ついに「空飛ぶクルマ」飛び回る!? JR九州エリアで「送迎、遊覧飛行」に期待!? スズキ工場発の「SD-05」とは
いわゆる「空飛ぶクルマ」が九州各地で飛び回る可能性が出てきました。
ベンチャー企業のSkyDriveと九州旅客鉄道(以下、JR九州)が、九州での空飛ぶクルマの運航を目指す連携提携を結んだのです。
【画像】カッコイイ! これが「新型スカイドライブ」です(12枚)
空飛ぶクルマといえば、2025年4月13日から10月13日までの開催される、大阪・関西万博でSkyDriveのほか海外メーカーの機体が飛行することが大きな話題となっています。
ただし、飛行の実績がまだ少ないこともあり、当初計画されていた来場者が搭乗した形での飛行は行わない方向で調整が進んでいる状況です。
国は2030年代以降には、観光、物流、有事対応などで空飛ぶクルマの社会実装を本格化させるべく、関連する法整備などを着実に行っている段階にあります。
そうした中、JR九州が今回示した、「JR九州の持つ鉄道駅や商業施設などを活用した、空飛ぶクルマ運航ルート開設の実現を目指す」という発表は、空飛ぶクルマが日本で本格的に運用するための試金石になりそうです。
SkyDriveとJR九州による連携の内容は、空飛ぶクルマの「展開地域」、「ビジネスモデル」、「オペレーションの概要」、「ビジネスモデルにおける各事業者の役割」、そして「想定される需要と収益予測」の5点を挙げています。
ビジネスモデルの可能性として、地理的な条件で直線距離では近くてもJRの駅や空港などから鉄道やクルマではアクセス時間が大幅にかかる宿泊施設への送迎、遊覧飛行、また離島への物流などがイメージされるとのこと。
JR九州の古宮洋二社長は「観光から日常的な利用まで、いろいろな可能性を探りながら、挑戦したい」と空飛ぶクルマの社会実装に向けた意気込みを語りました。
使用する機体は、大阪・関西万博でも使用する予定の「SD-05」。
機体サイズは、全長11.5mx全幅11.3mx全高3mで、最大離陸重量は約1400kg。乗員は操縦士1名と乗客2名の合計3名。
駆動方式は12基のモーター・ローターで、最高巡航速度は時速100km、満充電での航続距離は15〜40kmとなります。
同機については、日本やアメリカでの型式指定を受け、2026年から量産を目指しています。
製造は静岡県内のスズキ施設で行い、生産能力は年産100機を見込んでいます。
会見の中で筆者はSkyDriveの福澤知浩社長に、満充電での航続距離について聞きました。
それは、「大阪・関西万博での活用であれば、15〜40kmという現時点での数値は、いまの電池の技術などを考慮すれば現実解だと思いますが、九州での実証では航続距離を含めた技術的に飛躍したい領域についてどう捉えているのか」という質問です。
これに対して福澤社長は「SkyDriveが取り組んでいる(量産に向けた)研究開発では大きく2つの点がある」と指摘しました。
ひとつはバッテリーについて。より効率的な電力消費が可能であり、よりエネルギー密度が高いバッテリーの採用を検討している点です。
筆者からは、シリーズハイブリッドの可能性についても聞きましたが、シリーズハイブリッド採用の可能性の有無について、福澤社長は直接触れませんでした。
空飛ぶクルマやドローンについては近年、航続距離をより伸ばすために内燃機関(エンジン)や外燃機関(タービン)を発電機として使う電動システムとしてのシリーズハイブリッドの研究開発が進んでいるところです。
大手ではホンダがタービン型を量産に向けた研究開発を進めていることを明らかにしています。
もうひとつは、遠隔操作による自動運転(自動操縦)です。
現在の乗員は3名ですが、操縦士がいなければ、軽量化により航続距離が伸びたり、または乗員が3名となることで事業者の事業性も向上するからです。
その上で、JR九州とともに検討するビジネスモデルの内容によって、飛行する距離、飛行の頻度、そしてコストなどの最適化を図っていくとのことです。
また、別の記者からはJR九州からSkyDriveに対する出資の可能性についても質問が出ました。
これに対して、JR九州側からは明確な答えはなく、様々なビジネスモデルの検証を進める「これから1年が大事」として、まずは九州における空飛ぶクルマの社会実装について、あらゆる可能性を検討することが重要という認識を改めて示しました。
いずれにしても現時点では、今回のJR九州の事例が、空域の広さとビジネスモデルの多様性の観点から、九州が空飛ぶクルマに関して、日本で最も規模の大きな社会実証および社会実装になる可能性があります。
SkyDriveだけではなく、空飛ぶクルマ領域の全体の未来を考える上で、九州は今後、最重要地域になると言えるのではないでしょうか。