AMGのゲレンデより高性能な635馬力のV8ツインターボ+マイルドハイブリッドを搭載するディフェンダー・オクタ(写真:ジャガー・ランドローバー・ジャパン)

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0-100km/h加速4.0秒という見た目からは想像もつかない性能を持つSUV(写真:ジャガー・ランドローバー・ジャパン)

ランドローバー「ディフェンダー」に、「オクタ」と名付けられた最上級モデルが追加され、2024年7月3日に発表された。

日本でもメディア向けのお披露目会があり、そこでディフェンダーが高性能・高価格へと向かう理由を、本国の責任者に聞いた。


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私がディフェンダー・オクタと初めて対面したのは、千葉県南房総市の“ドライビングクラブ”でのこと。ここ「イギリスか?」と思うぐらい、本国から来たランドローバーのスタッフが会場に溢れていて、技術展示も多く、意気込みを感じさせた。同様の催しを、世界6都市で行ってきたのだそう。

ダイヤモンドに由来する名を持って

オクタ(octa)とは耳慣れない言葉だけれど、ディフェンダー・オ
クタの名について、「8面体形状のダイヤモンドに由来したものです」と、担当マネージングディレクターのマーク・キャメロン氏は説明する。

8面体(octahedron)の接頭辞だという。古典ギリシヤ語とラテン語の「8」でもあり、私たちにもっとも馴染のある単語は、音楽用語のオクターブ(完全8度)かもしれない。そういえば、超高級SUVのロールス・ロイス「カリナン」も、ダイヤモンド由来の車名だと思い出した。


ボディサイドに装着されるオクタのエンブレム(写真:ジャガー・ランドローバー・ジャパン)

「地球上でもっとも硬く、もっとも人々を魅了する鉱物であり、特徴的な外観と耐久性を有する、8面体形状のダイヤモンドに由来します。この形状からインスピレーションを得たディフェンダー・オクタは、強靭さや弾力性、人目を引く魅力、希少性や価値を象徴しています」とはプレスリリースの説明。

車体はディフェンダーのファミリーだけあって、ひと目でそれとわかるけれど、大きく張り出したオーバーフェンダーなど、基本シャシーを共用するディフェンダー110とは、あきらかに一線を画している。

【写真】この見た目で600馬力オーバー!「ディフェンダー・オクタ」の超世界観

千葉の会場には、フェローグリーンというシグネチャーカラーに塗装されたディフェンダー・オクタ・エディションワンが持ちこまれており、強烈な存在感をはなっていた。車高は通常のディフェンダーより28mm高く、スタンス(車幅)は68mm広くなったと説明される。


試乗会はカメラ持ち込み禁止で撮影できなかったが、お披露目されたのはこのクルマと同じ仕様(写真:ジャガー・ランドローバー・ジャパン)

エンジンは、これまでディフェンダーには設定のなかった4.4リッターのV型8気筒。現行ラインナップでのV8は5.0リッターだから、排気量こそ縮小しているが、ツインターボチャージャーとマイルドハイブリッドシステムをそなえ出力は上をいく。

635馬力(467kW)の最高出力と、800Nm(ローンチコントロール使用時)に達する最大トルクを持つ。驚くことに、最大トルクは1800rpmからおよそ6000rpmまで連続して発生するという。

「史上もっともパワフルで究極」とプレスリリースに書かれているように、資料によるとディフェンダー・オクタは、静止から時速100kmまで4秒フラットで加速。22インチの軽量アロイホイールとオールシーズンタイヤを選択すると、最高速度は時速250kmに達するそうだ。

6Dダイナミクスサスペンションによりオンロードも俊敏に

足回りには、ディフェンダーとして初めて、油圧連動式6Dダイナミクスサスペンションテクノロジーを採用。オンロードとオフロード、ともに性能向上を図っている。


高性能モデルであってもオフロード走破性をおろそかにしないのがランドローバーの流儀(写真:ジャガー・ランドローバー・ジャパン)

オンロードではロールを抑え、「いかなる路面においても、他に類をみない信頼感と制御性を確保する」とうたわれている。ブレーキは、400mm径のブレンボ製キャリパーを採用。ステアリングレシオは、よりクイックなものとなっている。

「強化されたウィッシュボーン(サスペンションの一部)や、独立したアキュムレターを持つアクティブダンパーの採用などによる、高速道路からワインディングロードまで、俊敏かつ正確な応答性が楽しめるようになりました」と、英国からやってきた技術説明員は語る。

バンパーは専用設計となり、悪路でのアプローチアングルとデパーチャーアングルが向上している。同時に、強靭なアンダーボディプロテクションがそなわったため、「ドライバーは自信をもって悪路走行に挑むことができます」とのこと。

渡河水深は最大1m(水深1mまでなら走れるということ)で、通常モデルのディフェンダーを上回っている。


空気の取り入れ口を高い位置に設置するなど渡河性能に配慮する(写真:ジャガー・ランドローバー・ジャパン)

オフロード走行用には、従来のテレインレスポンス各モード(砂地、泥/轍、草地、砂利、雪、岩場)が役立つうえ、高速でオフロードを走行できる機能が盛り込まれたのも、ディフェンダー・オクタの特徴だ。

円のなかに菱形が入ったオクタ専用エンブレムをつけた、「オクタボタン」がハンドルにそなわる。

これを押すと、上記6Dダイナミクスサスペンションテクノロジーを使って、ステアリング、アクセル、サスペンションのセッティングを自動調整し、オンロードで究極的なパフォーマンスを発揮するモードが起動する。

オフロードでは、オクタボタンをさらに長押しすることで、「オクタモード」に入る。


ディスプレイに表示されるドライブモードのアイコン(写真:ジャガー・ランドローバー・ジャパン)

これは、オフロードでのパフォーマンスに特化したモードで、悪路走破能力をフルに引き出し、専用のアンチロックブレーキやローンチコントロールが使えるようになる。

オフロードでのパフォーマンスを上げるオクタモードでは、さらに「滑りやすい、グリップのゆるい路面で最適な加速を実現する、オフロードローンチモードも使用できます」と聞いた。

ローンチコントロールは、一般的にオンロードでの加速を最大化する制御のこと。オフロードでのローンチコントロールとは、いったいどんな加速を体験させてくれるであろうか……と考え、私はしばし無言になってしまった。

「明らかに異なる」世界観のインテリア

室内は、ディフェンダー独自の世界観に基づいてデザインされている。


日本向けは右ハンドルとなるが、基本的な形状や装備は同一(写真:ジャガー・ランドローバー・ジャパン)

ラグジュアリーな「レンジローバー」が、シンプルで上質な素材による質感を追求しているのに対し、ディフェンダー・オクタは、あえてビスを見せるような、ヘビーデューティなテイストをファミリーから引き継いでいる。

シートの表皮素材には、レザーより30%軽量の「ウルトラファブリクス」も選択可能。色は、落ち着いたトーンであるものの、数色の組合せなどで、他にない雰囲気をうまく作り出している。

今回、千葉で体験させてもらったのは、「ボディ&ソウルシート」なる新開発のドライバーズシート。「音楽を聴くと同時に体験できる」とうたわれる機能をもっており、開発は同種のシートやVRゴーグルなどを開発するサブパック(SUBPAC)社と、コベントリー大学の協力を得て進められたそうだ。


ボディ&ソウルシートはシート内にアクチュエーターがあって臨場感ある音楽を楽しめる(写真:ジャガー・ランドローバー・ジャパン)

「私たちはいま“ハウス・オブ・ブランズ”として、ジャガー・ランドローバーを新しくしています。たとえば、レンジローバーとディフェンダーは独立したブランドだし、ディスカバリーも同様です。ディフェンダーの中に、これからサブブランドを作っていくことも考えています」

前出のマネージングディレクター、マーク・キャメロン氏の言葉だ。では、今回のディフェンダー・オクタが、たとえば、メルセデスのAMGやロールス・ロイスのブラックバッジにあたる上級モデルになるのだろうか。そう尋ねると、答えはNOだという。


レンジローバーやディスカバリーとは異なる方向でディフェンダーを育てていくようだ(写真:ジャガー・ランドローバー・ジャパン)

「オクタは、あくまでも現行ラインナップに加わったパワフル版です。ディフェンダーのラインナップ強化は、これからお見せしていきます。上級ブランドが出るかもしれませんし、バッテリー駆動のディフェンダーは、いまのラインナップと併存する新しいファミリーとして登場するでしょう」

導入台数は合計220台。革命を起こせるか?

ディフェンダー・オクタの日本導入は、220台となるそうだ。内訳は、ディフェンダー・オクタが、130台。専用色とチョップドカーボンファイバーのディテールをそなえた、生産初年度のみの設定となるディフェンダー・オクタ・エディション ワンが90台。


エディション ワンは専用インテリアや20インチ鍛造アルミホイールなどを装備する(写真:ジャガー・ランドローバー・ジャパン)

予定価格は、ディフェンダー・オクタが2037万円で、ディフェンダー・オクタ・エディションワンが、2224万円と発表されている。

導入依頼、メルセデス・ベンツ「Gクラス」に匹敵する強烈な存在感を見せているディフェンダーシリーズ。そこに、「メルセデスAMG G63」を超えるパフォーマンスを持つとなれば、ディフェンダー・オクタはこの市場に革命を起こす1台となるかもしれない。

【写真】次元を超えたオフロードカー「オクタ」の姿を見る

(小川 フミオ : モータージャーナリスト)