「大場政夫を彷彿とさせる」 伝説ボクサーと重なった王者・武居を比嘉陣営が警戒「能力凄い」
武居由樹が練習公開
ボクシングのWBO世界バンタム級王者・武居由樹(大橋)が20日、9月3日に東京・有明アリーナで行われる同級1位・比嘉大吾(志成)との初防衛戦に向け、神奈川・横浜市内の所属ジムで練習を公開した。視察した比嘉陣営に野木丈司トレーナーは伝説のボクサーになぞらえて警戒した。NTTドコモの映像配信サービス「Lemino」で独占無料生配信。戦績は28歳の武居が9勝(8KO)、29歳の比嘉が21勝(19KO)2敗1分け。
武居はシャドー、サンドバッグ打ちを1回ずつ披露。「やることはやったのであとは研ぎ澄ませていくだけ」。減量はリミット53.5キロまで4キロ。「射程圏内に入った」と順調ぶりをアピールした。わずか6分間だが、見守った比嘉を指導する野木トレーナーは「やっぱり当て勘がありますね。足も柔らかいですし、良い準備ができている」とパンチャーの王者を警戒した。
「サンドバッグを打つ時もパワー任せじゃない。瞬間にギュッと打つ。ピントを合わせる感じです。能力が凄いですね。素晴らしい選手にやりたいことをできるか。相手がやられたくないことをいかにやるか」
武居と師匠の元世界3階級制覇王者・八重樫東トレーナーは過去、野木トレーナーの過酷な階段トレーニングに参加し、親交が深い。野木氏は「もともと彼のことは大好きなんですよ。僕の運命を決定づけた大場政夫さんを彷彿とさせる」と強調。1970年にWBA世界フライ級王座に就き、5度防衛した大場氏になぞらえた。
自身が小学生時代に憧れ、ボクサーになる夢を抱いたきっかけの人物。「雰囲気を彷彿とさせます。角刈りにしたらもっとそう見えるのでは(笑)。相手が大吾じゃなければ『頑張れ!』と応援したいんですけどね」と複雑な胸中を明かした。
とはいえ勝負となれば別。「大橋ジムが大好きです。巡り合わせでこういう結果(対戦)になった。試合結果がどうあれ、後腐れはないでしょう。勝負に徹したい」と切り離した。比嘉はこの日8回のスパークリングで調整。順調な内容だったという。
さらにこの日の会見前には、武居と八重樫氏にミネラルウォーターを差し入れ。ペットボトルを手に「何も入っていないからね」と念押しすると、互いに大笑いしていた。
武居陣営・大橋会長も野木トレーナーの練習に感謝「大橋ジムの強さの根本」
武居は育ての父として慕う格闘技ジム「POWER OF DREAM」の古川誠一会長と二人三脚でK-1世界王者に。大橋ジムでボクシング転向後は、元世界3階級制覇王者・八重樫東トレーナーに師事し、21年3月にボクシングデビューした。8勝(8KO)のパーフェクトレコードで今年5月の東京ドーム興行で世界初挑戦。ジェイソン・マロニー(オーストラリア)に判定勝ちし、涙の王座奪取を果たした。
比嘉は18年4月に世界戦では日本人初の体重超過を犯し、2度防衛したWBC世界フライ級王座を剥奪。資格停止処分を経て1敗したが、再起後4連勝で6年5か月ぶりの世界戦にたどり着いた。
武居陣営の大橋秀行会長は「比嘉は10年前から出稽古に来ていたので複雑。いつも大橋ジムの選手たちは野木さんのトレーニングを受けている。今回の武居は違いますが、これまで本当にお世話になった。大橋ジムの強さの根本にあります。でも、恩返しで勝利をプレゼントすることはなく、こちらが絶対に勝ちます」と宣言。八重樫トレーナーも「敬意を持って臨みたい」とした。
バンタム級は武居のほか、WBAに井上拓真、WBCに中谷潤人、IBFに西田凌佑が就き、全4つの王座を日本人が独占。元日本王者・堤聖也や那須川天心も同級で世界王座を見据える。
試合はセミファイナル。メインイベントでは、世界スーパーバンタム級4団体統一王者・井上尚弥(大橋)が、元IBF王者TJ・ドヘニー(アイルランド)と4団体防衛戦を行う。
(THE ANSWER編集部・浜田 洋平 / Yohei Hamada)