「養殖魚」のメリットとは? 東京農業大・市川卓准教授が取り組む「養殖」「増殖」の研究に迫る
川瀬良子がパーソナリティをつとめ、日本の農業を応援するTOKYO FMのラジオ番組「あぐりずむ」。毎週火曜は、農業はもちろん、時代の先を捉えるさまざまな研究をおこなっている東京農業大学の農学研究を紹介します。7月2日(火)、7月9日(火)の放送では、北海道オホーツクキャンパス 水圏生産科学研究室の市川卓(いちかわ・たかし)准教授に、魚介類の「養殖」をテーマにお話を伺いました。
◆“魚のエサの価格”も高騰する現状
市川准教授によると、魚やエビ、カニなどを飼育する際のエサには、魚粉などを固めたペレット状の配合飼料が使われているため、「エサになる魚を確保しなければならないのですが、養殖は世界でおこなわれているため“エサになる魚の奪い合い”で価格が高くなっている、という問題が出てきています」と現状を語ります。たとえば、チリやペルーなどで獲れるカタクチイワシやアジの仲間などの価格が高騰しているそうです。
また、養殖であっても、エサとなる魚は天然の海で獲られたものです。“天然の海の力”を借りなければ、養殖魚を生産できないという側面もあり、「そうした高騰の影響を受けてしまうと、(養殖魚の)クロマグロやブリ、マダイなどの値段も上がってしまうことになります」と分析。
そこで現在、市川准教授が進めていることとして「例えば『食品や工業製品などに使われた“食料になるような原料”から、使われていないものを取り出した素材』を魚のエサに使えないか、ということを研究しています」と話します。この研究が進んで魚のエサとして活用できるようになると、「例えば、養殖であれば価格を抑えつつ安定して育てることができ、その魚を皆さまの食卓に届けることができるようになるかもしれません」と期待を寄せます。
とはいえ、「実際に魚を買って、それを食べてくれる方がいなければ、当然(現在、研究を進めているエサを)作る意味がありませんので、買ってもらうためにはやはり値段ってすごく大事だと思うんです。その部分で皆さまに貢献できればいいなと常々考えています」と研究への思いを語ります。
◆「サケの増殖」の研究も
続いて、市川准教授は魚介類の養殖やある程度まで育てて放流する“増殖”の研究もおこなっているということで、研究として実際に育てているという「サケ」について話を伺うことに。
「皆さまが召し上がっているサケは、ほぼ100%天然魚なのですが、実は“人が育てて放流した稚魚”が大きくなった魚なんです。つまり、人が(サケの)卵をとって、その卵から孵化(ふか)したサケの赤ちゃんをある程度の大きさまで育てた後、放流して北の冷たい海で大きくなってから、また日本に戻ってきたサケを獲って皆さまが食べている、ということになります」と説明。この方法で育てると、養殖ではなく「増殖」と呼ばれます。
そこで、市川准教授が現在おこなっている取り組みとして、「放流するサケの子どもを海でそだてるとき、エサの量を変えたらどういうふうに成長するのか、最も成長するエサの量はどれぐらいかなど、そういうことを研究しています」と話します。
ちなみに、サケの稚魚を海に浮かべた生け簀で飼育できる期間は約1ヵ月と決まっているため、「その1ヵ月で“どれだけ大きく健康なサケの子どもを育てられるか”ということが重要です。また“どれだけ経費を下げられるか”というのも大事な視点です」と力を込めます。
ここまで市川准教授に“養殖”“増殖”の研究について熱い思いを語っていただきましたが、私たち消費者は、魚介類全般に対して「養殖ものよりも天然もののほうがいい」というイメージを抱きがち。
しかし、市川准教授は「例えば、牛や豚、ニワトリなど畜産の分野では、ジビエなどは別として“天然のお肉”ってなかなかないはずです。そう考えたときに、例えば、品質の面では天然魚より養殖もののほうが安定していると思いますし、養殖魚には養殖魚のおいしさ、天然魚には天然魚のおいしさがあると思います」と声を大にします。
ほかにも、悪天候の場合に天然魚だと獲ることが難しいものの、陸地で育てている養殖魚であれば出荷することができるというメリットにも触れつつ、「日本はお魚がとても豊かな国なので、“(その2種を)選ぶ楽しさ”もあると思います」と話していました。
<番組概要>
番組名:あぐりずむ
放送日時:毎週月曜〜木曜 15:50〜16:00
パーソナリティ:川瀬良子
市川卓准教授
◆“魚のエサの価格”も高騰する現状
市川准教授によると、魚やエビ、カニなどを飼育する際のエサには、魚粉などを固めたペレット状の配合飼料が使われているため、「エサになる魚を確保しなければならないのですが、養殖は世界でおこなわれているため“エサになる魚の奪い合い”で価格が高くなっている、という問題が出てきています」と現状を語ります。たとえば、チリやペルーなどで獲れるカタクチイワシやアジの仲間などの価格が高騰しているそうです。
また、養殖であっても、エサとなる魚は天然の海で獲られたものです。“天然の海の力”を借りなければ、養殖魚を生産できないという側面もあり、「そうした高騰の影響を受けてしまうと、(養殖魚の)クロマグロやブリ、マダイなどの値段も上がってしまうことになります」と分析。
そこで現在、市川准教授が進めていることとして「例えば『食品や工業製品などに使われた“食料になるような原料”から、使われていないものを取り出した素材』を魚のエサに使えないか、ということを研究しています」と話します。この研究が進んで魚のエサとして活用できるようになると、「例えば、養殖であれば価格を抑えつつ安定して育てることができ、その魚を皆さまの食卓に届けることができるようになるかもしれません」と期待を寄せます。
とはいえ、「実際に魚を買って、それを食べてくれる方がいなければ、当然(現在、研究を進めているエサを)作る意味がありませんので、買ってもらうためにはやはり値段ってすごく大事だと思うんです。その部分で皆さまに貢献できればいいなと常々考えています」と研究への思いを語ります。
◆「サケの増殖」の研究も
続いて、市川准教授は魚介類の養殖やある程度まで育てて放流する“増殖”の研究もおこなっているということで、研究として実際に育てているという「サケ」について話を伺うことに。
「皆さまが召し上がっているサケは、ほぼ100%天然魚なのですが、実は“人が育てて放流した稚魚”が大きくなった魚なんです。つまり、人が(サケの)卵をとって、その卵から孵化(ふか)したサケの赤ちゃんをある程度の大きさまで育てた後、放流して北の冷たい海で大きくなってから、また日本に戻ってきたサケを獲って皆さまが食べている、ということになります」と説明。この方法で育てると、養殖ではなく「増殖」と呼ばれます。
そこで、市川准教授が現在おこなっている取り組みとして、「放流するサケの子どもを海でそだてるとき、エサの量を変えたらどういうふうに成長するのか、最も成長するエサの量はどれぐらいかなど、そういうことを研究しています」と話します。
ちなみに、サケの稚魚を海に浮かべた生け簀で飼育できる期間は約1ヵ月と決まっているため、「その1ヵ月で“どれだけ大きく健康なサケの子どもを育てられるか”ということが重要です。また“どれだけ経費を下げられるか”というのも大事な視点です」と力を込めます。
ここまで市川准教授に“養殖”“増殖”の研究について熱い思いを語っていただきましたが、私たち消費者は、魚介類全般に対して「養殖ものよりも天然もののほうがいい」というイメージを抱きがち。
しかし、市川准教授は「例えば、牛や豚、ニワトリなど畜産の分野では、ジビエなどは別として“天然のお肉”ってなかなかないはずです。そう考えたときに、例えば、品質の面では天然魚より養殖もののほうが安定していると思いますし、養殖魚には養殖魚のおいしさ、天然魚には天然魚のおいしさがあると思います」と声を大にします。
ほかにも、悪天候の場合に天然魚だと獲ることが難しいものの、陸地で育てている養殖魚であれば出荷することができるというメリットにも触れつつ、「日本はお魚がとても豊かな国なので、“(その2種を)選ぶ楽しさ”もあると思います」と話していました。
<番組概要>
番組名:あぐりずむ
放送日時:毎週月曜〜木曜 15:50〜16:00
パーソナリティ:川瀬良子
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/agrizm/