“日本軽視”批判の仏ゲーム「発売中止」求め署名は約10万人…満開の桜の横で田植え、販売元は「創作」を強調

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問題となったゲームのプレイ画面(Ubisoft Japan公式YouTubeチャンネルより)

アサシンクリードシャドウズの発売中止を求めます》

 フランスの大手ゲーム会社『Ubisoft』が手掛けるゲームの演出方法を巡りSNS上で議論を醸している。冒頭の文言を掲げたオンライン署名活動も発足しており、集まった署名は7月26日時点で約9万8000人だ。

「問題となっているゲームは『アサシン クリード』シリーズです。2007年に1作目が発売されると、シリーズ累計で2億本以上を売り上げ、同社を代表するコンテンツとなりました。

 プレイヤーは、“アサシン”と呼ばれる暗殺者として、敵対勢力の暗殺をおこなうのが主な内容です。シリーズの特徴は、舞台となる各時代の街並みを忠実に再現しつつ、十字軍派遣やフランス革命、米独立戦争など歴史上の出来事を題材にしている点です。日本でも大人気で、全シリーズが日本語に翻訳されて発売されています」(ゲーム誌ライター)

 そして満を持して、2024年11月15日発売の最新作では、日本の安土桃山時代を舞台とすることが発表された。どれほどリアルな“忍者”が登場するのかーー。ファンの期待が高まるなか、6月に同作のプレイムービーが発表されると、一気に批判の声が出てきたのだ。

「プレイ動画内では、桜が咲いてるのにその横で村の住民たちが田植えをしているんですよ。しかも主人公は田植えをする人々を見て『豊作で人手がいるのであろう』とつぶやくのです。春なのか夏なのか秋なのか……日本人からすると違和感が出てくるのは当然です。歴史の細部を再現することに定評のある同シリーズとしては残念な感じがしてしまいますよね。

 ほかにも、関ケ原鉄砲隊の旗印を無断盗用した疑惑や、制作陣が過去に日本人蔑視とも取られかねない発言をしていたなど、炎上する要素が次々でてきました」

 火に油を注ぐ形になったのは、本作の主人公だ。

「今回、14作めの主人公に選ばれたのは、架空の女忍者と、伝説の侍“弥助”です。

 弥助は、『信長公記』などにも記録が残る人物で、イエズス会の宣教師らとともに日本の地を訪れた後、信長が求めて家臣にした黒人の大男だと伝えられています。その生涯は大半が謎に包まれており、弥助に関する史料は非常に少ないです。同シリーズで実在の人物が主人公に選ばれたのは初めてでしたが……。

 ゲームを面白くするためではなく、いわゆる“ポリコレ”的な潮流の中で、あえて弥助というキャラクターを選んだのではないか、そもそも“弥助”は侍なのか、など色んな批判が出ています。さらに、ある大学の准教授が、弥助にまつわる珍説をウィキペディアの英語版で書いていたことなどが発覚するなど、様々な角度から批判が殺到しているんです。

 とはいえ、一言でいえば、今回のゲームは日本を題材としておきながら、日本の歴史や文化に対して深いリスペクトがないのではないか、という指摘です」(前出・ゲーム誌ライター)

 実際、冒頭のオンライン署名では批判的な声が集まっている。

《UBisoftは差別主義者の集まりだと思います》

《ゲームとはいえ間違った歴史観は許せない》

《大好きなゲームだったので、間違ったことはしないでください》

 一方、開発チーム「Ubisoft japan」は7月23日、X上にて「日本の皆さまへ」と題した声明を発表した。

「画像4枚にわたる声明文では、『私たち開発チームメンバーにとって、戦国時代の日本を舞台にしたアサシンクリードの制作は長年の夢でした』とした上で、制作については外部のコンサルタントから、歴史家、研究者、Ubisoftジャパンの社内メンバーまで、幅広い関係者の協力を得たと説明しています。

 また、『「アサシン クリード」はシリーズ初期から創作表現の自由を活かして、ファンタジーの要素を取り入れてきました』とあくまで、フィクションであることを強調しました。

 誰にでもわかるぐらい、フィクション性の高い“トンデモジャパン”であれば、最初からこんな批判は起きなかったでしょう。実際、同シリーズはモチーフとなる時代や地域の歴史や文化、風俗を忠実に描くことを売りにしてきました。その点、今回のような批判を受けるのは仕方がないのではないでしょうか」(前出・ゲーム誌ライター)

 さて残るはゲームとして何より肝心な、面白いかどうかだが……。