ついに現実がSF映画に追いつく、AIとドローンを駆使して「未来の犯罪を予測」する計画がアルゼンチンで始動
2002年のSF映画「マイノリティ・リポート」では、犯罪予知システムが導入されたことで、まだ罪を犯していない人が逮捕されるようになった近未来が描かれました。同様に、AIで犯罪を事前に予測する専門チームを創設する計画を、アルゼンチン当局が発表しました。これに対し、人権団体は市民の監視につながると反発しています。
BOLETIN OFICIAL REPUBLICA ARGENTINA - MINISTERIO DE SEGURIDAD - Resolución 710/2024
Javier Milei’s government will monitor social media with AI to ‘predict future crimes’ | International | EL PAÍS English
https://english.elpais.com/international/2024-07-30/javier-mileis-government-will-monitor-social-media-with-ai-to-predict-future-crimes.html
Argentina will use AI to ‘predict future crimes’ but experts worry for citizens’ rights | Argentina | The Guardian
https://www.theguardian.com/world/article/2024/aug/01/argentina-ai-predicting-future-crimes-citizen-rights
アルゼンチンのハビエル・ミレイ大統領は2024年7月29日に、人工知能で統計データを解析して犯罪を予測する「治安対策に応用された人工知能ユニット(UNIDAD DE INTELIGENCIA ARTIFICIAL APLICADA A LA SEGURIDAD:UIAAS)」を発足させる計画を発表しました。
サイバー犯罪・サイバー問題局の傘下に設立されるUIAASの主な任務には、機械学習アルゴリズムを使って過去の犯罪データを分析し、将来の犯罪を予測したり未然に防いだりすることが含まれます。
また、ダークウェブの監視による犯罪捜査、防犯カメラの映像のリアルタイム監視による不審者や指名手配犯の発見、サイバー攻撃への対処、ビッグデータの解析による容疑者プロファイリング、ドローンを用いた空中監視と緊急事態への対応、ロボットを使った爆発物処理、ソーシャルメディアの分析による犯罪グループの動向調査などもUIAASが担当するとされています。
これについて、スペインのニュースメディアのEL PAÍSは「ミレイ大統領は、SF作家のフィリップ・K・ディックがかつて想像し、後に『マイノリティ・リポート』で映画化されたように、機械学習アルゴリズムを使って未来の犯罪を予測するつもりです」と報じました。
安全保障省は、AIを治安に役立てることで、警察や治安部隊の有効性と効率が大幅に向上し、脅威や緊急事態に迅速かつ的確に対応できるようになると論じていますが、人権団体や専門家は過度な監視やプライバシーのリスクを懸念しています。
アムネスティ・インターナショナル・アルゼンチン事務局長のマリエラ・ベルスキ氏は「大規模な監視があると、人々は投稿やコメントなどインターネットで公開されるものがすべて治安部隊に監視されているのではないかと心配し、自主検閲をしたり、自分の考えや批判を表明するのを控えたりするようになるので、表現の自由が脅かされます」と話しました。
南米に位置するアルゼンチンでは、国家による抑圧の歴史が長きにわたって国民生活に影を落としており、1976〜1983年まで続いた軍事独裁政権下では3万人もの人々が誘拐や拷問の犠牲になったと推定されています。また、2023年12月に大統領に就任したミレイ氏は、犯罪に対する強硬な姿勢で知られるほか、銃規制の撤廃やアルゼンチン中央銀行の廃止といった過激な政策から「アルゼンチンのトランプ」との異名で呼ばれることもあります。
UIAASは憲法と現行法の枠組みの中で活動するとアルゼンチン当局が説明しているのに対し、ブエノスアイレス大学の教授兼研究者でジャーナリストのマルティン・ベセラ氏は「ソーシャルネットワークやウェブサイトを監視するために政府機関が作られるのは、憲法のいくつかの条文に反しています」と述べました。