カスタマイズの自由度が高まるiOS 18。写真のように、アイコンの色を統一することもできる(筆者撮影)

7月17日に、アップルは、次期iOSとなる「iOS 18」のパブリックベータ版の配信を開始した。パブリックベータ版は、その後、短期間でアップデートを繰り返しており、8月21日にはバージョン5まで進化した。一足先に配信される開発者向けのプレビューはバージョン7になっており、正式版の完成も近づいていることがうかがえる。

例年どおりであれば、次期iPhoneの発表にあわせて既存のモデルへの配信も始まるはずだ。iOS 18は、ホーム画面やコントロールセンターを刷新したのが大きな特徴の1つ。アイコン配置や配色の自由度が高まり、ユーザーの好みに合わせたカスタマイズが可能になっている。これは、見た目だけでなく使い勝手にも影響する。

アップル自身で開発したAIの「Apple Intelligence」も、デベロッパー向けベータ版への搭載が始まっている。AIに関する新機能は、現状、英語のみの対応のものが多いが、実は日本で購入したiPhoneでも簡単な設定変更で利用できるようになる。ここでは、そんなiOS 18のパブリックベータ版で注目しておきたい新機能を紹介していこう。

【画像で見る】アイコンの配置だけでなく配色の自由度が向上。コントロールセンターのボタンもサイズ変更やページ追加が可能に。ボイスメモは英語の文字起こし対応になった

なお、パブリックベータ版のスクリーンショットは規約で一般公開が禁止されているが、本稿では許可を得て掲載している。また、完成度が高まっているとはいえ、あくまでベータ版という位置づけのため、利用は自己責任になる。クリティカルな業務などに使用しているiPhoneはアップデートしないよう、注意しておきたい。

見た目をガラッと変えられるホーム画面

見た目的にもっとも変化が大きいのは、ホーム画面だ。これまでのiOSはデザインの変更やウィジェットの導入はあったものの、基本的にアプリのアイコンが左上から自動で並ぶスタイルを採用していた。アイコンの数が足りないと、画面の下が空いてしまうといったこともある。

iOS 18では、まずこの自動整列が廃止され、利用者がアプリのアイコンやウィジェットを自由に配置できるようになった。これによって、人物写真を壁紙にしていた場合、その周囲を取り囲むように配置したり、画面下側だけにアイコンを置いて片手操作でタップしやすいようにしたりといったことが可能になる。

特に画面サイズが大きいPlusやMAXが端末名につくiPhoneの場合、片手で持つと、画面上部に親指が届きづらくなる。このような端末では、アプリのアイコンを下半分に寄せるように配置するといいだろう。これまではウィジェットを画面上部に置くことで似たようなことはできたが、こうした工夫をしなくても済むようになったと言えるだろう。


アイコンのカラーはスライダーで調整可能。自動整列もなくなり、配置の柔軟性も高くなっている(筆者撮影)

アイコンの配置だけでなく、配色にも自由度が増している。アプリを長押ししてからドラッグで少し位置をズラし、アイコンがブルブル震えている状態で画面左上に表示された「編集」ボタンをタップし、「カスタマイズ」を選ぶと、アイコンサイズやカラーを変更できる。

壁紙やアイコンをダークモードに統一する「ダーク」や、ライトモードとダークモードを自動で適用する「自動」のほか、利用者自身がカラーを選択するための「色合い調整」も用意されている。「色合い調整」を選ぶと、スライダーで色やその濃さを設定可能。アイコンが同じ色にそろえられ、画面のデザインの統一感が増す。

ただし、似たデザインのアイコンが同じ色になってしまうと、正直区別がしづらくなる。グーグルが開発したアプリのように、抽象的なデザインのアイコンを採用しているとなおさらだ。ある意味使い勝手が犠牲になってしまうパターンもあるため、カスタマイズする際には注意したい。

コントロールセンターを刷新

デザインの自由度が高まったのは、ホーム画面だけではない。Wi-Fiの切り替えや画面の明るさを調整できる「コントロールセンター」も、iOS 18で大きく進化している。これまでのサイズが固定されていたコントロールセンターとは異なり、サイズなどをある程度の範囲で変更可能になった。

また、縦スクロールのユーザーインターフェースも取り入れ、ページをめくっていく感覚でそれぞれの機能を呼び出せるようになっている。例えば、2ページ目に全画面の音楽コントロールを設定しておくと、フリックするだけで簡単にそれを呼び出せる。

Wi-Fiやモバイルデータ通信、AirDropなどを制御するためのパネルはもともと2階層以上に分かれており、必要な機能を呼び出すのに少々手間がかかっていたが、サイズを大きくすれば、それも解消される。ウィジェット感覚でコントロールセンターを配置できるようになり、よりスムーズにiPhoneの操作ができるようになる。

カスタマイズの方法も直感的だ。コントロールセンターを開いた状態で、画面左上に表示されている「+」のボタンをタップしたあと、移動させたいボタンをドラッグすればいい。不要なものは、ボタンの左上に表示された「−」をタップすると消すことが可能。ボタンの右下をドラッグすると、サイズを変更できる。


コントロールセンターのボタンもサイズ変更やページ追加が可能になり、自由度が増す(筆者撮影)

アイコンだけだと何ができるボタンかがわかりづらいときには、面積を広げておくといい。より目立ち、機能名も表示されるため、選択がしやすくなる。よりサイズを広げて全画面にすると、詳細な操作も可能になる。

例えば筆者の場合、上記のようにWi-Fiやモバイルデータ通信を変更するボタンを頻繁に利用することもあり、これを全画面にして1ページ目に配置した。

すると、コントロールセンターを開くだけで、本来だったら2階層目にあるボタンをすぐにタップできるようになる。このように利用者の使い方に応じた柔軟なカスタマイズが可能になるのが、iOS 18の新しいコントロールセンターと言えそうだ。

AIを活用した機能も多数用意されている

アップルが独自に開発した生成AIの「Apple Intelligence」も、iOS 18から一部の端末で利用できるようになる。iPhoneで対象になっているのは、「A17 Pro」を搭載した「iPhone 15 Pro」と「iPhone 15 Pro MAX」の2機種。おそらく、今後発売されるであろう新型iPhoneも対象になると見られる。

一方で、Apple Intelligenceは最初は英語のみの対応。日本語での利用はできない。ただし、iPhoneの言語設定を英語に切り替えれば、日本でもこれらの機能を活用することは可能。英語でメールを書きたいときなどにApple Intelligenceを頼るといったことはできる。用途は限定されるが、使いどころがまったくないわけではない。

Apple Intelligenceには含まれていないが、iOS 18はAIを活用した機能も多数用意されている。「計算機」の手書き計算は、その1つだ。こちらは日本語環境でも利用できる。電卓だと式が複雑になってしまうようなときに、手書きを使えば直感的に結果を導き出すことが可能になる。

呼び出し方は簡単で、「計算機」アプリを立ち上げた状態で左下にある電卓のようなボタンをタップし、「計算メモ」を呼び出すだけだ。すると、「メモ」が立ち上がるので、新規メモを追加。そのメモ内に、手書きで計算式を書くと、「=」を記入した瞬間に答えが導き出される。

ボイスメモ「文字起こし」の実力は?

日本語には非対応だが、ボイスメモの文字起こしも使える機能の1つだ。まず、「設定」アプリで「一般」から「言語と地域」を呼び出し、「優先する言語」から「言語を追加」をタップし、「English」を追加。「English」を「日本語」の上にドラッグすると、iPhoneの言語設定が英語に切り替わる。


ボイスメモは英語の文字起こしに対応。精度も高かった(筆者撮影)

この状態で「ボイスメモ」を立ち上げ録音を開始したあと、画面左下のスピーチボタンを押すと、文字の書き起こしが始まる。書き起こされた文字は、録音されたデータのメニューを開いて「View Transcript」をタップすると確認できる。

アップルが6月に開催したWWDCの基調講演を冒頭のみ録音してみたが、ティム・クックCEOの発言がかなり正確にテキスト化された。動画の音声を直接USB-C経由でiPhoneに取り込んだため、録音環境はベストに近く、比較的文字起こしはしやすかったと思われるが、初搭載、しかもベータ版の機能としては十分な実力だった。

言語設定をわざわざ切り替えるのが面倒だが、英語の発表や講演などを聞く際に役立ちそうな機能だ。

もっとも、録音した音声の文字起こしでは、ライバルのグーグルが先行しており、Pixelシリーズは早くから日本語にも対応している。アップルはむしろ後発で、日本語を含む多言語対応など、まだまだやるべきことは多い。日本語は比較的優遇されており、1年程度のタイムラグでサポートされることも多いため、今後の進化にも期待しておきたい。


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(石野 純也 : ケータイジャーナリスト)