なぜトヨタ「ランクル」は3タイプも用意? 最上級「豪華モデル」からめちゃ“タフ仕様”まで展開 バリエーションが増えた理由とは
なぜ「ランドクルーザー」種類が多い?
初代モデルが1951年に誕生した、トヨタで最も長い歴史を誇る「ランドクルーザー」。
現在は「300」シリーズ、「250」シリーズ、「70」シリーズの3モデルが発売されています。
その3つのシリーズには、それぞれ強い個性があります。
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2021年に発売となった300シリーズは、豪華で高級なランドクルーザーであり、3つのシリーズの中では「ステーションワゴン」と呼ばれています。
250シリーズは生活と実用のためのランドクルーザーで、「ライトデューティー」と呼ばれます。先代までは「ランドクルーザー プラド」と名乗っていました。
そして70シリーズは、業務や過酷な環境でもへこたれない堅牢なランドクルーザーで、「ヘビーデューティー」と呼ばれます。
では、なぜ「ランドクルーザー」には3つのシリーズが存在するのでしょうか。
それは、今年で73年にもなるランドクルーザーの“歴史”を知れば理解できるはずです。
最初のランドクルーザーは、ひとつのモデルでした。
初代モデルは1951年に誕生した「BJ」型で、ヘビーデューティーの70シリーズの元祖となります。このモデルは当時の警察予備軍(現在の自衛隊)に向けて開発されました。
当時の写真を見ればわかると思いますが、軍用車として使えるような非常に武骨な4輪駆動車だったのです。
警察予備軍向けに開発されましたが、実際には採用されませんでした。そのかわりに、民間向けとして1953年より生産を開始し、正式にランドクルーザーと名乗るようになります。
その初代の発展形として、1995年に2代目の通称「20系」が登場。1960年には3代目の通称「40系」に世代交代します。
ここまでのランドクルーザーは、警察や消防などの“業務使用”がメインであり、まさにヘビーデューティーそのものという存在でした。ある意味、特殊なクルマです。
ところが、そんな特殊なランドクルーザーを、アメリカやオーストラリアでは、狩猟や釣りなどのレジャーにも使うようになっていたのです。
そこでトヨタは、そうしたレジャー向けとして、1967年に派生モデル「ランドクルーザー・ライトバン」を発売します。
ヘビーデューティーの車体をベースにしながらも、乗用車並みの装備と乗り心地、そして広い荷室を実現することで、今の300シリーズに続くステーションワゴンが生まれました。
一方、当時としても、ヘビーデューティーのニーズは依然大きかったので、40系は当然のように継続販売されています。この時点でランドクルーザーは2つのシリーズを持つモデルとなります。
2つの「ランクル」から3つの「ランクル」へ…
その後、1984年になるとヘビーデューティーは4代目の70シリーズに世代交代を果たします。
70シリーズのデビュー翌年となる1985年には、トヨタは「ランドクルーザー ワゴン」を追加します。
70系のショートボディをベースに、より快適性を高め、外観は軽快感あるものとしたモデルです。
その狙いは、1980年代のレジャーユースの増加に応えようというもの。街中での使い勝手を高め、より乗用車的に使えるスタイリッシュな4輪駆動車。これが、今に続くライトデューティーの発端となります。
つまり、1950年代にヘビーデューティーのみで生まれたランドクルーザーですが、1960年代にレジャー向けとしてステーションワゴンを追加し、1980年代になってさらに街乗りも見据えたライトデューティーを加えたのです。
もとは1つのモデルが3つのシリーズに分化したのは、時代時代のニーズに応えてきたというのが理由と言えるでしょう。
そうして3つになったランドクルーザーのうち、ライトデューティーは、1990年よりランドクルーザー プラドと名乗るようになり、より乗用車的なイメージが与えられることになります。ちなみに、当時のライバルは三菱自動車の「パジェロ」でした。
そんなランドクルーザー プラドは代を重ねるほどに、より豪華で高級なクルマに進化していきます。気が付けば、ステーションワゴンと遜色ないほどになってしまっていたのです。
そこを是正したのが新しい250シリーズです。
250シリーズは、より生活実用を目指して、質実剛健なランドクルーザーの伝統を感じさせるアクティブなルックスとなりました。ここで名称を変えたのは、“プラド”という名前に高級なイメージが強く刻まれていたからではないでしょうか。
また、3つあるシリーズのうち、ひとつだけプラドというペットネームを使う違和感を消し去りたいという考えもあったはずです。
そうした250シリーズの路線変更もあり、現在のランドクルーザーは、ステーションワゴン、ライトデューティー、ヘビーデューティーという3つの流れと個性の違いが鮮明になっています。
「豪華で高級」な300、「普通に使う」250、「ハードな使用に耐える」70というわけです。ユーザーとしては、今では買うときに迷わずに済むシリーズ化がなされたのではないでしょうか。