晩酌で猫を助けるにゃ!4歳で天国へ旅立った病気の保護猫が原点 限定焼酎「あにゃたにひとめぼれ」を製造販売 売上金はすべて保護猫活動支援に
宮崎県都城市の都城酒造(川粼猛社長)が今年6月、保護猫活動支援のために発売した限定焼酎「あにゃたにひとめぼれ」が、猫好きの間で注目を集めている。同社は「不幸な外猫を減らしたい」と、2021年から「はぴにゃんプロジェクト」を立ち上げ、地元の保護猫団体と連携して定期的に譲渡会を開催。これまで団体が保護した440匹の猫(保護犬も含む)を新しい飼い主へと繋ぐサポートをしてきた。活動のきっかけとなったのは、同焼酎のラベルにスーパーマンとして描かれている猫「むぅ」(オス、4歳で没)の存在だった。
【写真】限定焼酎「あにゃたにひとめぼれ」と、スーパーマンに扮したむぅを描いたチラシを手に持つ福盛さん
同社は2008年、製造工場に隣接する敷地に、ダイニングレストランやカフェ、セレクトショップ、音楽ホールなどがある商業施設「エムズガーデン」を開設。周囲はどんぐりや楓など100種類以上の植物が生い茂る小さな森になっているが、けがや病気を負った猫たちが迷い込むことがよくあり、その都度、里親探しなどをしてきたという。
2019年夏のある日、1匹のキジ白の猫が、同施設の駐車場に停めた川粼社長の車の下で倒れていた。それがむぅだ。保護した経営企画部部長の福盛美和さんは「ボロボロでやつれ、足を引きずり、熱中症だったのかぐったりしていた」とそのときの様子を振り返る。
すぐに病院へ連れていき、治療を始めたが、重篤な状態だったという。ウイルス検査をすると、猫エイズと白血病に感染していることがのちにわかった。集中治療室で治療を受け、数日間入院。すると、むぅは獣医師も驚くほど回復した。本社管理棟内に隔離された猫部屋をつくり、そこで世話をすることになった。
むぅは福盛さんや他の社員にはほとんどなでさせてくれないのに、川粼社長にだけは心を許し甘えた。野良猫は細い目つきで睨んだり尻尾が蛇みたいに動くことなどから「猫は怖いとずっと思ってきた」という川粼社長。そうした先入観から犬は飼っていたが猫を飼ったことはなかった。しかし、純粋に、健気に生きようとするむぅと出会ったことで一転、猫の魅力にはまり猫好きに。「猫ってこんなにも愛おしい生き物だったのかと感じた」という。猫の適正飼育や病気にどう対処するかなども勉強するようになった。
「一時的な催しではなく、不幸な猫たちを継続的に救っていくために、会社としてどんな支援ができるのか?」「自分たちにできることはなんだろう?」。むぅを飼って1年後、川粼社長や福盛さんをはじめ社員たちが自問自答し、立ち上げたのが「はぴにゃんプロジェクト」だ。保護猫活動を行っている地元のNPO法人2団体に声をかけ、連携を提案。冷暖房完備の本社管理棟内の部屋を貸しだし、定期的に譲渡会を開催(毎月第4日曜日)。募金や啓蒙活動も行うことにした。
2022年秋になると、むぅは次第に発熱などで体調を崩すことが多くなった。脱毛して皮膚が薄黒くなり、出血もして衰弱していった。社長と福盛さんが看病にあたり、病院に通った。市内の病院がやっていない夜間は、鹿児島の病院まで車を走らせたこともあった。1年以上にわたり、むぅの闘病と向き合ったが、むぅは夏、天国へと旅立った。
定例の譲渡会には、NPO 法人が都城市内を中心に保護した猫たち70匹程度が毎回参加。同プロジェクトを始めた2021年1月から今年7月までに計31回開催し、延べ来場者数は2万3千人。これまでに440匹(保護犬を含む)を新しい飼い主へと繋いできた(次回の譲渡会は8月25日)。
冒頭に紹介した限定焼酎の発売もはぴにゃんプロジェクトの一環だ。用途の決まっていなかった焼酎原酒が工場内に残っていたことから、社員たちが「これを活用して保護猫活動の資金にしては」と発案。同社の主力商品で、地元の人たちに愛されている焼酎「あなたにひとめぼれ」にちなみ、商品名は「あにゃたにひとめぼれ」(900ミリリットル入り、1500円)に。ラベルは「不幸な猫を助けてほしい」との願いを込め、スーパーマンに扮したむぅをイメージしたイラストを採用した。千本限定で製造。経費は同社が負担し、売上は全額、餌代や治療費など保護猫活動支援にあてられる。ネット販売はしていないが、同社に電話すれば購入できる。
「社長と相思相愛だったむぅちゃんがきっかけで、はぴにゃんプロジェクトが始まり、譲渡会には毎回、地域の方々がたくさん参加してくださって、これまで多くの猫たちを救うことができています。今後は市内で保護された猫を一時的に預かり、人馴れさせる預かりボランティアさんの育成支援などもしていけたらと考えています」と福盛さんは話している。
【「はぴにゃんプロジェクト」の問い合わせ先】
宮崎県都城市乙房町4113-1 エムズガーデンはぴにゃんプロジェクト事務局
電話 0986-37-3392 インスタグラム @happy_nyan_project
(まいどなニュース特約・西松 宏)