“日本一売れてるクルマ”ホンダが2年ぶり首位陥落!? スズキ「軽ワゴン」なぜ“単月トップ”に躍進? 王者N-BOXがピンチに陥ったワケ
スペーシアの売れ行きがN-BOXを抜いた!
2024年5月の国内販売ランキングが話題になっています。通常はホンダ「N-BOX」が1位ですが、2024年5月は順位が入れ替わり、1位はスズキ「スペーシア」となりました。
同月にスペーシアは1万5160台を販売。2位はN-BOXの1万4582台、3位はトヨタ「ヤリスシリーズ」の1万3538台です。
1位と2位の差は、わずか578台ですが、N-BOXの後退は珍しいことだといえるでしょう。
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過去を振り返ると、両車ともに先代型だった2022年5月も、スペーシアが1位でN-BOXは2位にダウンしました。この時の台数の差は、2024年5月よりも少ない39台でした。その後は再びN-BOXの1位が続いています。
なお、2024年6月はN-BOXが販売トップに返り咲きました。
それにしても、最近のスペーシアとN-BOXの売れ行きで注目される特徴は、前年と比べた時の販売推移です。
2024年1〜5月の1か月平均届け出台数は、スペーシアが1万207台、N-BOXは1万9242台となり、販売台数自体はN-BOXが圧倒的に多いのですが、対前年同期比を見ると状況が変わります。
スペーシアの届け出台数は、前年の141%に増えましたが、N-BOXは87.2%に留まるからです。
現行N-BOXの発売は2023年10月、現行スペーシアは同年11月ですから、両車とも2023年1〜5月は先代型のモデル末期でした。
スペーシアは新型になって売れ行きが前年の1.4倍に増えたわけですが、N-BOXは同様にフルモデルチェンジされながら、前年同期に比べて約13%減少。フルモデルチェンジしながら、売れ行きが下がる車種は珍しいです。
スペーシアが売れ行きを伸ばし、N-BOXが減った背景には、デザインを筆頭とする商品力の違いがあります。
スペーシアは新型になり、カスタムを中心にフロントマスクが存在感を強めて、インパネも少し豪華なデザインに仕上げるなど、先代N-BOXに似た雰囲気も感じられます。
さらに、スペーシアの後席には、高級ミニバンのオットマンのように使えるほか、座面の上に置いた荷物が床に落ちにくい工夫も施した「マルチユースフラップ」が採用されました。
後席にエアコンの冷気を送る「スリムサーキュレーター」なども含めて、売れ筋グレードに多彩な装備を採用しているのが特徴的です。
収納も豊富で、助手席の前側にはコンビニ弁当を置ける大型トレイ、ボックスティッシュが収まる引き出し式収納ボックス、助手席の座面の下にも大きな収納設備があります。
その一方でN-BOXは、新型になって、派手さが勝負になるカスタムのフロントマスクが大人しくなりました。
グローブボックスの容量を2倍に増やす代わりに細かな収納設備を減らし、前後左右の視界は向上したものの、インパネ周辺の上質感は薄れました。このような商品力の違いもあり、スペーシアの販売台数が増えて、N-BOXは減ったといえそうです。
認証不正問題に基づくダイハツ「タント」の出荷停止も、軽スーパーハイトワゴン市場に影響を与えたでしょう。
ダイハツとスズキの軽自動車は、メーカー系新車ディーラーの出店が少ない地域では、業販店(修理工場や中古車販売店に併設された小さな新車販売店、サブディーラーともいわれる)で多く扱われます。
そのためにタントが出荷停止になれば、ライバル車になるスペーシアの販売に力を入れるのです。
N-BOXは業販店ではそこまで主力では扱われないため、タントの減少は主にスペーシアの増加に結び付きます。
このようにスペーシアの販売増加には、同車の商品力の向上や、ダイハツの認証不正問題なども含めて、いろいろな要素が絡んでいるのです。
スズキがトヨタに次ぐ2位にランクイン! なぜ好調?
そしてスペーシアの好調は、最近のスズキの置かれた状況を象徴しています。2020年以降、スズキの国内販売台数は、トヨタに続いて2位になるからです。2024年1〜6月も同様です。
ちなみに国内販売ランキングの推移を振り返ると、2010年頃までは、多少の変動はあっても基本的に1位がトヨタ、2位が日産、3位がホンダ、4位がスズキ、5位がダイハツでした。
それが2011年以降は、日産が新型車を減らしたこともあり、国内販売ランキング順位が下がり、2010年代中盤には、日産は、ホンダ、スズキ、ダイハツに抜かれて5位まで後退しています。
さらに2022年には、ホンダも4位に後退して、1位がトヨタ、2位がスズキ、3位がダイハツになったのです。直近の2024年1〜6月は、ダイハツが出荷停止によって5位まで後退しましたが、2位のスズキは変わりません。
スズキの販売ランキング順位が高い背景には、2つの理由があります。ひとつは昨今の軽自動車の売れ行きが好調なことです。
スズキは軽自動車が中心のメーカーですから、軽自動車の人気が高まると、スズキの国内販売台数も増えます。そのためトヨタ、スズキ、ダイハツの順になりました。
ただし軽自動車の売れ行きが国内販売ランキングに大きな影響を与えるなら、国内販売の2位も、スズキではなくダイハツになるはずでしょう。最近の軽自動車販売ランキングは、出荷を停止するまで、ダイハツがトップでスズキは2位だったからです。
妙な話に思えますが、スズキの国内販売台数がトヨタに次ぐ2位になった理由も、軽自動車の1位にこだわらず2位に甘んじたことにあります。
スズキは、軽自動車で効率を悪化させるような無理な売り方をせず、その代わりに「スイフト」や「ソリオ」といった小型車の販売に力を入れたのです。
そのため、近年のスズキでは、国内で販売される新車の20%近くを小型/普通車が占めています。
ダイハツも小型/普通車の開発や製造を行いますが、主に親会社のトヨタに供給され、自社の販売比率は少ないです。
その点でスズキには、ダイハツのような縛りがなく、売れ行きを増やせました。
2024年1〜6月に、スズキは1か月平均で、約1万1600台の小型/普通車を登録しており、この台数は、マツダ/スバル/三菱の小型/普通車登録台数を上まわります。
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スズキは、国内市場に合った軽自動車を主力にしながら、高機能で価格の求めやすいコンパクトカーにも力を入れて、トヨタに次ぐ売れ行きを達成しています。
他社を見ると、ダイハツは前述のように、販売できるカテゴリーが軽自動車に偏っています。
ホンダでは、2023年に国内で売られたホンダ車の40%近くがN-BOXで占められ、その売れ行きが最近のように下がると、同社の国内販売全体に悪影響を与えかねません。
日産は以前に比べると設計の新しい車種が増えましたが、堅調に売られているのは、今でも「ノート/ノートオーラ」、「セレナ」、「ルークス」、「デイズ」くらいです。
つまりスズキには堅調に売られる車種が多く、カテゴリーも適度に分散されています。国内販売のバランスが優れ、トヨタに次ぐ国内2位のメーカーになったというわけです。