Intelが、「Lunar Lake」のコードネームで開発されていたノートPC向けのSoC「Core Ultra モバイル・プロセッサー シリーズ2(Core Ultra 200Vシリーズ)」を発表しました。このCore Ultra モバイル・プロセッサー シリーズ2はIntelの「AI PC向けのフラッグシップSoC」という位置付けで、前世代である「Meteor Lake」のプロセッサよりも高い電力効率でゲームやAIのローカル処理を行うことができるとアピールされています。

New Core Ultra Processors Deliver Breakthrough Performance,...

https://www.intel.com/content/www/us/en/newsroom/news/core-ultra-200v-series-mobile.html

インテル® Core™ Ultra プロセッサー (シリーズ 2) 製品概要

https://www.intel.co.jp/content/www/jp/ja/products/docs/processors/core-ultra/core-ultra-series-2-mobile-product-brief.html

Product Brief: Intel® Core™ Ultra Mobile Processors (Series 2)

(PDFファイル)https://download.intel.com/newsroom/2024/client-computing/Intel-core-ultra-mobile-processors-series-2-product-brief.pdf

An Interview with Intel’s Arik Gihon about Lunar Lake at Hot Chips 2024 - Chips and Cheese

https://chipsandcheese.com/2024/09/02/an-interview-with-intels-arik-gihon-about-lunar-lake-at-hot-chips-2024/

発表イベントの様子はYouTubeで公開されており、以下から見ることができます。

Intel® Core™ Ultra Global Launch Event | Intel - YouTube

Core Ultra モバイル・プロセッサー シリーズ2はAI PC向けに開発されたSoCです。CPUタイルやGPUタイルを1つのダイに統合し、メモリを近くに配置することでレイテンシを低く抑えてパフォーマンスを向上させています。



Core Ultra モバイル・プロセッサー シリーズ2のSKUは9種類で、そのスペックは以下の表の通り。SKUにかかわらず、CPUのコアはPコア(高性能コア)×4コア+LP-Eコア(省電力高効率コア)×4コアの合計8コアです。設計の段階でハイパースレッディングには非対応となっており、スレッド数は8スレッド。グラフィックにはIntel Arcを、メモリには32GBまたは16GBのLPDDR5X-8533MT/sを搭載しています。また、I/Oは前世代ではPCIe Gen 4だったのがPCIe Gen 5に移行しています。また、Wi-Fi 7とBluetooth 5.4に対応しています。



Intelは発表イベントで、Core Ultraモバイル・プロセッサー シリーズ2について「最速のCPUコア」「最速の内蔵GPU」「高いAIパフォーマンス」「最も効果的なx86アーキテクチャ」「比類なき互換性」という5つのアピールポイントを提示しました。



CPUコアについて。「Lion Cove」のコードネームで開発されていたPコアは最大12MBの共有L3キャッシュを搭載し、AIベースの電源管理によって前世代と比較して電力効率が15%向上、ダイ面積当たりのパフォーマンスは10%向上、サイクルあたりの命令実行数は14%向上したとのこと。



「Skymont」のコードネームで開発されていたEコアは最大4MBの共有L2キャッシュを搭載し、AIスループットは2倍になり、分岐予測も向上。サイクルあたりの命令実行数は68%向上しています。



内蔵GPUは、Xe2コア×8基と8MBキャッシュと64基のベクトルエンジンを搭載したIntel Arc GPU。



Intelは「ついにAMDを追い抜いてQualcommを完全に打ち負かした」と主張しており、Core Ultraモバイル・プロセッサー シリーズ2の最上位モデルであるCore Ultra 9 288Vは1080p・中画質でのゲーム中のフレームレートがAMD Ryzen AI 9 HX 370よりも16%、MicrosoftのAI PC「Copilot+ PC」がローンチパートナーとしていたQualcommのSnapdragon X Elite(X1E-84-100)よりも平均で68%、優れているとアピールしています。また、Meteor Lake世代のIntel Core Ultra 7 155Hと比較すると30%向上しているとのこと。





以下は、AMD Ryzen AI 9 HX 370(左)・Core Ultra 9 288V(中央)・Qualcomm Snapdragon X Elite(右)で「Dota 2」をプレイ中のフレームレートと消費電力を比較したもの。



Core Ultra 9 288Vの電力効率はAMD Ryzen AI 9 HX 370と比較して35%高く、Qualcomm Snapdragon X Eliteの2倍以上だとIntelは強調。



UL Procyonによるバッテリー消費ベンチマークの結果では、Core Ultra 9 288VはQualcomm Snapdragon X EliteやAMD Ryzen AI 9 HX 370よりも長い持続時間を記録したとのこと。



NPUの性能は前世代から一気に4倍になり、NPUやGPUを合わせたプロセッサ全体のAI処理性能は最大で120TOPSに到達しています。



GPUの演算性能はIntel Arcグラフィックス向けのXe Matrix eXtensions(XMX)によって、最大67TOPSを実現したとのこと。



Core Ultra モバイル・プロセッサー シリーズ2のNPU性能をGeekbench AIで計測したところ、スコアはQualcomm Snapdragon X Eliteよりも20%高かったそうです。



また、Intelは、Qualcomm Snapdragon X EliteがArmアーキテクチャを採用しているのに対し、Core Ultra モバイル・プロセッサー シリーズ2はx86アーキテクチャがベースになっているため、AI技術を応用するさまざまなソフトウェアと高い互換性を示しているとアピール。



Core Ultra モバイル・プロセッサー シリーズ2は、前世代のIntel Core Ultra 7 155Hと比べてアプリケーション実行中の消費電力が最大50%削減されたとのこと。



発表イベントでは、IntelがIntel Arc GPUに最適化したAIスターターアプリ「AI Playground」を、Core Ultra モバイル・プロセッサー シリーズ2搭載デバイスでローカル実行する様子も実演されました。



画像生成AI



大規模言語モデルによるコード生成



また、Core Ultra モバイル・プロセッサー シリーズ2を搭載したノートPCがMicrosoftのAI PC「Copilot+ PC」に認定されることも発表されました。



Core Ultra モバイル・プロセッサー シリーズ2搭載デバイスはHP、Acer、MSI、Lenovo、Dell、Samsung、LG、マウスコンピューター、サードウエーブ、ユニットコムなどがリリース予定。また、GoogleからはCore Ultra モバイル・プロセッサー シリーズ2搭載のChromebookが発売される予定です。



Core Ultra モバイル・プロセッサー シリーズ2搭載のCopilot+ PCは2024年9月4日から予約がスタートし、2024年9月24日から市場に投入されるとのことです。