8月から、成田空港への格安アクセスバスとして知られる「エアポートバス東京・成田」の運賃が値上がりし、大人片道1,500円となった(一部の深夜帯便を除く)。近年の物価上昇に伴い、鉄道やバス、タクシーなどの交通機関の運賃も値上がり傾向だ。

せっかく成田空港からLCCで全国、世界各地へ移動しても、成田空港まで時間やお金がかかるなら結局のところ羽田空港を選んだほうが良いということもあるだろう。本稿では、乗換検索が教えてくれない、都内からの成田空港への"ケチケチ"アクセスを紹介する。

"ケチケチ"アクセスのススメ(?)

東京駅〜成田空港駅間を移動する場合、JR・成田エクスプレス利用では3,072円(大人・ICカード運賃)。日暮里駅乗継で京成スカイライナーを利用すると、同区間では2,734円となる(同)。大人片道所要時間は概ね1時間程度。東京駅八重洲北口(鉄鋼ビル)からのリムジンバス(東京空港交通)も運賃は大人片道3,100円で、標準的な所要時間は1時間強だ。

対して、「エアポートバス東京・成田」は、東京駅〜成田空港間が大人片道1,300円だったのが、8月1日から200円値上がりし、1,500円になった。所要時間は公称65分と、スカイライナーや成田エクスプレスと比較しても、実は遜色ない。値上がり額は大きいが、他の交通機関に比べて格安なのは揺らがない。1日100往復以上を運行しているが、予約はできないため、乗り場で並ぶことがある。バスの車種はマチマチだが、正直大柄な筆者にとっては窮屈な印象を受けることもある。

東京駅からのアクセス事情は上記の通りだが、都内、特に23区は広く、東京駅まで行くのが遠いということもある。東京駅構内も広いので、乗継時間に余裕をみないといけない、などの懸念点もある。筆者もそう考える1人で、最近は成田空港にアクセスする際、東京駅を経由することはほとんどない。東京駅までのアクセス費用もかかるという要素もある。

成田空港に行くときにはそれなりに時間に余裕を持っていくし、成田空港から都内に向かう際にも時間的な余裕があることが多いので、それゆえ、筆者は様々なルートを試してきた。

では、筆者はどのようにして成田空港にアクセス(以下、「"ケチケチ"アクセス」と表記)しているか、体験談をもとにお伝えしよう。なお、この"ケチケチ"アクセスは広くおすすめできるものではないことを申し添えておく。

王道?株主優待券を入手せよ!京成「アクセス特急」

「エアポートバス東京・成田」の運賃+200円(都内の概ねの移動費用)=1,500円程度に収まるのが、"ケチケチ"アクセスの目標だ。もちろん安ければ安いほど良いが。

金券ショップを回るのも趣味の筆者は、京成電鉄の株主優待乗車証を財布に忍ばせておくことが多い。実勢価格は800〜1,000円程度で、需給状況や有効期限間近、店舗の場所などの要因によって変動がある。

株主優待乗車証は、自社線を片道1回、距離に制限なく乗車することができる。京成上野〜成田空港駅間の普通運賃が1,267円(成田スカイアクセス線経由)だから、株主優待乗車証があれば300円程度得することが多い。

利用する列車は、成田スカイアクセス線経由のアクセス特急。スカイライナーと異なり、運賃のみで乗車できる列車だ。運転間隔は40分に1本で、日中は都営線との直通運転をしている。京成上野・日暮里からの場合、乗り換えが必要だが、途中駅から着席できないことも多々あるので注意するか、別の手段をおすすめする。

株主優待券がないときは…京成本線特急

株主優待券が事前に手に入らず、それでも安上がりにしたいならば、京成本線経由のルートになる。日中は京成上野〜成田空港駅間直通の特急が40分に1本、都営線〜成田空港駅間の快速が40分に1本(京成上野発着の快速特急と連絡)という運行形態で、実質的に20分に1本、空港へのアクセスが確保される。運賃は京成上野〜成田空港駅間で1,052円と、アクセス特急利用時よりも安価になる。

朝夕は、わずかな追加金額でスカイライナー車両に乗車できる「イブニングライナー」と「モーニングライナー」が運行されているが、今回は"ケチケチ"がテーマなので割愛する。

意外と使える?成田エクスプレス

成田エクスプレスは割高という印象があるが、お得に利用することができる。JR東日本のインターネット予約サイト「えきねっと」にて、成田エクスプレスの特急券が35%引きとなる、「在来線チケットレス特急券(トク割)」が設定されており、利用すると、東京駅〜成田空港駅間の運賃・料金が2,462円となる。

また、JRE POINTを貯めている人は、ポイントを特急券に引き換える「在来線チケットレス特急券(JRE POINT特典)」を利用でき、東京〜成田空港駅間は1,342円+720ポイントで利用できる。実質2,000円強で成田エクスプレスを利用できると考えると、悪くない選択肢だ。なお、東京駅以外も、新宿・渋谷・池袋・品川など主要駅からも乗車できるメリットも大きい。

伏兵はJRE BANK? 成田エクスプレスが4割引の激安価格に

成田空港へのアクセスで、筆者が密かに狙っているのは「JRE BANK優待割引券」だ。JR東日本が今年スタートさせたJRE BANKの利用状況に応じて、JR東日本内の運賃・料金が4割引になる優れものだ。最大で年10枚進呈される。ただ、筆者はそこまでJR東日本の路線に長距離乗ることが多くないので、成田空港へのアクセスに使っても良いのではと考えている。

まだ優待割引券が付与されていないので、数十円の誤差が生じる可能性があるが、通常の成田エクスプレスの運賃・料金が3,070円(きっぷ)なので、4割引を単純計算すると1,800円程度となる。優待割引券の有効活用とは言えないが、券を余らせているなら、有用な選択肢だろう。

荷物が多くないときにおすすめ 乗り継ぎルート編

ここまでは、スカイライナーや成田エクスプレス、アクセス特急などの、成田空港に向かう際のダイレクトアクセスルートを取り上げてきた。ここから先は、乗り換えが多いルートを取り上げていく。

ルート1:大手町(東京メトロ)→西船橋(乗り換え)京成西船→京成成田(乗り換え)成田→空港第2ビル(1,047円)

ルート2:宝町→東日本橋(乗り換え)馬喰横山→本八幡(ここまで都営地下鉄・乗り換え)京成八幡→京成成田(乗り換え)成田→空港第2ビル(1,142円)

まずは、成田空港(空港第2ビル駅)まで鉄道でいくルート。乗り換え検索で最安で表示すると、京成成田駅・JR成田駅間の乗り継ぎが表示され、ちょっと億劫。なお、これらのルートの場合、同じ鉄道会社の料金が通しで計算されることを活かして、東京メトロ(ルート1)・都営地下鉄(ルート2)のほとんど駅から数十円の誤差で利用することができるのでアドバンテージだが、全体的に乗り換えや歩きが多いのがデメリット。

ルート1':大手町(東京メトロ)→西船橋(乗り換え)京成西船→東成田(1,044円)

ルート2':宝町→東日本橋(乗り換え)馬喰横山→本八幡(ここまで都営地下鉄・乗り換え)京成八幡→東成田(1,076円)

上記ルートの応用編として京成「東成田駅」を利用することもたまにある。旧成田空港駅として整備された同駅は、現在は普通列車のみ日中40分間隔で発着している。成田空港第2ターミナルに地下通路で直結しているほか、ターミナル間無料連絡バスも発着しているので、筆者はそんなに不便ではないのではと思っている。あくまでタイミングがかみ合えば、というところではあるが。

奥深き、成田空港アクセスの世界

東京都心から約50キロ、成田空港へはある程度距離がある。距離があるからこそ、様々な選択肢があるのが、強みだと思っている(注:あくまでも筆者の感想である)。

改めておさらいをしておこう。あまり鉄道やバスなどの交通に詳しくない人が節約したいなら、「エアポートバス東京・成田」が王道。値上げしても、東京駅まで片道1,500円というシンプルさは魅力的だ。

金券ショップで京成の株主優待券を入手できるなら、京成成田スカイアクセス線経由の「アクセス特急」がおすすめ。株主優待券購入費用の片道1,000円程度で都心までダイレクトアクセスできるのが魅力。

先般話題になった「JRE BANK」の口座を開設した人は、「JRE BANK優待割引券」を使ってみるのもよさそう。まだ、割引券が付与されていないので、この夏のアクセスには使えないが、今後、快適でコスパの良いアクセスになりそうだ。

そして、荷物が少なくて、電車に乗るのが好きな人は、東京と千葉の県境付近まで、東京メトロや都営地下鉄でアクセスする、西船or八幡ルートがおすすめ。普通の人にはお勧めしないけれど。

天邪鬼(あまのじゃく)な人には東成田駅をお勧め。おそらく遭遇するであろう本数の少なさや乗り継ぎの悪さなどを乗り越えた先に、何かあるかもしれないし、何もないかもしれない。

夏休み本番、読者の皆さんも成田空港に向かう用事はあるだろうか。筆者としては"ケチケチ"ルートをお勧めしたいが、乗換失敗、疲労蓄積、荷物破損、そのほか骨折り損のくたびれ儲けなどのクレームは受け付けませんのであしからず。