「やっぱり負けたくない」33歳にして欧州再挑戦の谷口彰悟が“日本人6人先発のSTVV”で明かした本音。「この環境は本当に幸せ」【現地発】
昨季のSTVVは9位とまずまずの成績を残したこと以上に、サッカーの質の高さと若い選手たちの成長が高く評価された。その代償としてこの夏の移籍市場の草刈り場となり、主力を大量に抜かれた上、トルステン・フィンク監督がライバルのヘンクへと移った。そのせいか今季のSTVVは開幕スタートに失敗している。
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9月1日のコルトレイク戦では10分、MF伊藤涼太郎のFKからチャンスを作り、CFベルタッチーニのゴールで幸先良く先制。しかし51分、コルトレイクのCBジョアン・シルバにゴールを決められてしまい1−1の引き分けに終わった。これでSTVVは今季3分け3敗と勝ち星がなく、16チーム中15位に低迷している。
躓きの始まりは守備の崩壊だ。第2節からの3試合でSTVVは大量13失点を喫してしまった。今夏、アル・ラーヤン(カタール)からSTVVに移籍した谷口彰悟も当事者としてピッチに立っていた。第3節のアントワープ戦で1−6と完敗した3日後、日本メディア向けに開かれた入団記者会見で、厳しい守備事情を訊かれた彼はこう答えていた。
「僕自身も前回(アントワープ戦)、90分出て6失点したというのはショッキングな結果でした。正直、僕自身のコンディションも全然ダメだった。チームに求めていくこともそうだし、自分が早く上げていくことも含めてやることは多いと感じてます。
チームとしてプライオリティー(をつける)というか、どこからどう守っていくのかはもうちょっと揃えられるなというところと、危険な場所がどこなのかというところはもっともっと伝えていかないといけないと感じてます。そういった作業をトレーニングからやってる段階なので、次の試合ではもう少し締まったゲームをしたいという思いでやってます」
その“次の試合(デンダー戦。3-3)”でもSTVVは3失点した。しかし、前節のユニオン戦(0-0)でようやく今季初めてクリーンシートを達成すると、今回のコルトレイク戦では1失点と、ようやくSTVVは締まったゲームができるようになった。この日、3CBシステムの左で奮闘した谷口はチームの守備が改善したことに手応えを感じていた。
「自分のコンディションが上がってきたということ。そして個人の特徴だったりとか、チームとして起こりがちなシチュエーションだったりとか、そういったものをだいぶ把握できるようになってきたので、失点を減らせてきていると実感してます」
谷口自身、どのような特徴を活かしてSTVVの守備改善にひと役買っているのだろうか。
「守備範囲の広さが自分の特徴のひとつだと思うので『どのへんまでカバーに行くのか』とか(自身の強みを出せるようになった)。カバーの範囲が広いほうがやっぱりチームに貢献できる。そのへんをできるようになってきました。でも、そればっかりではダメなので、『ここはお前がやらないとダメだよ』『ここはお願いね』とチームとして要求するところのコミュニケーションやチームとの関係性がだいぶ上がってきていると思います」
パリ五輪組がチームに合流してから、STVVはGK小久保玲央ブライアン、DF谷口、小川諒也、MF藤田譲瑠チマ、山本理仁、伊藤涼太郎が先発出場を続けている。一方、コルトレイクにはDF藤井陽也、MF高嶺朋樹、FW金子拓郎がスタメンに名を連ねた。
2トップの右を担った金子は果敢にクロスに対してゴール前に突っ込んでビッグチャンスを作ったり、積極的にドリブルで仕掛けてSTVV守備網を切り裂いたりして見せ場を作り、63分にベンチに退く際にはホームの観衆から温かな拍手を受けていた。
金子とのマッチアップについて谷口に訊いた。
「相手の日本人が3人先発して、今日は日本人選手がピッチに9人もいました。もちろん意識します。やっぱり負けたくない。それは僕だけじゃなくて、みんな意識していたと思います。そういったなかで(金子と)マッチアップする機会が多かったので、やっぱりあらためていい選手だなと感じましたし、やっていて楽しかったです。それを踏まえた上で、やっぱりこっちが差をつけたかった。それが率直な感想です」
若い選手たちが欧州に活躍の場を移している一方、高嶺(26歳)、欧州2年目の金子(27歳)のように20歳代半ばの選手たちがベルギーに来るケースが増えているような気がする。やはり伊東純也が27歳になる手前で柏レイソルからヘンクに移籍し大成功を収めたことが、この年代の日本人選手獲得に走らせているのかもしれない。そんな彼らと比べても谷口の33歳での欧州初挑戦は異例だ。
先の入団記者会見で彼は「26年のワールドカップに出たい。欧州でステップアップをしたい。メラメラしています」と抱負を述べていた。今、フレッシュな気持ちで、新天地で戦う谷口に「第二の青春」が訪れているのだろうか?
「いや、いや。気持ちとしては全然若い気でいるんですけど、身体はやっぱり多少疲労感があったりとか、そういうところは若い頃よりも感じるようになってます。それはもうしょうがないことだと思います。ただ、だからできることもある。より頭を使って経験を活かしてやっていかないといけない。そういった意味では、またこうやって新しい環境をチャレンジできてるし、この環境は本当に幸せだなと思う。このチャンスを活かしたいという思いはものすごく強いです」
W杯アジア最終予選が木曜日に始まる。本来なら月曜の便に乗って火曜日に日本に着くところ。しかし日曜日に試合をした欧州組はベルギー発のチャーター便に乗って、月曜日に到着する。
「これはデカいですね」
アジア最終予選のスタートに失敗することの恐ろしさを知るベテランは「試合に出れば勝利に貢献できるように頑張りますし、チャンスをもらえなくても、日本のためにできることを精一杯やっていきたいと思います」と誓って、空港へと向かっていった。
取材・文●中田 徹
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9月1日のコルトレイク戦では10分、MF伊藤涼太郎のFKからチャンスを作り、CFベルタッチーニのゴールで幸先良く先制。しかし51分、コルトレイクのCBジョアン・シルバにゴールを決められてしまい1−1の引き分けに終わった。これでSTVVは今季3分け3敗と勝ち星がなく、16チーム中15位に低迷している。
躓きの始まりは守備の崩壊だ。第2節からの3試合でSTVVは大量13失点を喫してしまった。今夏、アル・ラーヤン(カタール)からSTVVに移籍した谷口彰悟も当事者としてピッチに立っていた。第3節のアントワープ戦で1−6と完敗した3日後、日本メディア向けに開かれた入団記者会見で、厳しい守備事情を訊かれた彼はこう答えていた。
チームとしてプライオリティー(をつける)というか、どこからどう守っていくのかはもうちょっと揃えられるなというところと、危険な場所がどこなのかというところはもっともっと伝えていかないといけないと感じてます。そういった作業をトレーニングからやってる段階なので、次の試合ではもう少し締まったゲームをしたいという思いでやってます」
その“次の試合(デンダー戦。3-3)”でもSTVVは3失点した。しかし、前節のユニオン戦(0-0)でようやく今季初めてクリーンシートを達成すると、今回のコルトレイク戦では1失点と、ようやくSTVVは締まったゲームができるようになった。この日、3CBシステムの左で奮闘した谷口はチームの守備が改善したことに手応えを感じていた。
「自分のコンディションが上がってきたということ。そして個人の特徴だったりとか、チームとして起こりがちなシチュエーションだったりとか、そういったものをだいぶ把握できるようになってきたので、失点を減らせてきていると実感してます」
谷口自身、どのような特徴を活かしてSTVVの守備改善にひと役買っているのだろうか。
「守備範囲の広さが自分の特徴のひとつだと思うので『どのへんまでカバーに行くのか』とか(自身の強みを出せるようになった)。カバーの範囲が広いほうがやっぱりチームに貢献できる。そのへんをできるようになってきました。でも、そればっかりではダメなので、『ここはお前がやらないとダメだよ』『ここはお願いね』とチームとして要求するところのコミュニケーションやチームとの関係性がだいぶ上がってきていると思います」
パリ五輪組がチームに合流してから、STVVはGK小久保玲央ブライアン、DF谷口、小川諒也、MF藤田譲瑠チマ、山本理仁、伊藤涼太郎が先発出場を続けている。一方、コルトレイクにはDF藤井陽也、MF高嶺朋樹、FW金子拓郎がスタメンに名を連ねた。
2トップの右を担った金子は果敢にクロスに対してゴール前に突っ込んでビッグチャンスを作ったり、積極的にドリブルで仕掛けてSTVV守備網を切り裂いたりして見せ場を作り、63分にベンチに退く際にはホームの観衆から温かな拍手を受けていた。
金子とのマッチアップについて谷口に訊いた。
「相手の日本人が3人先発して、今日は日本人選手がピッチに9人もいました。もちろん意識します。やっぱり負けたくない。それは僕だけじゃなくて、みんな意識していたと思います。そういったなかで(金子と)マッチアップする機会が多かったので、やっぱりあらためていい選手だなと感じましたし、やっていて楽しかったです。それを踏まえた上で、やっぱりこっちが差をつけたかった。それが率直な感想です」
若い選手たちが欧州に活躍の場を移している一方、高嶺(26歳)、欧州2年目の金子(27歳)のように20歳代半ばの選手たちがベルギーに来るケースが増えているような気がする。やはり伊東純也が27歳になる手前で柏レイソルからヘンクに移籍し大成功を収めたことが、この年代の日本人選手獲得に走らせているのかもしれない。そんな彼らと比べても谷口の33歳での欧州初挑戦は異例だ。
先の入団記者会見で彼は「26年のワールドカップに出たい。欧州でステップアップをしたい。メラメラしています」と抱負を述べていた。今、フレッシュな気持ちで、新天地で戦う谷口に「第二の青春」が訪れているのだろうか?
「いや、いや。気持ちとしては全然若い気でいるんですけど、身体はやっぱり多少疲労感があったりとか、そういうところは若い頃よりも感じるようになってます。それはもうしょうがないことだと思います。ただ、だからできることもある。より頭を使って経験を活かしてやっていかないといけない。そういった意味では、またこうやって新しい環境をチャレンジできてるし、この環境は本当に幸せだなと思う。このチャンスを活かしたいという思いはものすごく強いです」
W杯アジア最終予選が木曜日に始まる。本来なら月曜の便に乗って火曜日に日本に着くところ。しかし日曜日に試合をした欧州組はベルギー発のチャーター便に乗って、月曜日に到着する。
「これはデカいですね」
アジア最終予選のスタートに失敗することの恐ろしさを知るベテランは「試合に出れば勝利に貢献できるように頑張りますし、チャンスをもらえなくても、日本のためにできることを精一杯やっていきたいと思います」と誓って、空港へと向かっていった。
取材・文●中田 徹