検索やオンライン広告業界でトップに立っているGoogleは、さまざまな政府機関から独占禁止法違反の疑いをかけられており、進行中の捜査や訴訟を複数抱えています。そんなGoogleが、EUによる独占禁止法違反の調査を終わらせるため、広告マーケットプレイスのAd Exchange(AdX)を売却することを提案していたと海外メディアのロイターが報じました。

Exclusive: Google offered to sell part of ad tech business, not enough for EU publishers, sources say | Reuters

https://www.reuters.com/technology/google-offered-sell-advertising-marketplace-adx-eu-antitrust-probe-sources-say-2024-09-18/



Report: Google offered to sell AdX to end EU antitrust suit

https://www.engadget.com/big-tech/report-google-offered-to-sell-adx-to-end-eu-antitrust-suit-203612819.html

Googleと聞くと検索エンジンやウェブブラウザ、スマートフォンなどを連想するという人も多いかもしれませんが、実は収益の多くがオンライン広告によるものです。Googleは2008年にオンライン広告の配信インフラを手がけていたDouble Clickを買収すると、そのテクノロジーを足がかりに大規模なアドエクスチェンジを構築しました。

アドエクスチェンジとは、複数のアドネットワークをまたぐ広告枠の売買を容易にするプラットフォームのこと。これにより、広告枠を売りたいパブリッシャーと広告を出したい広告主が、リアルタイムで広告枠のオークションをすることができます。GoogleのAdXもアドエクスチェンジの一種です。

Googleは、AdXをウェブサイト上の広告枠に広告を配信するサーバーであるDoubleClick for Publishers(DFP)と組み合わせることで、オンライン広告業界で強大な力を持つようになりました。しかし、こうしたGoogleの広告エコシステムについては独占禁止法違反の疑いがかけられており、アメリカやEUなどの政府機関による調査が行われています。

2023年6月には、EUの政策執行機関である欧州委員会が、「Googleがアドテク業界の競争をゆがめ、独占禁止法に抵触している疑いがある」という見解を発表。競争上の懸念を解消するため、Googleに広告事業の売却を命じる可能性があると警告しました。

Googleに広告事業の「強制売却」を欧州委員会が警告、独占禁止法調査の予備的見解で - GIGAZINE



そしてロイターは2024年9月、GoogleがEUの独占禁止法違反の調査を終わらせるため、広告マーケットプレイスのAdXを売却することを2024年に提案していたと報じました。しかし、この問題を直接知る2人の関係者によると、EUの広告パブリッシャーはこの提案を拒否したとのこと。Googleが独占禁止法違反の訴訟に関して資産の売却を提案したのは、今回が初めてだといわれています。

広告パブリッシャーがGoogleの提案を拒否したのは、アドテクノロジーのサプライチェーン全般にGoogleが存在しているため、利益相反に対処するにはAdX以外の事業も売却する必要があると主張したためだそうです。なお、EUの独占禁止法執行機関も、今回のGoogleの提案について知っていたと報告されています。

Googleの広報担当者はロイターに対し、「以前から申し上げている通り、当社のサードパーティー製ディスプレイ広告製品に関する欧州委員会の訴訟は、激しい競争と急速な進化を遂げているアドテク部門に対する問題のある解釈に基づいています。私たちは引き続き、このビジネスに全力を注いでいきます」と述べました。

EUの独占禁止法責任者であるマルグレーテ・ベステアー氏は2023年に、Googleがアドテクノロジーの利益相反を解消するためには、AdXとDFPの両方を売却する必要があると提案していました。しかし、記事作成時点で欧州委員会がGoogleの資産売却を命じる可能性は低く、今後数カ月以内に反競争的行為の停止を命じる可能性があると、他の情報筋はロイターに語ったとのことです。