GoogleのAI研究部門であるGoogle DeepMindに務める従業員約200名が、AIを含むGoogleのサービスを政府や軍隊に販売する契約を結んでいることに対し、契約解除を求める書簡に署名していることが報じられています。

Exclusive: Google DeepMind Staff Push to End Military Contracts | TIME

https://time.com/7013685/google-ai-deepmind-military-contracts-israel/



Google DeepMind staff call for end to military contracts - The Verge

https://www.theverge.com/2024/8/22/24226161/google-deepmind-staff-call-for-end-to-military-contracts

Google DeepMind staff are against military contracts for AI use

https://www.androidheadlines.com/2024/08/google-deepmind-staff-are-against-military-contracts-for-ai-use.html

Google DeepMindはこれまで「軍事技術には決して関与しない」との立場を示してきましたが、Googleは「Project Nimbas」と呼ばれるGoogle DeepMindのAI技術を含んだクラウドサービスを展開しています。

Project Nimbasは各国の政府や軍事組織に提供されており、Googleとの契約相手にはガザ地区で武装勢力・ハマスとの激しい戦闘が続くイスラエル軍も含まれており、ガザ地区における爆撃作戦で大量監視や標的の選択にAIを使用しているとの報告もあります。

こうした状況に対し、Googleの従業員は自身の仕事が軍事的に利用されることについて抗議の意を示しており、2024年4月にはProject Nimbusに反対するGoogle社員が抗議の座り込みを行った結果逮捕される事態も起こっています。

Google従業員がイスラエルとの協力に抗議し逮捕される - GIGAZINE



そしてGoogle DeepMindの従業員約200名は、同社のAI技術が戦争に利用されていることへの懸念や軍事組織との契約を解除することを求める2024年5月16日付けの書簡に署名しています。書簡には「特定の紛争の地政学的状況に関するものではないことを強調します」と述べた上で「軍事および兵器製造への関与は、倫理的で責任あるAIのリーダーとしての立場に影響を与え、当社のミッションステートメントであるAI原則に反するものです」と主張しています。GoogleのAI原則は、「企業が『全体的な害』を引き起こす可能性のあるAIアプリケーションを開発しない、兵器またはその他の技術に貢献する、または『その目的が国際法と人権に広く受け入れられている原則に違反する』技術を構築しない」というものです。

書簡では、Google DeepMindの経営陣に対し、軍事組織や武器メーカーがGoogle Cloudのユーザーであるという疑惑を調査するように求めているほか、これらの組織や企業がGoogle DeepMindのテクノロジーにアクセスすることを禁止するよう求めています。また、今後Google DeepMindの技術が軍事組織によって使用されるのを防ぐための新しいガバナンス組織を設立することを要求しています。

しかし、書簡の提出から3カ月が経過した2024年8月時点でも、Googleからの対応は行われていないとのこと。関係者は「私たちはこれまでに明確な反応を受け取っておらず、次第に不満が募っています」と批判しました。

Google DeepMindの従業員らは「GoogleのAI原則が守られることや、DeepMindの経営陣が私たちの懸念を共有してくれることを信じています」と語っています。



一方でGoogleの広報担当者は「GoogleはAI技術を開発し、それを顧客に提供する際には、責任を持って技術を開発するという当社のコミットメントやAI原則を順守しています。あくまでProject Nimbusは、イスラエル政府の省庁が当社の商用クラウド上で実行されるワークロードを対象とした契約で、兵器や諜報機関に関連する非常に機密性の高い、または軍事的なワークロードは対象としていません。イスラエル政府は当社の利用規約や利用規程に同意しています」と反論しました。