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 パチンコ店の店舗数は、この10年間で約6割も減少しているというデータがあり、「業界全体が厳しい状況である」と思っている人も多いだろう。しかし毎週のように新しいパチンコ・パチスロ機がホールに登場しており、今もなおパチンコ台を一台完成するのに巨額なお金と時間が費やされている。現状のパチンコ業界について、現役パチンコ開発者はどのように感じているのだろうか。
 そこで今回は、パチンコメーカーに10年ほど勤務しているAさんに、パチンコ台を開発するうえでの苦労や他特殊な現場の内情、そして今後のパチンコ業界についての話を伺った。現在はディレクターとして台開発に携わっているAさんは、ヒット作を次々に生み出している開発者ならではの苦悩があるようだ。

◆開発者は「稼働貢献」に敏感

--まずは今までのお仕事について伺いたいのですが、パチンコ開発のどのようなポジションを経験をされてきましたか?

Aさん:以前は、企画のディレクターでライセンスにもかかわっていました。現在も同じようなポジションですが、仕様面にも携わっていまして、液晶のクオリティや仕様関連など機械全体を見ています。

--では、パチンコ開発をしていて、やりがいを感じる時を教えてください。

Aさん:やはり自分が担当した機械の稼働貢献(※全体稼働率に対して、その機種の稼働率が上回っている期間のこと)が良いと嬉しいですね。メーカーにより機械の販売と稼働、どちらを重視するかはそれぞれですが、開発としては稼働貢献の方が気になります。稼働貢献は8週で及第点といわれていたのですが、以前2機種続けて25週を達成した時は「よっしゃ!」と思いましたね。ちなみに自分が担当した機械で一番稼働が良かったものは130週到達したこともあります。

--130週はすごいですね! 導入後はユーザーの反応など、SNSでチェックしますか?

Aさん:自社機に対するリアクションはチェックしますね。他社のはあまり気にしていません。

◆液晶の開発だけでかかる金額は

--次に費用面についてお聞きしたいのですが、一台のパチンコ台を作るのにも相当なお金と労力がかかると思います。できあがるまでの流れや期間を教えてください。

Aさん:ざっくり説明しますと、マーケティング、分析、版権確認、予算計上、開発という流れですかね。費用は液晶機の開発だけで5億〜7億円ほどかかります。機械制作が完了したらスペックや演出を確認する機関へ申請し、適合したら各地方への検定で許可をとる、というのが一連の流れです。ちなみに期待の大きい機械は、本命スペックが適合するまで何十回も申請します。申請1回につき、150万円ほどかかるので……。計算するとぞっとしますね(笑)。液晶機ならここまで平均2年くらいです。

--期間や開発費の莫大さにびっくりしました……。業界ではたびたびスペックや規則変更等業界のルールに変更がありますが、開発途中で変更になった場合、作り直すことはありますでしょうか。

Aさん:めちゃくちゃあります。規制が厳しくなる場合、規制前に発表できれば「ギリギリ強いスペックの機械を発売できる」ということになるので、規則変更はチャンスにもなるんです。反対に仕様が現状より良いものが解禁されれば、完成していても、新しい規則のスペックに作り直すこともありますね。

◆開発したのに“お蔵入り”になってしまうケースも

--ちなみにお蔵入りになった機種はありますか?

Aさん:私が担当した機械ではお蔵入りは出ていないのですが、時々話を聞くことがあります。お蔵入りの原因は内容が目標のクオリティに達しなかったり、お金をかけすぎて途中で損切り……というパターンが多いですかね。