長谷部誠コーチの会話は「腑に落ちる」…森保J“初招聘”で絶賛相次いだ「言葉の重み」【コラム】
アジア最終予選に臨む日本代表へサプライズ招聘、長谷部誠コーチの存在意義
日本代表は、北中米ワールドカップ(W杯)アジア最終予選のスタートとなった9月シリーズで中国(ホーム)に7-0、バーレーン(アウェー)5-0にと2試合続けて大勝を飾った。
その結果に直接影響をもたらしているかは分からないが、長谷部誠コーチのスタッフ入りは今後、代表活動期間は本大会までの帯同が見込まれるなかで、多方面にプラスをもたらすことを期待させるシリーズでもあった。
ロシアW杯メンバーだったキャプテンの遠藤航は「選手の立場からするとみんなウエルカムで、やはりあれだけの経験のある、キャリアのある選手だった方がこうやって協会に入ってくれるっていうのは、僕は長谷部さんのことをよく分かってますけど、一緒にやってない若い選手たちはかなり多くの刺激を日々、受けながら代表活動をやっていると思います」と語る。
「海外で活躍してきた選手たちがこうやってまた日本サッカー界に貢献するっていうことも重要なことだと思うので、そういった決断を長谷部さんがしてくれたっていうのは間違いなく日本サッカーにとってもポジティブ。長谷部さんの経験談を聞きながら、こうやって最終予選に臨めるのはメリットしかない」
中国戦に向けた国内合宿の初日から、ボール回しに参加するなど、代表選手と一緒に身体を動かす姿が見られた。年齢が比較的近く、3度のW杯で一緒に戦った長友佑都からは「ハセ!」という掛け声も。やはり現在のところ名波浩コーチなど、ほかのコーチングスタッフよりも、内田篤人氏などがアンダーカテゴリーの代表で担ってきたロールモデルコーチに近いものは感じる。
長友は「ハセさんの本当に世界目線というか、ヨーロッパ目線で話してくれるから選手もやっぱりすごく腑に落ちるというか、ハセさんのその1つ1つの言葉に重みがあり、それがやっぱり自分の情報ではなくて、経験が伴う言葉だから非常に後輩たちもすっとここの中に入ってくる感じもします」と語る。
公開されている練習の場で目に付くのは中盤の選手との“青空談義”だ。そこに関して長友は「確かにボランチの選手にかなり話してるなと思うんで、そこはハセさんもボランチでしのぎを削ってきたから。前も経験してきてるし、そういった部分ではポジショニング、あとは心構え。責任というものを伝えているんじゃないかなとは思います」と見解を口にした。
ボランチの守田英正に聞いてみると「初めてハセさんが入ってきて『ミーティングこうやってやるんだね』とか『こういう練習のメニューなんだね』っていうところを、まずは頭に入れているのかなと。そこから『こうしたほうがいいんじゃないの』みたいなセッションが生まれると思う」と回答した。その一方で、これまでの現役生活や所属クラブでの経験など、代表チームでのプレーというよりも選手個人としての振る舞いの会話が多いという。
この先の最終予選へ期待が膨らむ“長谷部コーチ効果”の波及
試合中の長谷部コーチの動きを見ていると、前半から記者席と同じようなところで観て、ハーフタイムになると、小さい戦術ボードのようなものや書類を片手に、ロッカールームのほうへ行く姿が目に入った。そこで森保一監督を含むコーチングスタッフか、気になった選手に助言をしているのはおそらく間違いない。
森保監督も「まず彼自身がチームの一員になるということにチャレンジしてくれていると思いますし、自分が持っているプレーも一緒にしてくれていますし、我々スタッフにも選手にも話しかけてくれる」と語るように、1人のコーチンススタッフとしてのタスクをこなしながら、必要な時に個人あるいはチームに発言していくという形だろう。
フランクフルトで現役時代の長谷部コーチとチームメイトだった鎌田大地は「フランクフルトにいる時とほとんど変わらない。スタッフにいるような年齢の人だと思うので全然、違和感ないと思います」と前置きしながら「やっぱりヨーロッパでやってて、あれだけ実績もあって、代表でも名前があるので、彼が言ってることはみんなリスペクトを持って聞き入れることができるだろうし、いいことなんじゃないですか」と期待を寄せた。
まだまだ目に見える形で“長谷部コーチ効果”というものは表れてはいないが、コーチングスタッフの一員として働きながらチームの皮膚感覚というものを長谷部コーチ自身も掴む9月シリーズになったはず。順調すぎるスタートを切った森保ジャパンが残りの最終予選でどういう道を辿っていくかは分からないが、そのプロセスにおける助言やサポートはもちろん、その後の本大会で躍進を果たすために、長谷部コーチがどういった働きをしていくのかは今後の注目点の1つだ。(河治良幸 / Yoshiyuki Kawaji)