⽇⽶合作 ブロードウェイミュージカル『RENT』、稽古場レポート&演出家コメントが到着
2024年8⽉21⽇(水)から東京・⼤阪で上演される⽇⽶合作 ブロードウェイミュージカル『RENT』。一カ月にわたり行われている稽古場から、オフィシャルレポートならびに演出家トレイ・エレットからコメントが到着した。
NY イースト・ヴィレッジに⽣きる若者たちの姿をビビッドに描き、ピュリツァー賞やトニー賞などに輝いた、ロック・ミュージカルの⾦字塔でもある『RENT』は、ブロードウェイでは2008年9⽉まで、12年にわたってロングラン上演を⾏い、計5124公演を記録。2006年に映画化もされている。今回は、これまで来⽇していたツアーカンパニーとは異なり、この⽇本で1から作り上げる⽇⽶合作版となる。
アメリカから届いたセットが仮組みされ、交わされる⾔葉は全て英語による稽古場は、ニューヨーク・イーストヴィレッジの雰囲気を醸し出している。この⽇は、キャストほぼ全員による「Happy New Year」「Rent」「La Vie Bohème」「Christmas Bells」、そしてマーク・ロジャー・ベニー・エンジェル・コリンズによる「You'll See」と、休憩をはさみながら進んでいく稽古の模様を⾒つめることとなった。
演出のTrey Ellett が「OK, Everybody! Letʼs Go!」と声をかけ、「Happy New Year」がスタート。楽曲のフレーズに対応してキャスト各⼈がどのように動き、どのような仕草をするか、演出助⼿、あるいはTrey ⾃⾝が細かく指⽰していく。その様⼦は、もちろん皆集中していながらも、どこか和やか。Trey が⽰した動作にミミ役のChabely Ponce が「Trey, thatʼs great!」と応じて皆が笑顔になった⼀コマなどに、それが表れていたように思う。
マーク役の⼭本耕史とロジャー役のAlex Boniello に対しても、その場を去ろうとするロジャーの腕をマークがつかんで⽌める時のふたりの位置取りや、腕のどこをつかむのか、腕をつかまれたらどう動くのか、Trey が実演。⼭本とAlexも何回か繰り返すうちに動きがぴったりとかみ合い、Trey は「Good!」とサムズアップ。 ⼭本について、Trey は「こちらが⾔ったことをすぐにできるようになる」と⾔っていたが、そうした吸収の速さが伝わってきた。
ミミ役:Chabely Ponce
マーク役:⼭本耕史 ロジャー役:Alex Boniello
「Rent」では、マークが「Power blows!」と発すると⼀気に全員のアクションが加速。それぞれの動きを繰り返し確認しながら、マークとロジャーが額を合わせる姿が印象的なサビまで、1曲を通す。何度も繰り返し⾏う稽古だけに、さすがにフルパワーのボリュームではないにしても、キャスト全員が声を重ねた時の⾳圧には圧倒される。
「Christmas Bells」の開始前にはキャスト各々が⾐裳のコートを⽻織って待機。その時コリンズ役のAaron A. Harrington が⾃分のパートを⼝ずさんでいたのだが、低⾳の響きがあまりに素晴らしく、⽿を奪われた。⾳域の広さ、声量の豊かさも相まって、彼の歌声はこの公演の⼤きな魅⼒のひとつではないだろうか。エンジェル役のJordan Dabson もファルセットが艶やかで、チャーミングな役どころにぴったりの芝居に加えて華やかさもある。コリンズ&エンジェルのカップルには、舞台上でぜひ注⽬してほしい。
コリンズ役:Aaron A. Harrington エンジェル役:Jordan Dabson
「Christmas Bells」はアンサンブルの絶妙なハーモニーから始まり、各パートが徐々に重なって最後にはひとつになる。あまりにエモーショナルで、⼼が揺さぶられずにはいられない。ジョナサン・ラーソンの⽣んだ楽曲の素晴らしさをあらためて実感する楽曲で、Trey が「Good job guys, very good!」と⾔ったことも納得だ。
「You'll See」ではロジャー役のAlex、ベニー役のAaron James McKenzie の動きを中⼼に進め、この⽇の稽古は終了。「オツカレサマデシタ︕」とにこやかに帰っていくキャストの笑顔がまぶしかった。
限定された場⾯の稽古だったが、これからどんどんレベルアップしていくことがわかる。この明るくクリエイティビティーあふれる稽古場であれば、よい公演にならないわけがない。舞台の幕が上がり、そして千秋楽を迎えるまで、彼らは進化・深化し続けることだろう。
演出家︓Trey Ellett コメント
稽古はとても順調で、予定よりも先に進んでいます。⼭本耕史さん、Crystal Kay さんをはじめキャストは皆とても才能にあふれていて、何事もすっと頭に⼊っていく。今とてもハッピーな状態ですよ。
耕史さんは、以前は⽇本語でマークを演じて、今回は英語で演じている。2か国語で演じるなんていったいどうすればできるんだろうと、私⾃⾝不思議に思うくらいの素晴らしさです。とてもいい動きをされる俳優だと思いますし、シンガーとしてもダンサーとしても⼤変な才能を持っている。⾮常に印象的ですし、とても感動しています。
今回はMIX キャストとして⽇本とアメリカの俳優が共に『RENT』を演じていますが、稽古が始まるとあっという間に皆が仲良くなりました。とても楽しい雰囲気ですし、『RENT』のテーマとも相まって、皆の間の絆も感じられる順調に初⽇を迎えられるだろう、という予感がしています。
取材・文(レポート)=⾦井まゆみ 撮影=岩村美佳