禁煙による“よい変化”がこんなに…!

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「たばこをやめると、食べ物がおいしく感じられるようになる」と聞いたことがある人は、喫煙者・非喫煙者問わず多いのではないでしょうか。禁煙というと、金銭的なメリットを思い浮かべる人もいると思いますが、実はそれ以上に、体にとってさまざまな「よい変化」が起こるといわれています。eatLIFEクリニック(横浜市旭区)院長で内科医・糖尿病専門医の市原由美江さんによると、禁煙の効果は「20分後」から「15年後」に至るまで、さまざまな形で現れるようです。実際、禁煙によってどんな「よい変化」がみられるのか、具体的な内容についてご解説いただきました。

48時間ほどで「味覚や嗅覚が改善」

 禁煙すると、体にはさまざまな「よい変化」がみられるようになります。そのうちの一つといわれる「食べ物をおいしく感じるようになる」というのも事実です。

 喫煙すると、ニコチンが脳の「ニコチン受容体」に結合し、ドーパミンが放出されることで快感を得ます。30分もするとニコチンが減ってくるため、イライラしたり、落ち着かなかったりと離脱症状が出現します。

 しかし、禁煙して、この離脱症状を乗り越えて48時間ほど経過すると、体内のニコチンが消失します。すると、徐々に味覚や嗅覚が改善し、胃腸の調子もよくなるため、食事をおいしく感じられるようになるのです。

 禁煙による「よい変化」は、他にもあります。

 喫煙すると血管が収縮して、血圧の上昇や脈拍数の増加が起こりますが、吸い終わってからの時間経過とともに、次のような変化が見られるようになります。

・20分後……血圧や脈拍数が正常化する

・8時間後……血中の一酸化炭素濃度が下がり、酸素濃度が上がる

・24時間後……心臓発作のリスクが低下する

・48時間後……体内のニコチンが消失し、2日目以降には味覚や嗅覚が改善する。この頃から、「食事をおいしく感じるようになる」「朝の目覚めがよくなる」「肌の調子がよくなる」といったよい変化を感じ始める

・2週間〜3カ月後……心臓や全身の血管の循環が改善される

・1〜9カ月後……せきや、呼吸をするときにヒューヒュー、ゼーゼーといった音がする「喘鳴(ぜんめい)」が改善し、疲れにくくなる

・1年後……肺の機能が改善する

・2〜4年後……虚血性心疾患や脳梗塞のリスクが低下する

・5〜9年後……肺がんのリスクが低下する

・10〜15年後……喫煙による、さまざまな病気の可能性が非喫煙者と同じレベルになる

 これらの変化や効果は、喫煙年数が長いほど感じやすいといわれていますが、はっきりとは分かっていません。

禁煙による「よくない変化」はあるの?

 一方、禁煙による「よくない変化」を挙げるとすれば、食事をおいしく感じるようになることで過食傾向になったり、間食が増えたりして、体重が増えるケースがあることでしょうか。

 しかし、喫煙のさまざまなリスクに比べると、体重増加によるリスクは軽度といえます。禁煙後の生活に慣れてきたら、自分で体重をコントロールできる可能性が高いので、体重増加を恐れて禁煙しないのはナンセンスです。

 なお、ニコチンは腸を刺激する働きがあるため、禁煙すると便秘傾向になることがありますが、これも喫煙よりリスクは軽微といってよいでしょう。

 喫煙により起こる病気には、脳梗塞、狭心症、心筋梗塞、腹部大動脈瘤(りゅう)などの血管の病気、慢性閉塞(へいそく)性肺疾患(COPD)などの肺自体の病気、その他さまざまながんもあります。具体的には、鼻腔(びくう)・副鼻腔がん、口腔(こうくう)・咽頭がん、喉頭がん、食道がん、肺がん、肝臓がん、膵臓(すいぞう)がん、ぼうこうがん、子宮頸(けい)がんです。さらには、2型糖尿病の発症率を上げることも分かっています。

 禁煙すると、これらの病気にかかる可能性が喫煙者よりも減ることになります。こうした、喫煙者と非喫煙者における病気のリスクの違いを知ることが、禁煙のきっかけの一つになり得るかもしれません。