【闘病】「持病を抱えるとはこういうことか…」 SLEとシェーグレン症候群を発症
話を聞いた闘病者のたまきさん(仮称)は、医療事務の仕事に忙しい中、「シェーグレン症候群」と「全身性エリテマトーデス(SLE)」を発症しました。激しい胃腸炎で病院を受診したところ、腸が大きく腫れていることがわかりそのまま緊急入院となりました。すぐにシェーグレン症候群の診断がついたそうですが、全身性エリテマトーデスと診断がつくまでには2カ月を要したそうです。どのようにして診断がついたのか、また実際にどのような治療を行ったのか、詳しく聞きました。
※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2024年4月取材。
≫【イラスト解説】SLE・シェーグレン症候群など「膠原病」の症状・原因体験者プロフィール:
たまき(仮称)
東京都在住、1971年生まれ。診断時の職業は総合病院の医療事務。2019年6月に胃腸炎で緊急入院し、その後、全身性エリテマトーデス(SLE)とシェーグレン症候群と診断される。4カ月ほど休職したのち、同じ職場に時短勤務で復職したが、2024年4月現在、今後のことを考え地元の病院へ転職した。ステロイド、免疫抑制剤、免疫調整剤を中心にした投薬治療で現在は寛解状態を維持している。
記事監修医師:
副島 裕太郎(横浜市立大学医学部血液・免疫・感染症内科)
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。
激しい胃腸炎で入院、判明した病気とは?
編集部
まず初めに、たまきさんが抱えている疾患について教えていただけますか?
たまきさん
全身性エリテマトーデス(SLE)は免疫が暴走して関節や臓器に炎症を起こす自己免疫疾患です。私の場合は腸炎(ループス腸炎)の症状が強く、一晩中嘔吐と下痢を繰り返しました。あとは「ループス腎炎」もあります(腎生検はしませんでした)。また、門脈血栓(血栓によって腸から肝臓につながる静脈[門脈]がふさがったり狭くなったりする病気)も発症しており、門脈圧亢進症、胃静脈瘤と経過をたどっています。
編集部
病気が判明した経緯について教えてください。
たまきさん
激しい胃腸炎の症状で近所の消化器内科へ行ったところ、「腸が大きく腫れている」と言われてすぐに近くの総合病院の救急外来を紹介され、そのまま緊急入院となりました。検査をしてすぐ門脈に血栓(血の塊)があることと、抗核抗体が陽性だったことから、「なんらかの膠原病の疑い」があると言われ、早い段階で「シェーグレン症候群」の病名はつきました。しかし、SLEの典型的な蝶形紅斑(蝶が羽を広げている形をしているように見える、頬にできる赤い発疹)や関節痛がまったくなく、確定診断に至るまでは2カ月ほどかかりました。2回入院したのですが、最初の入院(SLE確定前)では腹水が溜まってお腹がパンパンになったり、貧血が進んで輸血をしたり、毎日熱が出たりといった症状があって、「いったい何が起きているのだろう」と不安でした。
編集部
自覚症状などはあったのでしょうか?
たまきさん
緊急入院になる一週間ほど前からみぞおちあたりの不快感、吐き気、発熱があり、食事もまともに取れない状態でした。さらに、そのひと月前くらいの時期に、耳の下が腫れたり、微熱が出たりしていたので、その頃から始まっていたのではないかと思っています。
編集部
どのように治療を進めていくと医師から説明がありましたか?
たまきさん
2回目の胃腸炎で緊急入院した日の夜に、消化器専門の先生と膠原病専門の先生が2人揃って病室へ来て「SLEとして治療を始めます。ステロイドを使います」と言われたのを覚えています。「副作用がたくさんあるけれど、しっかり診ていきます」といった感じの説明を受けました。ステロイドを使った翌日には腸炎の症状がすっかり治まって、「こんなにすごい薬ならもっと早く使ってくれたらよかったのに」と思いましたが、その後多くの副作用に苦しめられました。
家族、同じ境遇の人、友人、趣味が闘病生活を支えてくれた
編集部
病気が判明したときの心境について教えてください。
たまきさん
やっぱり「まさか私が?」ですね。でも、病名が確定した時は、「やっと治療が始まる」と、ちょっとホッとしました。SLEが寛解して働いている人が身近にいるので、そんなに大変なこととは受け止めていなかったような気がします。
編集部
発症後、生活にどのような変化がありましたか?
たまきさん
ステロイドの副作用ももちろんですが、倦怠感や筋肉痛が頻繁にあり、動けるけれどずっと「しんどい」日が続きました。突然、電池が切れたみたいに動けなくなるのです。通勤の時も途中下車して駅のホームで休んだり、帰宅して倒れるように布団に入ったり……。休めばある程度よくなりますが、倦怠感を理由に仕事を休みづらいので、仕事には行っていました。通院のために仕事を早退したり休みをもらったりすることが多く、気が引けましたが、職場は医療機関ということもあり、難病に対して配慮してくれていました。あとは別の婦人科疾患で手術の話が出たのですが、門脈血栓がネックになり手術を断られてしまいました。「持病を持つということはこういうことなのか」と痛感しています。
編集部
難病を抱える方たちとの交流もあるそうですね。
たまきさん
はい。SNSで難病を持っている人たちと多く交流するようになって、弱音を吐いたり励ましあったりすることもあります。ずっと続けていたランニングやマラソン大会に参加できない状態が続いていましたが、少しずつ走れるようになりました。
編集部
闘病に向き合う上で心の支えになっているものを教えてください。
たまきさん
入院中は夫や友人たちがよくお見舞いに来てくれて、パワーをもらいました。あとは趣味ですね。好きな野球チームを応援したり、音楽を聴いたりすることはできました。ライブに行くためにウォーキングをして体力作りもしました。SLEになってからアコースティックギターも始めたのです。趣味に没頭し、趣味で繋がった友人たちと交流しているときは、病気のことも忘れられます。最近はだいぶ体力も戻り、ランニングを再開し、久しぶりにマラソン大会にも参加しました。
病気で生活を制限されている人がいるということを知ってほしい
編集部
現在の体調や生活などの様子について教えてください。
たまきさん
通勤、今後の通院のことも考え、思い切って地元の病院へ転職しました。体調はだいぶ良くなりましたが、SLEとはまだまだ付き合っていかないといけないです。薬に関しては、ステロイド(プレドニン5㎎)、免疫抑制剤(タクロリムス)、免疫調整剤(プラケニル)のほか、血栓予防にリクシアナを飲んでいます。そのほか血圧の薬、肺炎予防のダイフェン、ステロイドで骨がもろくなるのを防ぐための薬を服用しています。シェーグレン症候群に対しては目薬だけです。また、血栓や胃の静脈瘤のチェックのための造影CTや胃カメラを定期的に受けています。生活面では感染症と紫外線に気をつけています。そのせいか、久しぶりに会った友人に「色が白くなった」と褒められたのは嬉しかったです。大好きだったお酒は止められてしまいました。自分が難病になったあと、夫が心臓の病気で生死をさまよったり、母が寝たきりの介護生活になったりで、自分の難病以外にも大変なことがたくさん起こり、キツくても休むこともできない日々が続きましたが、再燃だけには気をつけないといけないなと思っています。
編集部
あなたの病気を意識していない人に一言お願いします。
たまきさん
免疫を薬で下げていますので、感染症には十分気をつけています。紫外線も浴びてはいけません。病気でそのような生活を強いられている人もいることを知っていただけるとうれしいです。
編集部
医療従事者に望むことはありますか?
たまきさん
感謝しています。定期的に顔を合わせているので、先生の顔を見るとホッとします。いつもありがとうございます。入院中は先生や看護師さんたちがずっと病院にいるような気がして、先生や看護師さんたちは休めているのか心配になりました。
編集部
最後に、読者に向けてのメッセージをお願いします。
たまきさん
緊急入院した翌日は、私が走りたかったマラソン大会の日でした。走ろうと思っていた当日に、鼻に管を入れた状態で、病院で寝ているなんて想像もしませんでした。でも、病気はそんなふうに突然やってくることもあります。そして誰にでも起こりうることだと思います。体調に何か異変があったら様子を見ていないで早めに受診してください。「病気じゃなかったらどんなふうに今を生きているだろう?」と思うことはありますが、案外そんなに変わらないような気もします。病気になってよかったとは思っていませんが、病気にならないと知り合えなかった人や、見えなかったものがあると感じています。
編集部まとめ
自身の病のほか、ご主人の病気やご家族の介護などが積み重なり、精神的にも肉体的にも大変な状況に置かれていたことと思います。しかし、現在はフルマラソンを完走されるほどに回復されたそうです。たまきさんも「完走できたことが自信に繋がった」とおっしゃられていました。また、たくさんの趣味をお持ちだというたまきさんのお話を聞き、夢中になれることがあり、その仲間がいるということは、生きる上での活力になるのだと改めて感じました。
なお、Medical DOCでは病気の認知拡大や定期検診の重要性を伝えるため、闘病者の方の声を募集しております。皆さまからのご応募お待ちしております。
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