分なスピンが効き、見ていても興奮するほどのボールアクションが見られて最高だったし、ボールを止めるにはフェアウェイが第一条件というゴルフの基本を見せてくれる好ゲームになった。もちろん、スコアも伸びたが、まさにリスク&リワードが発揮された名コースに生まれ変わったのだ。
それを演出したのが前述したゾイシア芝で、これは日本の高麗芝によく似ている。文献では同じモノとされていて、今回、ヴァルハラで使用した新種のゼオン・ゾイシアは、葉っぱも細かい姫高麗芝に似ている品種と聞いている。
日本ではベント、ベントともてはやされているが、地球温暖化のなか、米国のセントラル中央地域のケンタッキー州では、ベント芝の管理が難しくなっているそうで、実際、ベント系から高麗系への変更で管理のしやすさはもちろんのこと、掛かる費用を約25万ドル(約4000万円弱)もコストカットできたそうだ。
日本のゴルフ場もベント芝にこだわっていると、ゴルファー減少の2025年問題の経営困難に陥る前に、ゴルフ場そのものが地球温暖化で壊れてしまいそう……。
ただコースを管理するグリーンキーパーをはじめ、芝への意識の高いコース関係者がいるゴルフ場では、すでに暑さと湿気に強い芝をテストしているところもある。東西南北に長い日本の国土には、その土地土地にあった芝でもよいのではなかろうか。
北は北海道へ行けばオールベントで草ぞ う鞋りのようなターフを飛ばし、南西の沖縄へ行けば、史上最強のバミューダ(ティフトン)でターフも取れない、ラフからは苦戦するという仕打ちに合うのもゴルフなのだから。
幸運なことに日本のゴルフ文化には“2グリーン”のゴルフ場もある。1930年代の第一次ゴルフブームの際には1グリーンが主流だったが、ベント芝の進化とともに1960年代の第2次ゴルフブームの際、夏用の高麗、冬用のベントと2グリーンの文化が定着。
バブル時の第3次ゴルフブームでは、海外の著名ゴルフコース設計家がこぞって世界基準の1グリーンを採用したが「郷に入っては郷に従え」。先人たちの考えにもう1度振り返るのも悪くないかもしれない。
タケ小山
●小山武明(こやま・たけあき)/1964年生まれ、東京都出身。プロゴルファー、ゴルフ解説者。テレビ「サンデーモーニング」(TBS)、ラジオ「Green Jacket」(InterFM897)ほか、多数メディアで活躍。
イラスト=北沢夕芸