顔の印象が一変「自分を引き立てる眼鏡」の選び方
「世界中の眼鏡やその文化を紹介したい」との思いからグローブスペックスを立ち上げた岡田哲哉さん(撮影:今井康一)
ファッションアイテムといえば、洋服や靴などを思い浮かべる人が多いかもしれない。しかし眼鏡もきちんと選べば、印象を上げる強力なアイテムになる。眼鏡は人が真っ先に視線を向けがちな「顔」の印象を変えるからだ。では、自分に合った理想の眼鏡を見つけるにはどうすればいいか。国内外の眼鏡ブランドを取り扱うセレクトショップ、グローブスペックス代表の岡田哲哉さんに聞いた。
眼鏡は「顔自体」をおしゃれにする
──日本で眼鏡がファッションアイテムになったのは、ここ数十年と聞きました。
80年代までは眼鏡というと「視力矯正のための器具」で、あまりポジティブなイメージが持たれていませんでしたが、少しずつミュージシャンや映画俳優らがスタイリッシュな眼鏡スタイルの「お手本」を示し始め、90年代以降は眼鏡専門のデザイナーも増えて、徐々にファッションアイテムとして認識されるようになってきました。
顔の中心に来る眼鏡は、顔そのものの一体化したようにも感じてしまうアイテム。だから眼鏡は「顔をおしゃれに見せる」というより、「顔自体がおしゃれになる」というべき珍しい存在なのです。
【写真】グローブスペックスの店内の様子と紹介した眼鏡を見る(14枚)
適切な眼鏡をかけていれば、着ている服がTシャツにジーパンという簡素な装いであっても、おしゃれな雰囲気を醸し出すことができる。それほどに、眼鏡が人の印象にもたらす影響は大きいと考えています。
──眼鏡は印象を変えるのですね。
やはり人の視線が最初に行くのは顔です。そこで好印象を与えることができれば後々のコミュニケーションもスムーズになるかもしれません。ですので眼鏡をかけるのなら、ご自身を引き立てる眼鏡を選ぶといいでしょう。
岡田哲哉(おかだ・てつや)/グローブスペックス 代表取締役社長。ファッションカルチャーとしての眼鏡に可能性を感じ、勤めていた銀行を辞して大手眼鏡販売会社に転職、1998年には東京・渋谷に「グローブスペックス」を開業して独立。インポートブランドを積極的に取り扱い、国内の眼鏡文化を盛り上げる発信基地に。国際眼鏡見本市MIDOにおいては2017年・2018年と連続で「BESTORE AWARD」を受賞し、世界一の眼鏡店に選ばれた(撮影:今井康一)
「なりたいイメージ」が理想の1本を引き寄せる
──ビジネスパーソンが眼鏡を選ぶ際、どのような点に気をつかうといいでしょうか。
クラシックなデザインの例。Lunor(ルノア)Series: M5 Mod. 04 Col.PP ¥79,200 (撮影:今井康一)
原則として、ビジネスシーンではベーシックなカラーや王道のクラシックデザインを選ぶと、スーツやオフィスカジュアルの服装ともマッチしやすいでしょう。
さらにいえば、他人にどのような印象を与えたいか、より具体的なイメージを持っていると最適な1本が見つかりやすくなります。
例えば、企画やデザイン、ファッションなどに関わるお仕事の場合は、「興味深い提案をしてくれそう」「引き出しが多そう」と独創性や個性が伝わるよう、構造や色にひとひねりあるといいと思います。
構造や色使いが特徴的な例。ブランドはAnne & Valentin(アン・バレンタイン)Mod.MECABOOM Col.22C45 ¥56,100(撮影:今井康一)
営業の方であれば、「しっかりしていそう」「頼りになりそう」など信頼感が大事ですよね。
接客業に従事されている方なら、「やさしそう」「受け入れてくれそう」というような柔和な雰囲気があるといい。
お堅い職業の場合でも、ちょっとカラフルな眼鏡をかけることで取っ付きやすさを演出することができます。ご自身の職業やポジションを踏まえてなりたい自分を想像してみると、似合う眼鏡を探し出せるようになるのです。
カラフルな眼鏡で親しみやすさを演出してみては。すべてAnne & Valentin(撮影:今井康一)
──眼鏡選びの際、「面長の人はスクエア型がいい」というように、顔型に応じて適切なフレームを見つける方法も聞いたことがあります。
そうした考えも1つの方法かもしれませんが、私はあまりおすすめしていません。その判断が決め付けになってしまうと選択の幅が狭まりますし、昨今の眼鏡はかなり多彩で、「どんな形のフレーム」とも言い切れないものが増えているからです。それよりも実際にかけてみて、ご自身の顔の印象がどのように変わるのか、確かめてみることが大切です。
グローブスペックス渋谷店1階の店内の様子。3階では1920年代のアンティーク眼鏡をはじめとする本格派なアイウェアも扱っている(撮影:今井康一)
トレンドと「自分に似合う」のバランスを
──ファッションアイテムとして、トレンドも気になります。
作り手のトレンドでいうと、ふちが太めで大胆なものが出てきていますね。
ふちが太めで存在感があるデザイン。Lesca LUNETIER(レスカ・ルネティエ)Mod.TORO XL Col. A3 ¥51,700
(撮影:今井康一)
ビジネスシーンでかけることは考えづらいですが、ファッショナブルな印象を与えたいときにはぴったり。
ただ、眼鏡は洋服よりも似合う、似合わないがはっきり表れますので、トレンドの眼鏡をかけるだけでおしゃれになれるわけではありません。
トレンドはトレンドとして意識しつつ、やはりご自身に似合う眼鏡を選ぶべきだと思います。
──読者が取り入れやすそうなデザインはあるでしょうか。
メンズ向けでは人気が根強いですが、八角形や六角形など多角形のスタイルが注目されています。一見するとオーバル型のように見えるものの、多角形なフレームにセンスを感じさせるデザインです。複数の素材や色を組み合わせたものも人気ですね。
ともにAnne & Valentin(アン・バレンタイン)、上:鮮やかなカラーリングが特徴的。Mod.MECABOOM Col.22C45 ¥56,100/下:異素材の組み合わせを楽しめる。Mod.M2 Col.H31 ¥62,700 (撮影:今井康一)
ウィメンズ向けでは、キャットアイと呼ばれる目尻側が上がったフレームが人気で、フェミニンな魅力を引き出してくれます。材質はメタルが人気で、とくに側面に彫金が施されていると瀟洒(しょうしゃ)な印象になります。全体としてレンズは大きく、フレームもより個性的なデザインが増えていますね。
ともにAHLEM(アーレム)、上:フレーム回りの彫金がアクセントに。Mod.Gaillon Col.Peony gold ¥72,600/下:今人気のキャットアイフレーム。Mod.Garnier Col.Champagne ¥82,500(撮影:今井康一)
彫金が施されていると、うつむいたときにキラッと光る(撮影:今井康一)
「これまでと大差ない眼鏡」からの脱却
──理想の眼鏡を見つけるには、どうすればいいのでしょうか。
眼鏡のプロからアドバイスをもらうことです。なりたい自分をイメージしたものの、どの眼鏡がその希望を叶えてくれるのか、探し出すのは簡単ではないからです。自身で新しい眼鏡を見つけようとしても、これまで使っていた眼鏡と大差ないデザインを選んでしまいがち。
パートナーや友人を頼っても、これまで使用していた眼鏡の印象が残っているため、やはり振り切った判断はしづらいものです。
眼鏡そのものの知識と、それら眼鏡をかけたときの印象について熟知したプロなら、フラットな視点で適切なアドバイスをもらうことができるでしょう。そのためには、自分の感性に合う品揃えや雰囲気を持つ眼鏡店を見つけ、信頼できるプロと出会うことが大切です。
(横山 博之 : ライター)