20代女性の95%、健康に悪い「寝る前スマホ」 やめられない人は「子ども向け規制ルール」と「ブルーライトカット」を
健康面で問題があるとされる「寝る前スマホ」だが、20代女性の95%が、夜、布団の中でスマホを使っていることがNTTドコモの研究機関、モバイル社会研究所(東京都千代田区)が2024年8月19日に発表した調査「20代女性の95%が『夜、寝る前に布団の中でスマホを利用』」で明らかになった。
いったい大丈夫なのか。調査した専門家に聞いた。
日本眼科医会も「寝る1時間前は、スマホを見ない」と推奨
「寝る前スマホ」に関しては、睡眠の質や目の疲れに悪い影響を与えると指摘する医療関係者が多い。
たとえば、日本認知症学会専門医・指導医で「おくむらメモリークリニック」院長の奥村歩(あゆみ)さんは、著作『スマホ脳・脳過労からあなたを救う 脳のゴミを洗い流す「熟睡習慣」』のなかで、「(寝る前にスマホを見て)インプットばかりが極端に多くなって自分からのアウトプットが少なくなった状態は、まさに脳の中にゴミを溜め込んでいるかのよう。スマホをベッドに持ち込んで、眠る体勢になってからも見続けてしまう人は、睡眠障害を起こすリスクがとても高いと言われている。それは、スマホ画面が発する『ブルーライト』という青く強い光の影響のためだ。睡眠前にブルーライトを見ていると、眠りの途中で目が覚めたり、深い眠りが得られなくなったりする」と警鐘を鳴らしている。
また、日本眼科医会では、スマホの目に対する悪影響を予防するため、子どもを対象に(大人でも有効)、Webサイト「子どもの目・啓発コンテンツについて」のなかで、「姿勢を正して、画面から30センチ以上離す」「スマホを30分見たら、20秒休む」「なるべく屋外で活動する」「スマホを見ている間はパチパチ瞬きする」の4項目とともに、「寝る1時間前は、スマホを見ない」ことを推奨している。
モバイル社会研究所の調査(2024年2月)は、全国の15〜79歳の男女5719人が対象だ。
まず、「夜、寝る前に布団の中でスマートフォンを利用しているか」を聞くと、「ごくまれに」も含めて全体で約70%の人が利用している【図表1】。
特に20代女性の利用率が高く、約7割の「いつも」を含めて、95%が「夜、寝る前に布団の中で利用している」結果となった。10代・30代女性も約6割が「いつも」利用していた。
続けて、夜、寝る前に布団の中でスマホを利用している人に、何をしているかを聞くと(複数回答可)、「LINE・メール・メッセージ」「ニュース、天気予報」「SNS」が約4割で、「動画視聴」が3割強だった【図表2】。
さら、夜、寝る前に布団の中でスマホを利用している人に「動画視聴」をしているかを聞いたのが【図表3】だ。全体では3割強が視聴しており、10代〜20代の男女で約半数、30〜60代でも男女ともに約3割〜4割が動画を視聴している。
ブルーライトカットモードや、ナイトモードを使おう
この結果をどう受けとめればよいのか。は、J‐CASTニュースBiz編集部は調査を行なったモバイル社会研究所の佐藤仁さんに話を聞いた。
――若い世代の男女で、これだけ「寝る前スマホ」を多いことは、眼精疲労がたまるとか、睡眠不足になるとか、健康上の大問題ではないでしょうか。スマホなしではいられなくなる「スマホ依存症」の心配はないのでしょうか。
佐藤仁さん 昨年(2023年)の当研究所の調査(※1)では、10代で4割、20代で3割が「スマホを利用する時間の大半が楽しい」と答えています。
若い世代ほどスマホの利用が楽しいと感じている人が多くなっています。一日が終わり、寝る前の楽しみとして、自分の好きなコンテンツを見て疲れをいやしたり、リラックスしたりしていることが想像できます。
一方で、ご指摘のとおり、寝る前にずっと見てしまうのは睡眠の質が落ちることなどが懸念されます。そこで、スマホに搭載されているブルーライトカットモード、ナイトモード(Android:おやすみ時間モード、iPhone:Night Shift)などを利用することをお勧めします。
――ブルーライトカットモードは、有害なブルーライトを低減して、画面の表示を暖色系の色に調整することで、目の疲れを和らげて視力を保護するとされていますが、実際に効果はあるのでしょうか。
佐藤仁さん 効果については、申し訳ございませんが、当研究所では調査しておりません。
(※1)【ライフスタイル】スマホ利用時間の大半が楽しい時間:10代の4割(2023年8月14日)
LINEの友人に「もう寝るので更新しません」と宣言しよう
――特に、20代の女性に突出して「寝る前スマホ」が多いのは、何か理由があるのでしょうか。いったい、何を見ているのでしょうか。
佐藤仁さん 女性の10代、20代はスマホの利用時間が長い傾向があります。当研究所の2022年5月の調査(※2)では、10代、20代で比べると、20代は10代よりも余暇時間が少ないと想定されます。そのため、好きなスマホを自由に触れることができる時間が、夜寝る前となっているためではないかと推察します。
今回調査の【図2】に出ているように、20代女性に限らず多いのは「LINE・メール」のチェック、「ニュースや天気」の確認、「SNS」のチェック、「動画視聴」です。また、【図3】では布団の中で動画視聴をしているかを聞いていますが、20代女性の約半数が動画を視聴しています。
別の調査では、20代女性は「映画・ドラマ」を視聴している方が約7割と高いため、このような動画を見ているのかもしれません。
――「寝る前スマホ」のリスクを防ぐには、そうした習慣を止めることが一番ですが、何か上手に止める方法はないものでしょうか。
佐藤仁さん 現在では、スマホを目覚まし時計代わりに利用している人も多いので、布団までスマホを持ち込んでしまう人が多いと思います。また、寝る前のリラックスタイムにしている人もいます。
ですが、使いすぎはやはり心配です。先ほど述べたように、スマホのナイトモードを使ったり、夜23時以降はスマホを見ないといった「マイルール」を作ったりするのがよいと思います。
SNSやLINEで友人の動向が気になる方は、「もう寝るので更新しません」「返信は明日の朝になります」と宣言して寝てしまうのもよいと思います。
(※2)【ライフスタイル】若年層はスマホ、高年層はテレビを長時間利用 30〜40代を境にスマホとテレビの利用時間が逆転(2022年5月30日)
子ども向け「ペアレンタルコントロール」を自分に課しては
――「寝る前スマホ」のことで、特に強調しておきたいことがありますか。
佐藤仁さん 寝る前のスマホ利用には限らないのですが、スマホを適正に利用するために、「マイルール」を作ってみてはいかがでしょうか。
「意識だけでは守るのが難しい」という場合、一般には子ども向けとされている「ペアレンタルコントロール機能」(Android:Digitag Wellbeing、iPhone:スクリーンタイム)などを利用して、決まった時間以降はスマホを利用しない、というようにしてもよいかもしれません。
――なるほど! 子ども向けのルールを大人の自分に課すという、絶妙なアイデアですね。
佐藤仁さん けっこう効果があると思いますよ(笑)。
(J‐CASTニュースBiz編集部 福田和郎)