【セントウルS予想】キャリアが豊富過ぎる馬は過信禁物!? AIが推奨する興味深い一頭とは
【文・構成:伊吹雅也(競馬評論家)=コラム『究極のAI予想!』】
netkeibaにある膨大な競走成績を人工知能によって機械学習するAiエスケープを開発したAIマスター・Mと、レースデータの分析を専門とする競馬評論家・伊吹雅也による今週末のメインレース展望。コンピュータの“脳”が導き出した注目馬の期待度を、人間の“脳”がさまざまな角度からチェックする。
(文・構成=伊吹雅也)
◆1番人気馬や2番人気馬が堅実な点は押さえておきたい
AIマスターM(以下、M) 先週は新潟記念が行われ、単勝オッズ26.0倍(8番人気)のシンリョクカが優勝を果たしました。
伊吹 お見事と言うほかありません。好スタートを決めてすんなりと先行し、道中は2番手を追走。逃げたアリスヴェリテ(10着)が3コーナー手前から引き離しにかかったものの、これを適度に追いかけていき、3番手のゴールドプリンセス(4着)らに対して数馬身ほどのリードを保ったまま4コーナーを通過しています。ゴール前の直線に入っても脚色は衰えず、残り400m地点のあたりでアリスヴェリテに並びかけると、そのままあっさりかわして単独先頭に。外からゴールドプリンセスやキングズパレス(3着)が迫っていたうえ、決勝線の手前ではセレシオン(2着)も突っ込んできましたが、結局ハナ差だけ凌ぎ切りました。後続勢もそれぞれ悪くない競馬をしていたと思いますし、どこかで少しでもペース配分を誤っていたら、最後の勝負どころで捕まっていたはず。陣営はもちろん、完璧にエスコートしてみせた木幡初也騎手にとっても会心の勝利だったのではないでしょうか。
M シンリョクカは重賞初制覇。2歳時の阪神JFで2着に食い込んだものの、その後はなかなか優勝争いに絡めていなかった馬で、今回がデビュー戦以来の2勝目です。
伊吹 2走前の中山牝馬Sで3着に健闘しましたが、前走の福島牝馬Sは3コーナーで転倒してしまい、競走中止に。キ甲を骨折したとのことでしたし、メンタル面などへの影響も多かれ少なかれありそうで、レースへの復帰やパフォーマンスの完全復活にはしばらく時間がかかるのではないかと考えていました。しかし、わずか4か月あまりで戦線に戻ってきたうえ、初戦から牡馬相手の重賞を快勝。本当に大したものだと思います。
M もともとの実績を考えると、今秋以降のビッグレースではかなりの注目を集めることになるかもしれません。
伊吹 母のレイカーラは2013年のターコイズSを、半姉のインターミッションは2020年のアネモネSを勝っている馬。近親には2014年のマイルCSを制したダノンシャークもいますし、血統だけを見るならば1マイルくらいの距離が合っていそうですね。ただ、3歳時のオークスで5着となっているように、この馬自身は長めの距離も問題なくこなせるタイプ。次走はエリザベス女王杯を予定しているとのことですが、相応に高く評価するべきでしょう。
M 今週の日曜中京メインレースは、サマースプリントシリーズの最終戦であり、スプリンターズSの前哨戦でもあるセントウルS。昨年は単勝オッズ112.6倍(14番人気)のテイエムスパーダが優勝を果たしました。ちなみに、その2023年は2着が単勝オッズ4.1倍(2番人気)のアグリ、3着が単勝オッズ9.1倍(5番人気)のスマートクラージュで、3連単97万8840円の高額配当決着となっています。
伊吹 もっとも、その前に3連単の配当が10万円を超えたのは2015年(40万5590円)でしたし、2016年から2022年までの計7回に限ると、3連単の配当は平均値が2万7966円、中央値が1万5990円。波乱が起きやすいレースとまでは言えません。
M 過去10年の単勝人気順別成績を見ると、単勝1番人気馬は連対率が9割。上位に食い込めなかったのは昨年のビッグシーザー(10着)だけです。
伊吹 より実態に即した区切り方をすると、単勝2番人気の馬は2014年以降[0-4-2-4](3着内率60.0%)、単勝3番人気から単勝7番人気の馬は2014年以降[1-3-7-39](3着内率22.0%)、単勝8番人気から単勝14番人気の馬は2014年以降[2-1-1-63](3着内率6.0%)、単勝15番人気以下の馬は2014年以降[0-0-0-11](3着内率0.0%)となっていました。魅力的な伏兵は積極的に狙って良いと思うのですが、その場合も人気の中心となっている馬を安易に嫌ってしまわないよう注意しましょう。
M そんなセントウルSでAiエスケープが指名した特別登録時点の注目馬は、アサカラキングです。
伊吹 興味深いところを挙げてきましたね。人気薄ということはまずないでしょうし、おそらく上位人気グループの一角を占めることになりそう。
M アサカラキングは4歳馬。単勝1番人気の支持を集めた前走の函館スプリントSで9着に敗れてしまったものの、2走前のモルガナイトSを完勝しているうえ、3走前の阪急杯でも2着に健闘しています。メンバー構成を考えると、今回もそれなりの支持が集まるのではないでしょうか。
伊吹 ただ、見方によって評価が割れそうな馬なので、蓋を開けてみたら思いのほか妙味あるオッズがつくかもしれませんね。Aiエスケープが有力と見ている点を踏まえたうえで、私はレースの傾向からこの馬の信頼度を測っていきたいと思います。
M 真っ先に注目しておくべきポイントはどのあたりですか?
伊吹 まずは近走成績を素直に評価したいところ。2019年以降の3着以内馬15頭中11頭は、年明け以降のJRA重賞で馬券に絡んだことのある馬でした。
M まだ重賞で善戦したことのない馬や、しばらく好走を果たしていない馬は強調できませんね。
伊吹 なお“同年の、JRAの、重賞のレース”において3着以内となった経験がない、かつ“前年以降の、JRAの、1400m未満の、重賞のレース”において入線順位が1位となった経験のない馬は、2019年以降[0-0-0-37](3着内率0.0%)と3着以内なし。前年のスプリント重賞を勝っているような馬でない限り、年明け以降のJRA重賞で馬券に絡めていない馬は疑ってかかるべきでしょう。
M 先程も触れた通り、アサカラキングは今年の阪急杯で2着に食い込んだ実績のある馬。この条件は問題なくクリアしています。
伊吹 あとはキャリアも見逃せないファクターのひとつ。同じく2019年以降の3着以内馬15頭中14頭は、出走数が23戦以内でした。
M キャリアが豊富過ぎる馬は過信禁物、ということですね。
伊吹 おっしゃる通り。今年もこの条件に引っ掛かっている実績馬がいるので、事前にひと通りチェックしておいた方が良いかもしれません。
M アサカラキングはキャリア13戦。特別登録を行った馬の中では3位タイの少なさですし、こちらも強調材料のひとつと見て良いのではないでしょうか。
伊吹 さらに、同じく2019年以降の3着以内馬15頭中14頭は、枠番が4枠から8枠でした。
M 思いのほかはっきりと明暗が分かれていますね。
伊吹 集計対象とした過去5年のうち、2020年・2021年・2022年の計3回は今回と同じ中京芝1200mが舞台だったわけですから、基本的に内枠不利なレースと見ておいた方が良さそう。馬場のコンディション等にもよるとはいえ、一応頭に入れておきたい傾向です。
M 逆に言うと、アサカラキング自身やライバルの枠順次第では、上位に食い込むチャンスがより広がるかもしれませんね。
伊吹 今回は先行力の高さを活かしたいタイプが揃ったので、枠順や馬場のコンディションはもちろん、同型との並びもカギになりそう。正直なところ、私はより展開に恵まれる可能性が高い他の馬から買おうと考えていました。もっとも、他ならぬAiエスケープが高く評価しているわけですし、展開面を気にし過ぎない方がよいのかも。実際のオッズも踏まえたうえで、最終的な買い目上の位置付けを決断したいと思います。