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『トップガン マーヴェリック』(2022)で、映画というものの醍醐味を思い出した!という方も多いのでは。この作品では、映画ならではのスリリングな航空アクションがたっぷりと堪能できるが、実はこうした描写は、その道の本物が見てもリアルなものだという。

様々な分野の専門家が、映画のシーンの忠実度を点数評価する米の人気企画には、かつて本物のトップガンを指導したインストラクター……つまり現実世界におけるマーヴェリックと言えるデヴィッド・バークが登場。『トップガン マーヴェリック』の様々な飛行シーンを鑑賞し、そのリアルさを検討した。

バークは『トップガン マーヴェリック』全体にわたって「すごくリアルだ」「よく描かれている」と大絶賛しているのだが、ここではマーヴェリックが不可能な任務のデモンストレーションを、若手パイロットたちの眼前で見事成功させるシークエンスについてを取り上げよう。

トム・クルーズ演じるピート・“マーヴェリック”ミッチェル海軍大佐が、若手パイロットたちの眼前で不可能と思われた作戦をデモンストレーションで実演してみせるという名場面だ。険しい渓谷を超低空・超高速で飛行したマーヴェリックは、限られたタイムリミットの中で、ごく小さなターゲットにレーザー誘導爆弾を撃ち込む。

“ベスト中のベスト”が集まった若手エリートらも全員が失敗した、危険かつ困難極まりない任務。このシーンでマーヴェリックは、無断でF/A-18Eに乗り込んで訓練地帯に侵入する。表情筋がGに引っ張られながら、山岳地帯を地表スレスレで飛行。機体を何度も左右に傾けながら飛んでいるが、これは「ナイフ・エッジ」と呼ばれる技術だとバークは解説する。「非常にうまい描写で、かなりリアルですね」と、その正確さを絶賛した。

マーヴェリックはそのまま山峰を越えて砂漠地帯に突入。「ポップアップ、3……2……1……」と唱えると、マーヴェリックの機体はグンと急上昇する。低空飛行から一気に高度を上げるこの操縦術は、実際に「ロウ・アルティチュード・ポップ」と呼ばれて存在するものだそう。「おそらく地上100フィート(約30メートル)を飛行していますね。これは非常に低い。かなりの注意力と技術を要しますよ」とバークは感心している。

マーヴェリックは一時的に高度をあげながら、機体を反転状態にしてターゲットに向かっていく。「まさに私たちが指導するのと同じです」とバークは続ける。

なぜ反転させる必要があったのかというと、上昇して高度が上がるにつれ、機体の角度が急になるため、地上のターゲットを視認するのが難しくなるからだ。「そこで彼は上下反転して、キャノピーを見上げる形でターゲットを視野に収め続けているんです」とバークは解説する。

下降体制に入ると、マーヴェリックはすかさず機体をグルリと戻している。バークによると、この反転にもかなりのGがかかっているそうだ。

この一連のシーンについて 「タフなシーン、タフなシナリオ、現実ではタフなもの」としながら、現実にも「十分あり得る。ただし、容易なものではない」と、バークは実際に起こり得るものだとプロの立場から評価。シークエンスに対して、「僕は点数づけに厳しい方なので、10点をあげることはないと思います」としながら、事実上満点ということであろう9点を与えた。「このシーンはかなり良くできています。素晴らしい仕事ですね。本当に良くできています」と大絶賛でお墨付きを与えている。

ちなみに筆者は、『トップガン マーヴェリック』の舞台となった米サンフランシスコで、出演者たちが行ったものと同じ飛行体験を取材レポートしている。思い返すだけで吐き気を催す壮絶取材は以下から。

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