今なお世界中を飛び回っている武豊騎手(撮影:高橋正和)

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 日本中の競馬ファンが歓喜した瞬間から30年が経った。94年の9月4日、武豊騎手がスキーパラダイスで仏G1・ムーランドロンシャン賞を制覇。日本人騎手として初めて海外のG1を制したのだ。これを契機に多くの日本人ジョッキーが海を渡り、多くのビッグレースを勝つことになるが、その礎をつくった一戦を振り返りたい。

 スキーパラダイスは父Lyphard、母Ski Goggle、母の父ロイヤルスキーの血統。米国産馬で、馬主は社台ファームの吉田照哉氏だった。この年の春には日本に遠征。武豊騎手とタッグを組み、京王杯スプリングCを制した。続く安田記念は5着に終わったが、欧州に戻った後も武豊騎手とのコンビは継続。仏G2のアスタルテ賞が2着、仏G1のジャックルマロワ賞が5着で、迎えた一戦が仏G1のムーランドロンシャン賞だった。

 道中はインコースで待機。うまく折り合いをつけて運ぶと、直線で馬群の中から鋭伸。1番人気のイーストオブザムーン(East of the Moon)に3/4馬身差をつけて、先頭でゴールに飛び込んだ。馬にとっては8回目のチャレンジでG1初制覇。そして武豊騎手はもちろん、日本人騎手にとっても初となる海外G1制覇の瞬間だった。

 その後、武豊騎手は日本のナンバーワンから世界のトップジョッキーに駆け上がった。日本以外ではフランス、イギリス、香港、UAEの4カ国・地域でG1を計9勝。これに続くように福永祐一元騎手や蛯名正義元騎手、現役では川田将雅騎手や岩田康誠騎手らが海外G1を制し、日本の馬はもちろん、ホースマンも世界で通用することを証明し続けている。レジェンドが作った道を、今後も多くの騎手が追いかけていくことを期待したい。